2.新事実発覚
身体能力の高さに比べると、私は決して筋肉隆々というわけではない。母が言った、不格好に筋肉が盛り上がっているなんて許せない、王女らしくないという理由から、綺麗に筋肉をつけつつ盛り上がらないように調節して身体を造るという実に難しい方法を取った。ししゃも脚なんてもっての他らしい。
ある意味スパルタ教育だったが、さすがにムキムキマッチョの王女なんて嫌過ぎる。そこに関しては母に同意する。いや、普通は王女がここまで鍛える必要など無いはずなんだが。
日課の筋トレをこなし、次は動体視力のトレーニングに入ろうとしていると、教育係兼、相談係のレイロンがノックも無しに部屋に入り込んできた。無礼にもほどがある。
「あんた……」
「失礼しますよ、王女」
ほんとに失礼だよ。
「陛下がお呼びですが」
「父様が?」
日課のハグだろうか。
私を実の娘だと思っている父は、多少うざったいと思うくらいの愛情を注いできてくれる。おはようのハグとおやすみのハグと、最後に愛の言葉を囁くのを忘れない。一人娘だからだろうか。
我がレディシア国では、側室制度を取り入れていない。王位継承などの問題が発生して面倒だからだろう。つくづく怠慢な国である。
「すぐ行くわ」
「殿下」
「何?」
レイロンを見上げると、いつになく真剣な表情をしていた。
「面倒なことになるかもしれません」
私は首を傾げる。
「余計なことを申しました。行きましょう」
面倒なこと。つまりは、今朝の呼び出しはハグではないわけだ。今度は一体何が起こったのか。思わず溜息を吐く。
だが何が起ころうとも、私が父の助けになるならばそうする。それは決して覆らない。
なぜならそれが、知らないとはいえ血の繋がらない娘を何不自由なく育ててくれている、父への義理というやつだからだ。
客人があるということだったのに、レイロンに連れられて向かった先は謁見室ではなく父の執務室だった。
執務室では父と宰相が硬い表情をして並んでいる。そして、見知らぬ少年が膝をついて深く礼を取っていた。
私が入ってきたのを見ると、父はあからさまに嬉しそうな顔を見せた。
「おはよう愛しのリチェルシータ。今日も可愛いな」
そう言って私を抱き寄せる父は、傍からみれば完全なロリコンである。
宰相の咳払いに我に返った父は、どう説明しようか悩んでいるのか、私と少年を困ったように見比べた。
「陛下、殿下にはきちんとご説明した方が」
「……分かっている」
あー、とかうー、とか唸り声ばかり発生させる父に焦れて、宰相に視線を移す。
困り果てたように眉尻を下げた宰相は渋々口を開いた。
「……そちらは殿下の兄君にあたります」
「……はぁ?」
「身分の低い者が母親なのですが、陛下の血を引いているのは事実。野放しにしておけば利用しようと企む者が出てくるでしょう。今回こちらで保護することに決定いたしました。アルマ・ネイミスト様です。今年で十五になられるとのことなので、殿下よりも一つ歳上ですね」
と、いうことはつまり。
ダブル不倫かいっ!
思わず心の中で絶叫してしまった。