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不義姫  作者: 折紙
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16.思惑

 メリンダ・カヴァサーニ。今までこの名に恥じないよう生きてきたつもりだった。だけど私は今、一体何をしているのだろう。

 殿下が微笑む度に現実から目を背けたくなる。

 レディシア国の王女殿下は、噂に違わず美しい少女だった。輝く青銀の髪、琥珀色の瞳。近くで見ると、琥珀だと思っていた瞳は瞳孔だけが金に輝いているという不思議な光彩をしていた。薄暗い場所にいる時や何かに興味を持った時など、瞳孔が広がってキラキラと金に輝く瞳は神秘的でさえあった。

 歴史あるレディシアの王族は、古来に存在したという人外の血が様々混じっているという噂だ。人魚や天使、妖精などと、その真偽は定かではないが。殿下の神秘的な美しさは、そこから来ているのだろうか。




 本日なぜか、殿下付きの侍女殿に呼ばれて殿下の部屋に入ると、真っ白なテーブルクロスの上に賑やかに並んだお茶会の道具が目に入った。部屋にはクッキーやスコーンの甘い香りが漂っている。

 目を白黒させていると、殿下から席にかけるように言われる。断ろうとしたが迫力のある笑顔で押され、思わず着席してしまった。

 さらに侍女殿達も椅子に座るので、私の頭は混乱するばかりだ。尋ねれば、これからお茶会を始めるということで私にもお呼びがかかったらしい。

 私は内心驚いていた。普通王族のお茶会は、貴族を集めてするものだと思っていたからだ。貴族だって身分の釣り合う者同士でしかやらないだろう。

 そうだというのに、殿下は自然にご自分の臣下と並んで椅子に座り、楽しそうに笑っている。侍女のお二人も慣れているのか、自然にお茶を楽しんでいるようだ。

 なんとなく居心地が悪くて身動(みじろ)いでしまう。

 なぜ私がこのお茶会に呼ばれたのか見当がつかず戸惑っていると、矢継ぎに質問が始まった。

 質問が進むにつれ、私は自分の顔色がどんどん悪くなっていくのに気付いていた。まさか殿下は、私がなんの為にレディシアへ来たのか気付いているのだろうか。

 何もかも見透かすような煌めく金の瞳孔が、ぐっと大きくなったような気がする。

 下手なことは言えない。

 密かに唇を噛み締めると、突然殿下が立ち上がった。自らお茶を淹れ始めた殿下に思わず慌てる。

 そのようなことが多々続き、お茶会が終わる頃には私はすっかり疲労していた。

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