12.兄妹会議
鐘楼で語り合い、なんとなく成り行きで、うっかり兄に婚約の話をしてしまった。やばい、これってまだ秘密事項だったのかな。でももう言っちゃったし。
「婚約……ですか」
「はい。……あ、申し訳ありません、兄様を差し置いて婚約だなんて。普通は兄が結婚するのを見送るべきなのに」
なーんてな。年功序列なんて今時ナイナイ。今の時代は実力主義だよね。……まぁ婚約に実力がどう関係してるかは謎として。
「いいえ!そんな、とんでもありません。……ですが、殿下はそれでいいのですか?」
「何がです?」
「その……好きでもないような相手と婚姻を結ぶのは」
「王族として生まれたからには、避けられないことでしょう。それはもちろん私だけでなく、他の王族や貴族も一緒です。国民の税で暮らしているのだから、国の為の結婚をするのは当然です」
「しかし……」
「……きっと、私の父と母の間にも愛は無かったのでしょう」
だから、私と兄が生まれた。
「そんなことはないです!陛下はあんなに殿下を愛してらっしゃるじゃないですか!」
「兄様……」
熱い。熱過ぎる。何この情熱。
若干引き気味になった私は、引きつった笑いで応える。
「ありがとうございます、兄様。では私は、父が兄様のお母様のことも愛していたと信じます。父は立場上あのようなことを言っておりますが、兄様のことを気に掛けていると思います」
「殿下……」
兄は感動したように目を潤ませた。
「……考えましょう、殿下!」
兄は突然私の手を取ると、そう言った。
「は?な、何をです?」
「殿下の婚約を白紙に戻す方法をです!私は……僭越ながら兄として、貴女に幸せになっていただきたい」
「兄様……」
余計なお世話です。
私自身は納得してるのに、なぜそう面倒なことを言い出すんだ!私か?私が悪いのか?何も考えずにペロッと話してしまった私の所為か!
「兄様、私は」
「いいんです!何も言わないでください!」
遮んなや。人の話は最後まで聞いてくれ。
「殿下、がんばりましょうね」
正義感に輝く兄の目を見て、私は無言で頷くことしかできなかった。




