表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

SOUL CREST

作者: 羽塚 翼都

『異世界』

とある異世界の自然豊かな森の中で、一際目立つ王国がそこにはあった




いつもは静かな城の中…しかし、今日は一変して慌ただしかった




『姫様!?…姫様!?』




城の中で、バタバタと何人ものメイド服を着た少女達が廊下を走り城の中にあるいくつもの部屋を1つ1つ開けていく




そこに他の人とは違い、ゆっくりと1人のメイドに近づく男がいた




『将軍!いくら探しても姫様がどこにもおりません!』




その将軍と呼ばれる男は、その名に相応しく純銀の鎧を全身に纏い、その手には自身の2倍ほどある大きな槍を持っていた




将軍は半ば諦めかけているメイド達に激を飛ばす




『まだあきらめるな!必ず姫様はどこかにおられる!城下街も隅々まで探すのだ!』




『はいっ!!』




そう言って去っていく何人ものメイド達…そして、ああは言ったものの、将軍自身も内心焦っていた




『ふっ…情けないな…将軍ともあろうものが…』




将軍は心を落ち着けるために城の窓から青空を眺める…




『姫様…一体どこに…』




将軍が独り言を呟いていると、青空の一部分から雲が突如現れ、次第にその雲が濃くなっていきその中心から1つの光が地上に射した




『っ!!………まさかっ!』




その光景が何を意味する事なのかに気づいた将軍は兵を何人か引き連れ、急いでその方角へ向かう




……………………………

…………………………………

………………………………………



『現世』


電車が多く行き来する夕暮れの鉄橋の下にその少年は立っていた

しかし1人では無く、体格の良い十数人の男たちが呻き声をあげながら倒れている、その中で…




『はぁ…はぁ…くそっ…』




息を絶え絶えにしながらそう言って、その少年はその場に座り込む




『(またやっちまったよ…俺のバカ)』




そう心の中で呟きながら少年は自分の頭を軽く小突く




彼の名は夜城幸人やしろゆきと、見た目が少し怖いだけの、どこにでもいる普通の高校2年生である

そんな彼がなぜこのような状況になったのかは理由がある




~数十分前~




『(はぁ~今日も疲れた~……)』




彼は放課後、学校での授業を終え帰宅しようといつも通り、堤防を歩いていた




『やめてください!』




幸人は声のした方を見てみると、フードを被って顔を隠している少女が鉄橋の下で十数人の男達に絡まれていた




『いいじゃねーかよ~俺たちと遊ぼうぜ?』




『いやです!私には大事な使命があるんです!』




『使命?そんなもんより俺たちと遊んだ方が楽しいぜ?だから…な?』




『……っ!いやっ!離して下さいっ!』




嫌がる少女の腕をつかみ、無理やり連れて行こうとする男達、そんな光景を見ていた幸人は自然に身体が動いていた




『おい?』




『あっ?……がっ!!!』




幸人は十数人いる男のうちの1人に声をかけ、その男の振り向き様に上段蹴りを喰らわせる




『なんだおめぇはぁ!』




その光景に気づいた十数人の男達が幸人を睨みつける




『その子嫌がってるじゃん…離してやんなよ?俺と遊ぼうぜ?』




『上等だ…いくぞおらぁ!』




そう言って幸人に突っ込んでくる十数人の男達、そんな光景を幸人は微笑みながら迎え撃つのであった




……………………………

…………………………………

………………………………………




そして今に至るのであった




『(やっべ~…また停学かも…いや、もしくは退学かも…はぁ…)』




そう…彼がこう言う事をするのは今回が初めてではない、彼には、こんな事がしょっちゅうあるのだ

彼は基本的に喧嘩は嫌いなのだが、困っている人を見ると放っておけない性分で、また誰かの為に役に立てるのが嬉しくて微笑んでしまうという癖を持っている

そんな事が災いし、彼は他校からも狙われる立場になってしまった

また、見た目が怖いのと微笑みながら敵を殴り倒していく様から、学校では『悪魔』と呼ばれ、現在も恐れられている

高校入学時に仲良くしていた人たちも、相次ぐ騒動の為、高校1年の後半には周りに誰も寄り付かなくなっていた




『(それに、これで他校から狙われる可能性がまた増えちまったな…)』




そう心の中で呟き、幸人はため息をつきながら立ち上がり、家に帰ろうとした時




『あのっ!』




突如後ろから、先程絡まれていたフードの少女に話しかけられた




『えっと……なに?』




『あ…ありがとうございましたっ!』




そう言って丁寧にお辞儀をする少女




『い…いや別にそんなお礼されることは…』




普段お礼など言われる事が無い幸人は、少し戸惑いの表情を見せる




『いえっ!あなたは私の命の恩人なんですからっ!…あっ…そんな恩人にフードを被ったままなんて失礼ですよね…すいません…』




そう言ってその少女はフードを取る…そこには金色の瞳をした銀髪の少女がいた




『(…外人さん…!?)』




てっきり日本語で喋っていたものだから日本人だと思っていた幸人はその場で予想外なことに呆然としていた




『あの?どうかしましたか?』




『い…いや!なんでもないです!』




幸人はこの時、ものすごく悩んでいた




『(ま…まさか外人さんだったなんて…どうする…英語の授業とか基本的に寝てる俺には会話は無理だし…だからって日本語話してたけど…この子が日本語ペラペラだっていう保証も無いし…でもこんな純粋無垢そうな女の子の期待を裏切るわけにもいかないし……あ~どうすれば~~!!)』




幸人が苦悶の表情を浮かべながら頭を掻いていると、少女の後ろからこちらに向かって、ガラス瓶が勢いよく飛んできた




『っ!あぶないっ!!!』




幸人はとっさに身を挺して少女を庇う、そしてガラス瓶が幸人の頭に直撃した




『ぐっ!!』




幸人はその衝撃で意識が朦朧とし、そのままその場で倒れこんだ




『大丈夫ですか!?しっかりしてください!』




少女は、体を揺らして起こそうとするが彼は倒れたまま動かない、そしてその頭からは血が流血していた




『血が………一体誰が……………っ!』




ビンが飛んできた方を見ると倒したはずの男達の1人が立ち上がっていた




『はぁ…はぁ…よくもやってくれたな…あぁ!?覚悟は出来てんだろうな?』




そう言って次々と倒れていた男達が立ち上がり、幸人と少女にじりじりと近づいていく




目の前に流血して倒れている少年をまだ傷つけるつもりの彼らに少女は、怒りの眼差しを向け、その場で立ち上がりある名前を呼んだ




『…あまり人目には出したくなかったのですが…仕方ないです……ウィム!』




少女がある名前を呼ぶ…すると突如、彼女の背中から魔法陣が浮かび上がり、紋章の形を象っていく…そしてそこから光り輝く小さな白竜が出現した




『おいおい…なんだよそりゃあ…』




男たちは信じられないものを見るような目で少女を見つめる




『ウィム!光粒波こうりゅうは!』




少女の指示に従いウィムと呼ばれる光輝く白竜は口から突風の如き白き風を吹き、男達を次々と川へ吹き飛ばしていった




『………ふぅ…ありがとウィム………あっ!』




少女はウィムと呼ばれる白竜にお礼を言うと、幸人のもとへ急いで駆け寄る




『うっ……』




幸人は意識が朦朧とする中でどうにか動こうとしていた




『動かないでください!血がっ…』




そう言っている間にも次々と血が流れていく…このままでは彼が死んでしまう…そう思った少女はある事を思いつく




『こうなったら………』




そう言って彼女が取り出したのは一枚の紙だった、その紙には星形の魔法陣が書かれてあり、それを少し離れた場所に置く




『ウィム!お願い!』




少女の言葉に反応し、ウィムと呼ばれる白竜が光り輝き、先ほど置かれた魔法陣に向かって光の咆哮を放つ

すると魔法陣が反応し、円形に少しずつ広がっていった

しばらくするとそこには、元は草むらであった場所が、一部分だけどこか違う世界の風景に変わっていた




『よいしょっ…と』




少女はウィムの背中に幸人を乗せ、そのまま少女自身もウィムの背中に乗って、その魔法陣の中をくぐっていった




……………………………

…………………………………

………………………………………




『うっ……ん?』




幸人が目を開けると、そこは綺麗な洋室のような部屋であった




『ここは…いっ!』




突然、頭に痛みが走ったので、頭を触ると包帯が巻かれていた




『(そうか…あの時、あの外人の子を守って…………はっ!あの子は!?)』




幸人は周りを見渡すが少女どころか人が一人もいなかった…




『はぁ…一体どこなんだよここは……』




幸人は溜息を漏らし途方に暮れていると部屋のドアが開き、そこからあの銀髪の少女が入ってきた

しかし服装は先ほどの時とは違い、綺麗に装飾された洋服を着ていて、どこか気品にあふれていた




『あっ!目を覚ましたんですね?お体は大丈夫ですか?』




少女は心配そうに幸人に駆け寄る




『ああ…おかげで助かったよ……それよりここは一体?』




少女は幸人の質問にすぐに答えてくれた




『あっ!はい!ここは異世界フレイディルドのユリヴァ―ル地方です』




その言葉に幸人は耳を疑った…




『…………はい?』




銀髪の少女は少年が聞こえなかったのかと思い、もう一度言った




『だから異世界フレイディルドのユリヴァ―ル地方です』




『……………………』




幸人は、ただ呆然としていた…無理もないだろう、いきなりここは異世界とか言われても信憑性はゼロに等しい

しかし窓から見える風景などを見ると、どこか地球とは違っていて、幸人はここが本当に異世界なのだ…という事を信じたくはないが、多少は信じるしかなかった




『………じゃあ…仮にここが異世界だとしてそれを証明する事って出来るか?』




『(あれ?…信じてないのでしょうか…?どうしましょう…)』




銀髪の少女は幸人の質問に戸惑い考え込んでいると突然何か閃き、あの名前を呼んだ




『出てきてっ、ウィム!』




銀髪の少女が呼ぶと、彼女の背中から魔法陣が浮かび上がり、紋章の形を象っていき…そこから光り輝く小さな白竜が出現した




『……………うそだろ……?』




幸人はその光景が信じられずしばらく唖然としていた




……………………………

…………………………………

………………………………………




『…どうです?これで信じてもらえましたか?』




どうにか落ち着いた幸人に笑顔で問う銀髪の少女




『……ああ信じるよ………………(流石にあんな化物見ちまったら信じるしかないよな…)』




その言葉に安堵の息を漏らす少女




『よかった~…あっ自己紹介がまだでしたね?私はユリエル・フォン・アズガルドと言います……長い名前なのでユリとお呼びください』




そう言ってユリと名乗る少女は幸人に手を差し伸べる




『あっ俺は夜城やしろ 幸人ゆきと、よろしく』




2人はお互いに握手を交わした後、幸人は立ち上がってユリに尋ねた




『あの…自己紹介も終わった事だし、そろそろ家族も心配してるから俺、帰らないといけないんだけど…どうやったら帰れるんだ?』




ユリは幸人の言葉に戸惑いながらも真実を話そうと慎重に言葉を選びながら話した




『あの…その…帰れないんです』




幸人はその言葉に戸惑いながらも質問する




『えっ?帰れないってどういうこと?こっちに来れたんだから帰れるんじゃないのか?』




『私達が通ってきた魔法陣は特別なもので…長い時をかけて少しずつ覇力はりょくを込めて作ったものなんです…そんな大変な時間を込めて作った物でさえも、1往復するだけで効力を失ってしまう代物で…』




基本的に頭の悪い幸人はユリが何を言っているのかさっぱり分からなかった




『ご…ごめん何言ってるのかさっぱり分かんないんだけど…もっと分かりやすく言ってもらえる?』




ユリは幸人にわかりやすく説明するために考えながら言った




『えーっと…あの……その……ごめんなさい!つまりあれは15年に1回しか使えない物なんです!』




『……じゃあ……帰れるのは……』




『はい…15年後…ということになります……あなたを助ける為とはいえ、こんな事になってしまって本当にごめんなさい!!』




そう言ってユリは幸人に対して深く頭を下げて謝った




対する幸人はその言葉に戸惑いを隠せず遂に叫んだ




『う…嘘だろぉぉぉぉぉぉ~~!!!???』











こうして夜城やしろ 幸人ゆきとは異世界に迷い込んだのであった


帰れずに途方に暮れる、そんな彼に待ち受ける出来事とは?


次回SOUL CREST 第2話『戦争』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ