立脚する役者達
おっ久しぶりでぇぇぇぇぇす!
こんな小説忘れちまったよ、なんて思わないでくださいね?
天界―――数多の神たちが存在する、全ての世界の外側にして、絶対の世界。
人々に畏怖と尊敬を持ってあがめられている、調律世界。
信仰を持って業となす神たちに仕える天使や、屈強な勇者達が理を動かすために働いている。
『ラファエルー?ラファエルは居るかー?』
「はーい」
ある宮殿の一室に、間延びした声が響いた。
何かもう、色々と台無しである。
執務机から声を飛ばした初老の男性、『断罪神』名をパーニセル。
神たちの中でも異中の異。
罪人を裁くという結果において最強。『断罪』という行為ならば、創造神や破壊神ですら鉄槌を下せるのである。
まぁ、普段はおちゃらけた爺であるが。
ぱたぱたと翼をはためかせながら金髪碧眼のいかにも天使といった青年が老人の前に現れる。
「なんですかー?」
『うむ、彼のことを思い出してな。彼のあの力、あれは破壊神の力じゃ』
「・・・・・・は?」
『考えてみれば簡単なことじゃった。元々彼の罪ではないことを裁こうとしたから、わしの『断罪』が上手く機能しなかったことを差し引いても、あの力は以上じゃ。そんなものは、それこそ創造神―――いや、創造神に戦える力は無いから、破壊神しかおらん』
「し、しかし!あのお二方はもう死んだはずでは!?」
『創造神は死んでおらん。『あれ』はそういう特性なだけじゃ。まぁ、しかし破壊神そのものではないのだろうよ』
「どういう・・・?」
『破壊神の力、つまり業を体現、もしくは封印や侵蝕。といったところじゃろう』
「侵蝕、ですか・・・」
『うむ、そもそも荒神というのは破壊神の別名じゃ。思い出すのに時間がかかったわい』
「どうするのですか・・・?その、彼を・・・?」
『どうもしない、といいたいところじゃが、そうもいかんだろう』
「ならば・・・?」
『神の一柱に加えるしかあるまい』
「それでは・・・・・・あなた様が?」
『うむ。そろそろわしも引退と思っていたからのぉ?丁度いい』
「そうですか・・・」
『苦労をかけるのぉ』
「そうでもないですよ」
青年は苦笑を浮かばせながら、それでもどこか寂しそうな顔で首を横に振った。
それを見てパーニセルも苦笑した。
『フッ。ならば―――玖恩 大和に、わしの『断罪神』の位を譲る』
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「―――はっ!何か悪寒がした……」
玖恩 大和はベンチに寝転がりながらぶるっと体を震わせた。
結局何もせずに決闘当日である。
今日の模擬戦は午前午後とプログラムが分かれて行われる。Sクラスは最後なので暇なのだ。
ある人物から連絡を受けここにいるのだが、なかなか来ない。
学園の中央にある闘技場。
大和は今そこにいた。
闘技場。
およそ数キロはあろうかという円形の戦いの場。
森、川、岩場、沼地といった多種多様な戦場があり、実戦に近い形で戦うことができる。
今もどこかのクラスが模擬戦を行っており、ときおり活気の良い声が飛んできたり爆発音が聞こえてきたりする。
ここでは連日、今日のような模擬戦ではなくとも魔法の授業や訓練があるのでとても頑丈な作りになっている。
「次元崩壊レベルでも耐えられるぞい」
「よぉ、爺さん」
後ろからの声に、腕を上げて答える。
「ふぉっふぉっふぉ。一応学園長じゃぞ、わしは。敬意を払わんか」
「しらねぇよ。で、なんで呼び出したんだ?」
ひどいのぉ、なんて言っているが無視する。
「頑張ってるかな、とおもってな」
「ほんとかよ」
「ふぉっふぉっふぉ。ほんとじゃよ。わしだって君みたいな子には興味が尽きん」
「そうかい」
「それに初日早々やらかしたようだしの?」
「やらかしたとはなんだ、やらかしたとは」
「噂になっておるぞ。Sクラスに魔力を持たない奴が入ったとな」
「そうかい」
「女子生徒に手を上げたとか」
「そうかい」
「・・・・・・聞いてる?」
「いや、聞き流してた」
「おい!」
「どうどう。落ち着けよ」
「誰のせいだと思ってるんじゃ!」
憤慨する学園長を前にからからと笑う。
「はぁ・・・・・・で、どうするんじゃ?決闘」
「やるさ」
「まぁ、やらなければならないだろうがのぉ。問題はおまえさんがどのくらいまで力を示すか、じゃ」
「・・・・・・」
返答に詰まる。
そう、問題はそれなのだ。
Sクラス、『賢者』ヨハネス・ファーデルすら一蹴するその実力を隠すか、隠さないか。
Sクラスとはいっても所詮学園の中での話し。社会に出ればせいぜいがCクラスの彼女に負けるはずが無い。
大和自身、この力を隠すつもりはないのだから本気でやってしまえばいいじゃないかとも思うが、世間がどう思うか。
シャリオの奴等はいいだろう。活動の間によったギルドの連中も気のいい奴等だったから心配は要らないが、そこだけで世界が成り立っているわけではない。
かならず、不穏分子が出てくる。
それをよしとするか、でないようにするか。
「結局、人はどこまでいっても群れる生き物じゃて。魔法が当たり前のこの世の中に、おまえさんのような『理解の外にいる強者』がでてくればどうなるか。想像に難くない」
「・・・・・・難儀なもんだなぁ」
「仕方あるまいよ。こればかりは、割り切るしかない」
思い出すのはあの娘の目。
あんな目は見たくない。あの娘のような美人が、あんな色を宿すのは、嫌なものだ。
ああ、そっか―――。
救ってやるって思ったんだっけ。
償おうと決めたんだっけ。
立ち上がる。
「決まったのか」
「ああ、爺さん。悪いな」
「ふむ、やっぱりのぉ。おまえさんならそうするとは思っとったよ」
「ははは。後始末は頼むよ」
「できる範囲でな。最悪、切り捨てるかもしれんぞ?」
「やってみろ。ぶっ潰すぜ?」
「おお、おお、怖い怖い。まったく、老体になんという仕打ちじゃ」
二人してからからと笑う。
「さてと―――」
決闘まであと2時間。
「売ってやるぜ。最高の喧嘩を、よ」
男は、立つ。
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