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我ら科学部!

我ら科学部! 助っ人編

作者: ミスター

「我ら科学部!」シリーズ初となる引退後の物語です。


不当な扱いを受ける谷津君をご覧ください。


今回は実験を中心に書きました。


これ読みながら実験することも可能なくらい詳しく書いたつもりです。


ちょっと真面目過ぎたかも…。

あと3日で夏休み。


そんな今日久しぶりにあの元部長からメールがきた。

元部長…野御丸のおまる じんその人である。


で、メールの内容はというと…。


『おい!岡品!谷津!夏休みがスタートする明後日!10時に化学室に来い!拒否権はお前には無い!覚悟せよ!』



岡品おかしな 谷津やつは俺の名前。何故あいつがフルネームでメールに書いたかは不明。


そして…夏休みは明後日からじゃねぇ…。


取りあえず返信しとこう。


『夏休みは3日後からだ!1日早く夏休み気分になるなよ…。で?何やるんだよ?もう部活は引退してるし…。というか、夏休み初日は補習入ってるから無理だ。




ちょっと待つと返信が来た…。


『補習?…サボれ。何やるかはお楽しみ!部活関連ではあるけどな!

は?夏休み…明後日からじゃないの?絶対信じない!嘘つきめ!お前は信じられないからな』


…ウザッ!


『あ~そうかい。行かねー…』


一応返信するだけでも有り難いと思え。

返信が来た。


『は?ふざけんな!福袋の癖して!』


…?福袋…?


気になって返信してしまった…。


『ちょっ!福袋って何?』


着信あり。


『福袋?副部長だよ!バーカ!節穴め!』


カチン。


『行かねー(怒)。スマートじゃないやつがスマートフォン使うとこうなるのか~。』


メール受信。


『スマートだよ!俺は痩せてるからな!絶対来いよ!』

なんだこいつ…。


『いや、補習を優先する。そしてスマートフォンのスマートは痩せてるの意味じゃないし…。どちらかというとスマートフォンてデカくね?』


センターにメールあり。

メール受信中…。

受信完了。


『は?ふざけんなよ!ジュース出すから!な!?それよりスマートは痩せてるじゃないのか?確かにデカいが…』


面倒なやつだ…。


『前向きに検討します』


メール1件受信中。

野御丸 仁

受信が完了しました。


『前向きに検討しといてくれ。前向きにだぞ?いいな!』

という文章の後に明らかにマッチしないモアイの絵文字。



…夏休み初日は補習がある…。あいつには悪いが…。




3日後…。

夏休み初日。


化学室に足を運ぶ一人の男がいた。



岡品谷津…。時間は朝9時半。


言われた時刻よりも30分早い。


俺は化学室の扉を勢い良く開けた。


「あ!谷津来た!」

嬉しそう叫ぶ元部長。


「言ったろ?前向きに検討すると…」


「来ると信じてたぞ!」


「お前は信じられないと言ったのはどこのどいつだよ…」


「というか、何で来た?補習は?」


「すっぽかした。ジュースがでるというから来た!で?何やんの?」


「言ってなかったっけ?」


「言われてね~よ…」


「親子化学体験教室」


「あ~はいはい。確かにこの時期だったな!」


親子化学体験教室とは…。


小学生相手に我ら科学部が実験教室を開くのである。


付きっきりで実験の補佐をやるのだ。


実験の内容は覚えてないがここにいる元部長が「あの娘将来のスターだ!」と興奮していたことは良く覚えている。


そこに俺が「今でも既にスターだろ」と言ったら大変なことになってしまった。

「谷津!じゃあまず全てのトイレにこの『男子トイレ』と『女子トイレ』の紙を貼ってきてくれ」


「ちぃ、いきなり雑用か…」


文句を言いつつも紙を持って化学室を出た。


「全てって…。4階から1階までかよ…」

各階にはトイレが2カ所ある。片方が男子トイレ、もう片方が女子トイレだ。


全8カ所。

結構な重労働である。




全て貼り終え化学室に戻る。


「終わったぜ…」


「お疲れ。そろそろ人来るから下で案内してきてよ」


「はっ?それも俺?」


「うん。行ってきて」


「扱いが不当なんだけど…」


「いいから!早く!」


追い出されるように化学室を出る俺。


そのまま昇降口へ。


暫くすると参加者の親子がやって来た。

化学室は二階の一番奥にある。


口で案内するのは大変だ。


「ここを真っ直ぐ進むと階段がありますので、二階に上がって下さい。階段を上がってすぐ右に進み奥まで行って下さい」


この説明をただひたすら繰り返すこと30分。


化学室に戻る。


「お疲れ~。じゃあ初めていいんじゃね?」


「じゃあ早く始めなさいよ!」


「いや、今回はお前が進行役」


「は?今の部長の仕事だろ!」


「あやつは今日特進クラスの合宿で来れないと…」


「じゃああんたがやりなさいよ!」


「いや、よくわからないので…」


「さっきちらっと役割分担表見たら俺6班の担当だったんだが…」


「うん。6班見ながら司会やって」


「至難の技!」


「ファイト!」


「扱いが不当だ…」


文句を言いつつも前に立って取りあえず喋る。


「え~…皆さん。今日は親子化学体験教室に参加して頂き誠にありがとうございます。本日案内させて頂くことにさっきなりました岡品谷津です。1日宜しくお願いします」


微妙~な拍手が起きた。


「では、早速実験を始めたいと思います。あ、6班は私が担当させて頂きます。えっと、まずはスライムを作ります」


そこまで言って6班の所まで行く俺。


「まず100ミリビーカーに水を30入れてください」


取りあえず指示をだす。


自分の班を見た後周りを確認し、全ての班ができていることを確認する。


「次に、さっきの水を紙コップに移し、好きな色を水に付けます。色は赤、青、黄、緑があります」


全班色を付け終わったか確認する。


「色水に、洗濯のりを30ミリ入れて混ぜます」


一々確認してから次の工程に入るので大変である。


「次に、良く伸びるスライムを作る為に一工夫します。この液体を入れてください。安全な物なので安心してください(笑)」


俺は手元にあった透明な液体を持ち上げた。


「できましたか?最後に、硼砂飽和水溶液を30ミリ入れて混ぜれば完全です」


あちこちで「おー!」と歓声が挙がる。


硼砂飽和水溶液を入れるとすぐに反応するので、それに驚いているのだろう。


「手に取って触ってみて下さい。良く伸びると思います」



暫く次の実験に行かないので担当する親子に自己紹介した。

「今日担当させて頂きます岡品です。宜しくお願いします」


水野みずのです。この子は真緒まおです。小さいけど小学6年です。宜しくお願いします」


「水野さんですね。宜しくお願いします」


身長だけで見たら確かに3年生くらい。かなり可愛い子である。決して変な意味ではない。


おっと、可愛さに見とれていた訳ではないが説明を忘れていた。


「先ほど入れた透明な液体は、希炭酸ガムという粘りを出すために使われる食品添加物の一種です。これを入れたため粘りが強くなり良く伸びるスライムができた訳です」


丁寧に説明したつもりです。


「スライムができる仕組みを説明します。洗濯のりはPVA即ちポリビニルアルコールという高分子化合物です。ポリビニルアルコールの『ポリ』は沢山、『ビニル』はビニルという官能基、『アルコール』はそのままアルコールです。つまり、沢山のビニル基がくっついたアルコールという意味です。ホウ酸イオンがポリビニルアルコールを網状に結合させます。その間に水分子が閉じ込められて柔らかいゲル状のものになるのです。しかし、今日は『どうして?』よりも『化学って面白い!』と思って貰えれば十分ですので、難しいことは無視してください」


一通り説明してみた。


聞いてるのは熱心な保護者のみ。


「できたスライムは袋に入れてお持ち帰り下さい」


俺は暫く保護者と雑談中。


科学部の活動についてとか、学校生活についてとか。質問されたことに答えてます。


因みにうちは男子校。さっきトイレに紙貼ったのも男子トイレしかないから

相手してるのは女の子。いくら学校楽しいアピールしても無駄です。


暫く話した後…。


「そろそろ次の実験に行きます。次は人工イクラです」


ここにきて思う。

司会って大変。


「まず、アルギン酸ナトリウム100ミリをコミカルビーカーに3等分してください。できましたら、それぞれに色を付けます。ピンク、緑、青、黄、オレンジから3色選んで下さい」


俺も真緒ちゃん要望の3色を取ってきた。

やってることは完全にパシリです。


「次に、200ミリビーカーに100ミリ水を入れ、20グラムの塩化カルシウムを溶かして下さい。塩カルは既に計って薬包紙の上に置いてあります。全て入れてください」


溶かすのに地味に時間がかかる。


「出来ましたか?そしたら、スポイトを使って、色水を一滴ずつ垂らしてみて下さい」


「おー!」という歓声再び。


「固まると思います。ある程度やったら手に取ってみて下さい。潰すと中は液体なので飛んでくることがあります。気を付けてください」


ここでまた暫く班を見る。


「中が液体なので、塩化カルシウムと触れた部分だけが反応するということが分かるかと思います」

とか

「カルシウムがあれば反応するんで、色を付けるのに絵の具を使わず、塩化カルシウムの代わりに無害な物を使えば食べれますよ」

とか補足説明したりした。


「ここで、人工イクラの仕組みを説明します。実はこの人工イクラ、表面は昆布などに含まれるアルギン酸という食物繊維でできているんです。アルギン酸はカルボキシ基という官能基があるため、カルシウムイオンと反応し水に溶けにくくなります。この実験では、アルギン酸ナトリウム溶液を塩化カルシウム溶液に垂らすことで、表面だけが不溶化して膜ができるのです。まぁ、難しいんで、ふ~ん程度に聞き流してください」

解説終了。

これでも丁寧に解説したつもりです。


「次の実験に行きます。次は金属アメンボの実験です。まず、二本の針金を真ん中でひねって止めて下さい。そしたら、針金の先を渦巻き状に巻いて下さい。この時、水面と平行にして下さい。また、渦巻きの間隔が広すぎると上手くいかないのでご注意ください」


一通り説明した。


取りあえず自分の班をアシストする。


見事成功。


「重たいイメージがある金属も浮くんです。これは表面張力が働いたため浮いています。本物のアメンボも足に細かい毛が沢山付いていて、表面張力を最大まで利用してるんです。ですから、本物のアメンボも、この金属アメンボも洗剤なんかを垂らして表面張力が働かないようにすると沈みます」


豆知識披露。


知識があるのに成績が伴わない男!


それが岡品谷津である。


「それでは、金属アメンボの解説をします。これは表面張力の力です。こぼした水が丸くなったり、コップの水が盛り上がってるのにこぼれない理由もこれです。金属アメンボも本物アメンボも、表面張力で浮いています。石鹸などをこれらが浮いている水面に垂らすと表面張力が無くなり浮いていられなくなって沈みます。アメンボを見つけたら是非やってみてください。ただ、環境に影響が無い程度に、沈めたアメンボは助けてあげてくださいね」


全ての理由は表面張力!


楽でいいですね。


「最後にドライアイスの実験です。今日はドライアイスを作るところからやります。あそこにガスボンベがありますね?ってうわっ!」


元部長が既にガスボンベからガスを出している。


結構な音の大きさに驚いてしまった…。


「びっくりしたな!失礼しました。えっと、今ドライアイスを作っています。二酸化炭素を一気に出すと、断念膨張して二酸化炭素が昇華し、ドライアイスができます」


説明してる間にドライアイスができた。


それを各班に持っていく。


「まず、ビーカーに水を入れて下さい。そこにドライアイスを入れてください。尚、このドライアイスはとても冷たく低温火傷の恐れがありますので、保護者の方が軍手をはめてやってください」


水が入ったビーカーにドライアイスを入れると、すぐに気体になる。


その気体は、ビーカーから出て行かず、暫く水の上に溜まる。


「気体が外に出ないのが分かるかと思います。これにより、二酸化炭素が空気より重たいのが分かるかと思います」


実験から分かることを言うのも司会者の役目。


「最後の実験です。ドライアイスをフィルムケースに入れて蓋をしてください。この時絶対に覗かないでください。覗きは犯罪です。嘘です。危険なので覗き込まないでください」

適当なギャグを入れてみた。


ドライアイスをフィルムケースに入れて暫く見ていると…


相当な勢いで蓋が飛ぶ。


「これはドライアイスが気体となり体積が増えたため、蓋を押し出したのです」


すかさず解説を入れる。


「僕はですね、何を思ったのかドライアイスを水筒に入れて蓋を閉めたんです。そしたら蓋が開かなくなりまして…。暫くしたら手に持った状態で爆発しました。すげー怖かったです。いや、ドライアイスの力は半端じゃありませんよ…。持つ所が取れて蓋が弾け飛びましたもの!」


「それは…お前がバカだっただけだろ!」


元部長が珍しく突っ込んできた。


普段ボケる側なのに…!

「以上で実験を終わりにします。今日は参加して頂き有難うございました。アンケートを用意しておりますので、どうか、ご協力ください」


最後にしっかり占めた。

しかし…。


余計なことを口走る元部長バカ一人。


「谷津~!シーサーのモノマネやって~!」


はぁ?この大勢の親子の前で?


「嫌だ!」


とは言ったが…。


(何だ?シーサーのモノマネって?シーサー?どういうこと?)


なんか凄い注目を浴びている。


視線が痛い。


「これから、谷津君がですね、シーサーのモノマネをやってくれます。皆さん見てください!」


元部長の攻撃が飛んできた。


この空気を作り出されては後には引けない。


最低な人間だ!

野御丸仁!


取りあえずシーサーっぽく床に座り…


「がおーー!」



…。


…。


「もう二度とやらない!」



全ての親子が帰った後。


「お前…よくあの場であれを披露したな…」


いろんなやつに言われた。


「うるさい!うるさい!そういう空気だったじゃん!」


とにかく反抗。


「それよりさ、お前は何でこういう時だけ良く喋るの?教室だと喋らないのに」

仁に聞かれた。


「いや、だって…ねえ…」


「あ!マダムキラーだからか?」


マダムキラー…。

去年の親子化学体験教室の後突然顧問が俺のことをそう呼んだ。


「マダムには興味ないし…」


「あ~そうか。わかった!ロリだな!?」


「…いや、そうじゃなくて…」


「嘘つくなよ!お前が担当した娘、可愛かったじゃん」


「可愛かったけどさ…というか、そういう目で見るなよ!」


「ごまかしたな!」


「シーサーのモノマネをごまかしたかったよ…扱いが不当だよ…」



暫く雑談してたら顧問がジュース持ってきた。


「今日頑張った褒美だ!」


だと。


「俺は二本貰っても差し支えない働きを示したと思うんだがなぁ…」


「ダメだ!平等にみんな一本だ!」


「黙らんかいダメ部長!働きが平等じゃないんじゃ!」


「もう部長じゃないし~」


「腹立たしいわ~」



また顧問が化学室に入ってきた。


「谷津~。トイレの紙剥がしてきて」


「…わかりました…」



何故?何故一番働いている俺が使われるんだ?


顧問曰わく、「貼った人が剥がせ」

だと。


四階の紙を剥がそうとしたら「物理はまだ終わってないからダメ!」とか文句いわれたし…。


お構いなく剥がしてやる!


全く…。


何故この部活はこんなに人使いが荒いんだ…。


仮にもこちらと引退した身だぞ!


言いたいことは山ほどあるが取りあえず紙を剥がして化学室へ。


「あれ?先生。他の奴らは?」


「みんな帰ったよ」


はぁ?


扱いが不当だよ…。

今回も5割実話です。


シーサーのモノマネは作者の黒歴史です…。


そもそも、実験教室に呼び出されたのは「人手が足りないから」なんですね。


「我ら科学部!」シリーズ初の実験風景をちゃんと書いてみました。


はい。


次のこのシリーズは文化祭になると思います。


それ以降はもう部活に参加するチャンスが無いんですよね…。


ん~…。


まあ、何とかしますよ!


では、次に谷津が苦しむ姿を楽しみにしていてくださいね!

(というか、谷津=作者なんだよな…)

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