説明書はまるで禁書のように扱われる話
「なんか変なんだけど、ちょっと見てくれない?」
会社や家庭でよく聞く言葉だ。
この一言を聞いた瞬間、だいたい作業は止まる。
わかったよー
いつものように軽く返事をして、今している作業を中断する。
正直なところ、この時点で少しだけ嫌な予感はしている。
さて、今回はなんだろう?
げんなりした気持ちを押し込みながら、問題を聞いてみる。
どこが変なの?
「なんか変なの」
答えになっていない。
いや、情報としてはゼロに等しい。
えっと、どういう事がしたいのかな?
「えっと、なんか…こうしたら…ほらっ」
ジェスチャー付きで説明される。
…これって説明書に書いてあったよな。
たしか、同じような操作手順が図付きで載っていたはずだ。
えっと、説明書に書いてあったよ?
「そうなんだ!じゃあ、説明書取ってくるね!」
それって…
「はい!説明書!」
笑顔で渡される。
いや、そうじゃなくて。
……私がやるのかよ。
心の中でそう呟きながら、説明書を開く。
なんとか内容を読み込み、問題を整理する。
思った通り、普通に書いてある内容だった。
作業を進め、ようやく問題を解決する。
「ありがとう。助かった。これお礼。説明書を読まないと分からないなんて不親切だよね」
それじゃあ…また何かあったら呼んでね。
自分の作業に戻る。
お礼に貰った缶コーヒーを飲みながら、ふと考える。
それ前にもやったよね…と、
小さくため息が出る。
『説明書は読まれない前提で存在している』…らしい。
これが私のルーチンワークです。




