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挟撃


 ――依頼は小妖魔(ゴブリン)にさらわれた村人の捜索と救出だった。


 その巣穴と思わしき洞窟を、パーティーの斥候が発見し、ハルハと4人の冒険者は中へ踏み入った。


 暗い洞窟で、人間族(ヒュム)は夜目が効かない。


「魔法使いの嬢ちゃん、明かりとか出せるか」

「いえ……無属性の術式に、光源はありません。それにここは、(ひかり)現象核(オリジン)が少ないので、どちらにしても厳しいです」


「そうか。やっぱすげえな嬢ちゃん。先生みたいな受け答えするじゃん」

 そうして、冒険者達は、それぞれ準備している光源を灯す。

 魔術などで光源が出せないのならば、冒険者は松明や、携帯用のランタンを頼りに進むのがセオリーだ。


 それから暫く進み。

 一向に、魔物の気配がないまま、暇つぶしに誰かが話しかける。 


「――ハルハちゃんは何で冒険者になったんだ?」  

 

「せっかく習得した魔術を、何かの役に立てられないかと……」

「魔法使いの冒険者っぽい理由だ」

 ハルハは少しショックを受けて。

「え? そうなんですか……」

「ああ、けど、誰だってそうだ。力があれば試したい、そう思うのは当然だろ?」


 別の冒険者も問いかける。

「魔法は? 誰かに習ったの?」

「いえ、実家が魔法図書館をやっていて、そこで魔導書を読んで……」

「独学!? 実家が魔導書の図書館って……もしかして北の魔法都市出身?」

「ええ、そうです」

「そうだよな。魔法図書館てこの大陸に1個しかねえもんな。じゃあ、あの古代図書館の管理してるとこの娘さんだったのか……?」


 こいつはヤバイ人物だという雰囲気が、一同を支配する。

 そんな最中。

 

 急に涼しげな空気が吹き抜ける、広い空間に出る。

 

 ランタンを照らしても底が見えない。

 けれど、聞き耳を立てれば聞こえる水の流れが教えてくれる。

 そこは、数十メートル直下を地下水脈が流れる空洞内の渓谷。

 対岸の洞窟へ移るためには、そこにかかる一本のつり橋を渡る必要がある。


 その橋の真ん中に差し掛かった時。

 


 ガシャン。


 ――冒険者の持っていたランタンが壊れた。

 

 ハルハは短い悲鳴を上げ。

 だれもがすぐに悟る。


 矢や、石のようなものが、渓谷の横っ面から飛んできている。


「敵襲だ! 渡れ、急ぐんだ!」 


 そんな間にも冒険者の手にしていた松明も叩き落とされ。

 周囲が暗闇に閉ざされる。

 

 対岸は、細い通路を抜けるとすぐに小さな空間だった。

 そこに駆け込んだ冒険者たちを待っていたのは、待ち伏せ。

 そして、切り落とされたつり橋、後方からの挟撃。


 退路を奪われ、いちばん先にたどり着いた剣士があっという間に串刺しにされ、後方の斥候も同様に倒れた。

 

 あっという間の出来事だった。

 悲鳴さえ上げる暇など無く、ハルハは一瞬唖然としていた。 


 そんななか。

 すかさず神官が、『治癒の天恵(ヒール)』を準備する。

 ここで、唯一治療ができる女神官が倒れたら終わりだ。


 そして今、その迎撃が出来るのは、弓兵とハルハだけ。


「くそっ! 」


 暗闇の中弓兵が後方へ闇雲に矢を射かける。

 それでも、細い通路だ、避ける隙間など無く、幾匹かのゴブリンが倒れた声や気配が伝わった。


 当然ながら、前方にもまだゴブリンは居る。

 見えないからわからないが、数十匹いてもおかしくない声と気配がある。


「……鉄等級(アイアン)の冒険者なのに、なんでこんなことに……!」


 木等級(ウッド)の自分よりも、見習いではない正規の冒険者が真っ先に倒れた不甲斐なさを口から零しつつも。

 目の前の剣士を殺り終え、向かってくる脅威に対し。


 ハルハは少しの苛立ちと焦りの中、急いで魔力を練り上げる。

 ハルハは、魔法陣型の魔術師だ。

 魔力さえ準備出来れば、あとは流し込むだけで設定した魔法陣が自動的に術式を発動する。

 

 ギリギリ、魔力を準備し終え、術式宣言で魔法陣を起動する。

 

「『魔弾(エナジーボルト)』!!」


 超凝縮された高密度の魔力弾が、目前に迫るゴブリンを粉砕し、後方の数体を貫いて深い傷を負わせる。


 けど、押し寄せるゴブリンの数は前方の方が遥かに多い。


「く、時間さえあれば、範囲の術式(マジックボム)でまとめて吹き飛ばせるのに……!」


 しかし、今そんなに多くの魔力を準備する時間はない。 


 むしろ通常は、魔気(オド)魔素(マナ)現象核(オリジン)で魔力を生成するところを、無属性魔力だけは例外で、魔気(オド)魔素(マナ)魔素(マナ)の組み合わせになる。

 同じ要素を2倍準備する必要があるため、無属性魔術は準備に必要な時間が通常よりも長くなってしまうのだ。


 歯がみする。

 命がかかっている。

 1秒ごとに、死という恐怖が押し寄せる。


 焦る、焦る、焦る。


 でも。 


 一番最短で撃てる魔術が魔弾(エナジーボルト)なのだ。

 それでも5秒程度を要することで、ジリジリと追い詰められていく。

 魔法陣型は、陣の記述によって準備しなければならない魔力量が決まっているのだ。

 だから、ハルハの魔力生成速度では、魔弾(エナジーボルト)には必ず5秒の時間を必要としてしまう。


「『魔弾(エナジーボルト)』!!」


 また、ゴブリンたちが数匹致命傷を負うが。

 一撃が砲弾級の威力でも、魔力を練っている間の術師は無防備でしかない。

 

 やがて。

 

「うがぁ!?」


 ハルハの後方で、弓兵も倒れた。



「――そんな……」

 神官が治癒を施しても、既に前衛二人に息は無く。

 治癒は効果を示さない。

 次いで神官も倒れ。


「く……まにあわ……!」


 ハルハも。

 倒れた。

  

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