邂逅2
「え? 何?」
状況的にもある意味ピンチな所、新たに表れた刺客に、プリムティスは狼狽える。
その油断を突く様に。
ガシリ、とその掌がつかまれ
詰め寄られていた筈のエルフが、逆に詰め返す。
しおれていた花が、一気に開花するようなキラキラな瞳の笑顔で。
「あのっ、プリムティス様! あなた様は私の村を救ってくれた、あの時の英雄様ですよね!?」
「え、ちょっと……!?」
さらにプリムティスは狼狽える。
距離を取ろうにも、エルフに手は掴まれたままだ。
それはもう、両方の掌でガッシリと。
「――……あの時と言われても、どの時だか……」
数多く色々なものを救ってきたプリムティスは、どれがどれだか解るはずもない。
「10年前、北西森林地帯のエルフの村で……!」
「え、エルフの村? ……?」
例え10年前でも同じだ。
まだ魔王が倒されていない時分の事で、その時だって色々な魔物討伐任務をこなしていた。まるで見当はつかない。
いや、でも……そういえば――。
プリムティスは、何かを思い出しかけた。
けどそこに。
パシン。
と、プリムティスを掴むエルフの手を振り払って、割って入る人族の少女。
「いい加減にしなさい!」
両手を広げ、ドワーフを庇うようにしてエルフの前に立ちはだかる。
「プリムティス様が困っているではないですか! そもそも、勇者様に気安く触れるなんて……! しかも2回目ですよ! 分をわきまえて」
「なっ!?」
長くとがった耳のその顔は、驚愕と少しの苛立ちを孕んでいて。
「いきなり、だれ?」
エルフは突然現れた、ありきたりな魔法使い風の少女を見る。
けど、その服は所々ほつれたり、穴が開いていたりしてボロい。
凛として険しい顔の人間族の少女は、エルフを睨み付けたまま、強めに言う。
「とにかくはなれて」
けど後ろは壁だ。
だから、エルフは言われるがままに少し通路に逸れて距離を取った。
言われるがまま、というよりは、警戒してといったところだが。
そして改めてその風貌を見る。
「――魔法使い? 冒険者……?」
そんなエルフの呟きに。
「違うわ。その娘はまだ、冒険者じゃない」
プリムティスが答える。
その少女の事は覚えていた。まだ最近だったということもあるし、ギルドの規約違反を犯していたからだ。
ここは裏通りだが、それでもこの街は人の往来が多い都市圏にあたる。
誰も来ないという保証はない。
その証拠に、幾人かの人が、路地に入ってくる。
プリムティスは慌てて、壁の方を向き。
私は立ちションしているだけですという雰囲気を醸し出してやり過ごす。
「ったく……この状況で込み入った話は困るのよね」
割って入る前に、魔法使いの少女がやったのだろう。――路地の隅に、ハンカチを広げ、その上に丁寧にたたんだ赤いマントを置き、さらにそのうえに鎮座させられた兜。
それを、プリムティスは拾い上げる。無論マントもだ。
マントを身に着け。兜をかぶり。
中堅程度の冒険者風の装いとなったプリムティスは、まだ剣呑な状態の二人に言う。
「――場末の酒場にでも行きましょう。話はそこで聞かせてもらうわ」
主賓がそう言って路地から出ていくのならば。
追いかけない訳にはいかない二人は付き従う他ない。
「ふん!」
人間族の少女は、エルフに敵意丸出しでさっさと追いかけ。
「何、アイツ」
ふてくされるエルフもまた、それを急いで追うのだった。




