邂逅①
プリムティスは兜をかぶり直し、応接室を出ていこうとする。
そこへ。
「プリムさん、お待ちください」
受付嬢が一度応接室から出ていき、暫くすると戻ってきた。
「これを……。腕利きの職人にクリーニングをお願いしておきました」
そして、差し出された赤い布を見て、プリムは理解する。
「ああ、あの時の。さんきゅー」
少し前、洞窟で女性を助ける時にかけたマントだった。
綺麗にたたまれており、きっと、あの場の匂いや汚れも有ったろうに、今はピカピカでいい匂いがする。
それを手に、プリムティスは応接室を後にし、1階のフロアへ階段を降りる。
ギルド長もそれに続く、その後ろには受付嬢もだ。
仮にも英雄だ、お見送りの必要がある、と。
けど。
後方を振り返り、見上げる小柄なドワーフは小声で。
「ちょっと、ついてこないでよ。目立つでしょうが」
「ワシだって1階に用があるんだ、仕方ないだろ?」
プリムティスとギルド長のやり取りを受付嬢は微笑んでみつつ。
そうしてさらにドワーフは続ける。
しかし今度はうっかり普通の声量だ。
「そう言えばギルド長、この前出した報告書読んでくれた?」
「鉄等級に木等級が混じっていたって話か?」
「そう、それ。あの鉄等級の身分証、この街の発行印入ってて驚いたわ。もっとしっかり管理してよね?」
「面目ない。ちゃんとあれから依頼書の受付時に、身分証の確認を徹底するように言いつけたよ。なぁ?」
「ええ。受付一同、気を引き締めさせてもらいましたので、ご安心ください?」
「ならいいけど……。あと、例の件の事もよろしくね」
階段を降り切ったところで、受付嬢とギルド長は立ち止まり、プリムティスを送り出す。
◇◇◇◇◇◇◇◇
その様子を、漆黒の帽子とローブを纏う魔法使いの少女が見ていた。
凝視する先には、革の鎧を身に着けた小柄な体躯。
子供、よりは少し大きく、大人よりは小さいそんな背丈。
しかしその手には、赤い布が持たれている。
モフモフの白い部分が見え隠れしていて……。
マント? あの色 まさか……?
少女は、何かしらの直感のようなものを覚えた。
けど、背が違う。装備も違う。
別人? 関係者? でも……。
気になって、後を追いかける。
ギルドの入り口に向かう、その背中を。
◇◇◇◇◇◇◇◇
冒険者たちの多くが往来する建物の入り口。
そこに、今エルフが覚悟を決めて、その中へと入っていった。
その時、
「あっ!?」
出てきた小柄な人物と鉢合わせて衝突した。
革鎧を着た小柄。
ちょうどエルフと同じくらいの背だが。
けれど、その高さは偽りだった。
無理やり底の厚い靴を身に着け、ぶかぶかの兜をかぶったその人物は、少しバランスを崩し、不覚にもその場で倒れそうになった。
それを、エルフが抱き止める。
衝突の衝撃、抱きとめられた緩急。
ぶかぶかの兜がすっ飛んでいった。
地面に落ちてそれはカラカラと音を立て。
手にしていた赤い布が宙を舞う。
「え……?」
エルフは、一瞬でそれが誰なのかを悟った。
そして、革鎧の小柄は、すぐさま態勢を立て直し、エルフの手を引いてあっという間に引き摺ってその場を後にする。
路地裏で。
「ばかばかばか! ――……あんなとこでバレたらどうすんのよ!」
エルフは詰め寄られていた。
憧れていた筈の、その人物に。
しかも。
「あの……」
黒い魔術師風の少女もまた。
拾った兜と、紅い布を手に。
「……私を助けてくれた、冒険者……いえ、勇者様ですよね? プリムティス様」
その場に居合わせたのだった。




