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第15話 騒音根絶やしコンビ

 ルークたちが森でフォレスト・ウルフを狩っていた頃と同時刻、メリッサとエマはダンジョンに到着する。


「今回はメイラスの地下まで潜るので、かなり深く探索しないといけません。気を付けていきましょう」


「了解……とは言っても、どうやってメイラスにある家の地下まで行くのさ? 闇雲に感覚で進んでもわからないと思うけど」


「そこは大丈夫です。これを持ってきましたから」


 エマは肩に掛けていた鞄から一枚の地図を取り出す。

 地図にはメイラスとその周辺が描かれていた。

 そしてメイラスの中に一点、赤く光る部分と、エマたちが現在地に青く光る部分があった。


「この地図は魔道具の一種で、地図上でマーキングしたい場所にマーカーを置ける能力があるんです。これを使いながらダンジョンを潜り、赤い点と青い点……現在地が重なれば、そこが目的地です」


「なるほどね。とりあえずはそれを参考に進めばいいわけか」


 ダンジョンに踏み込むと、地図のマーキングが一層輝きを強める。

 エマたちが歩みを進めるたび、青い点はゆっくりと赤い点に近づいていた。


「エマちゃんはそれを見ながら道を教えて」


「わかりました」


「私は……とりあえず、道を阻むコイツらを倒していくかな」


 メリッサはダンジョンの壁から出現したイラスティック・スネークを見ると、腰から剣を抜き、構える。

 エマが地図を見つつ進む方向を指示し、メリッサが現れた魔物の露払いを行う。

 即席で役割分担した割には中々いい連携で、どんどんとダンジョンの深層まで潜っていった。


「えっと……今度はこっちですかね」


「いつもとは違う道を通るとなると、ちょっと緊張するよねー」


 地図を度々確認しながら、普段探索を行うルートとはかなり違う道を進んだエマたちは、やがて広い空間へと辿り着いた。

 地図上では、赤い点と青い点がほぼ重なるようにして光っている。


「ここみたいですね……ってうわっ!?」


 ほぼずっと地図を見ながら歩いていたエマは、顔を上げると目の前の光景に愕然とする。

 広い空間には所かまわず、巨大なムカデのような魔物が這いまわっていた。

 そしてその中央には……狼の体と、ムカデの体を無理矢理合成させられたようなキメラが佇んでいた。


「フォレスト・ウルフとこのムカデ型の魔物が合体したキメラってところか。この空間のボスモンスターみたいだね」


「……メリッサさん、やれそうですか?」


「流れてる魔力の雰囲気からして魔級ではないだろうけど、上級の中でも上位っぽいね。少し手こずるかもしれないけど、まぁ何とかやってみるよ」


「じゃあ私は周囲のムカデを何とかするので、メリッサさんはキメラをお願いします!」


「了解!」


 地図をしまったエマとメリッサは駆けだす。

 向かってくるエマたちを目にしたムカデたちは、モゾモゾとその場から一斉にエマたちへ突進しようとするが、その直前にエマは鞄からいくつか、小型の爆弾を取り出した。


 爆弾に付属している小さなスイッチをひねると、爆弾が着火される。


「とりあえず、これでも喰らえっ!」


 ムカデたちに向かってエマは爆弾を投げた。

 ムカデたちは避けようとするものの、地面に落ちた瞬間爆弾は爆ぜる。

 強烈な爆風と熱で、ムカデたちの半分近くが瞬時に一掃された。

 走りながらメリッサは驚いたようにエマを見た。


「一体いつの間にあんなもの持ってきてたの!?」


「地図の魔道具買うついでに、色々集めてきたんです! ダンジョン内では力不足なので」


 半分ほどに減ったムカデは、パニックを起こしたように空間の中を縦横無尽に駆け回る。

 それを狙いながら、エマは次々と爆弾を投げていった。


 そしてその間に、メリッサはキメラへと攻撃を仕掛ける。

 キメラは狼の頭を低くもたげると、ムカデの体を尻尾のように振り回してメリッサを薙ぎ払おうとする。

 しかし、それをメリッサは剣で斬り払った。


「ギャウッ!?」


 巨大ムカデの尻尾の先が斬り落とされたことで、キメラは悲鳴を上げる。

 だが、すぐに体勢を立て直すと、今度は狼の口から火球を放った。


「そういう攻撃も……できるのかっ!」


 メリッサは空中で体を捻ってそれを避けると、着地して剣を構え直す。


加速斬(アクセル・ブレイク)!!」


 キメラが反応する暇もなく、メリッサはキメラの体を隅々まで斬り裂いた。


「ギッ……!」


 断末魔を上げる暇もなく、キメラはその場に倒れる。

 上級上位とはいうものの、どうやらメリッサの敵ではないようだった。


 斬り終わったメリッサが周囲を見ると、エマが残りのムカデを閃光撃ライトニング・シュートで片づけているところだった。

 しかし、やがてそれも終わる。


「意外と簡単だったね。もっと手こずるものかと」


「ここら辺は、それなりの強さの魔物が絶えず湧き出てくるタイプなんでしょうね。騒音を放つタイプの魔物もいなかったですし、世代交代が起きた後みたいですね」


「ダンジョンってホント色々あるねー……」


 そんなことを話した後、メリッサは鞄からお札を取り出す。


「このお札は、東方の国の人間がスキルで作った特殊な魔道具らしくて、攻略前のダンジョンにおける魔物の出現を抑制してくれるそうです。いずれこのダンジョンも完全攻略されると思いますが、それまではこれを貼って騒音対策しておきましょう」


 数枚メリッサに渡すと、エマはそのお札を壁に貼り付けていった。

 それを見たメリッサも、無言でエマとは反対側の壁に貼り付けていく。

 やがて、全て貼り終えるとお札はぼうっと光り始め、効果を発揮し始めた。


「ふぅ、これでとりあえずは大丈夫だと思います。ギルドに戻りましょうか」


「そだね」


 大量に転がっている魔石をある程度拾うと、エマとメリッサは来た道を戻り始めた。


 ― ― ― ― ―


 「お、エマにメリッサ……もしかして俺抜きで騒音対策に行ってくれたのか。ごめんな、行けなくて」


 エマたちがギルドへ帰って来たのを見ると、ルークはゲッソリとした表情で迎え入れた。

 ルークとシャノンは併設された酒場のテーブルに座っている。

 シャノンがキラキラした目でフルーツジュースを飲んでいる反対側で、ルークは椅子にもたれかかって休んでいた。


 フォレスト・ウルフたちを倒し終えた後、シャノンはまたしても自由気ままに森の中をほっつき回り、それをルークはなんとか引っ張ってギルドまで帰ってきていた。

 かなり疲弊した状態でギルド長・ゾウスへ報告を済ませ、今しがたテーブルに着いたところである。


 魔級魔物を倒した時よりも疲弊しているルークを見て、エマとメリッサは呆気にとられるが、やがて可笑しそうに笑い始めた。


「ふふ、ど、どれだけ引きずり回されたんですか」


「そりゃもうずっと。この子、元気過ぎるよ。実力は申し分ないのに、変に注意力散漫だし。こんなタイプを見たのは初めてだ」


「不思議ちゃんって感じみたいだねー、側から見ると」


「不思議ちゃんなんて生易しいもんじゃない……バイタリティ持ち合わせた怪物だよ……」


 疲れ切ったルークはガクッと首をもたげるが、そんなルークにエマは軽く騒音退治の報告を行った。


「そうか……。とりあえず騒音の元は絶ったんだな。じゃあ、あの家買うか」


「ですね。かなり広いですし、何ならメリッサさんも一緒に住んでもらおうかと思ってるんですけど」


「パーティ仲間だしな。いいんじゃないか?」


「え、いいの!? やったね、宿代が浮く」


 ガッツポーズをするメリッサの隣で、フルーツジュースを飲み終わったシャノンがポツリと呟く。


「……私も、そこに住みたい」


「え。でも、シャノンちゃんはまだ、私たちのパーティに入ってるわけじゃないですし……私たちと一緒に住んでたら、他のパーティに入る時に差し障りがないですかね?」


「私、ここ最近お金がなくてずっと野宿。さっき行った森に住んでる」


「へっ!?」


 突然のシャノンの申告にルークたちは度肝を抜かれる。

 しかし、通りで自分の庭みたいに勝手気ままに動き回るはずだ、とルークは納得がいった。


「もしかして冒険者になったってのもお金がなかったからなのか?」


「うん。私、記憶喪失だからあの森にいた以前の記憶がかなり曖昧。森で木の実を食べたり川の水を飲んだりして生活していた」


「な、なんかどんどん衝撃の情報が出てくるな……」


 驚きを通り越して若干引いてしまったルークだったが、しかしそういうことなら、とシャノンに手を差し出す。


「じゃあ、シャノンも一緒に住もう。仲間としてパーティに入ってくれることが条件だけど、入ってくれるなら食費も面倒見れるからさ」


「……! ありがとう、ルーク……!」


 今まで無表情だったシャノンの口角が、ほんの少し上がるのを見て、ルークは少し嬉しくなったのだった。

 かくして、騒音退治とシャノンとの出会いを経て、ルークたちは四人で一軒家に住むことになった。

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