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7 闇に潜む誘惑

北風が肌を刺すような寒さの中、涼音と情報屋の男は険しい山道を進んでいた。

足元には薄く雪が積もり、凍てついた大地が歩みを鈍らせる。

その向こうには、険しい崖と青白い霧が立ち込める山岳地帯が広がっていた。


「ここがローズエバーグリーンの咲く場所か。」

男がそう呟きながら、地図を広げる。


涼音は空気を嗅ぎ取りながら答えた。

「ええ。確かに植物の微かな香りがする。この先ね。」

彼女は先を急ぐように足を進めた。


やがて二人は目指していた場所に辿り着いた。

そこは岩肌に囲まれた小さな谷で、青白い光を放つ植物が点在していた。

その中心に、一際美しく輝く花が咲いていた。


「これがローズエバーグリーン……。」

涼音はそっと跪き、花を摘み取ろうと手を伸ばした。

しかし、その瞬間、周囲の空気が急に張り詰めた。


「気をつけろ。何か来る。」

情報屋が短剣を抜き、涼音の前に立つ。


谷の奥から現れたのは、巨大な蛇のような魔物だった。

その体は黒く光り、目は赤く輝いている。

魔物は低く唸りを上げながら、二人を見据えていた。


「ここを縄張りにしているのか。」

男は涼音に向かって叫んだ。

「俺が引きつける。お前は花を採るんだ!」


涼音は迷わず頷き、急いでローズエバーグリーンに手を伸ばした。

だがその香りが漂った瞬間、魔物の目が一瞬ぎらついた。


「この香りに反応している……。」

涼音は心の中で直感的に感じた。

この植物には何か特別な力がある。


情報屋の男が魔物を引きつけている間、涼音は慎重に花を摘み、小瓶に収めた。

その瞬間、魔物が咆哮を上げ、情報屋を弾き飛ばした。


「くそっ、体力が尽きそうだ!」

男が叫ぶ中、涼音は手元の試作品の香水を取り出し、魔物に向かって振りかけた。


香りが魔物の鼻先を包み込むと、巨大な体が一瞬静止した。

その隙に、男が短剣を振りかざし、魔物の足元を狙って突き刺した。


魔物が苦しむような唸り声を上げ、動きを止める。

その瞬間を逃さず、二人は谷を飛び出した。


帰路に着いた涼音は、小瓶を見つめながら呟いた。

「この花の香りには、ただの植物以上の何かがある。」


情報屋の男も息を整えながら答える。

「確かにそうだな。あの魔物を引き寄せるくらいだ。それに、この香りには……不思議な力を感じる。」


彼女は小さく頷いた。

「これを使えば、完成に一歩近づけるかもしれない。でも……逆に何を引き寄せることになるのかもわからない。」


男は疲れた顔で笑いながら肩をすくめる。

「危険を冒してまで手に入れたんだ。きっと意味があるさ。」


調香室に戻った涼音は、ローズエバーグリーンを使った新たな調合を始めた。

その香りは、まるで心の奥底に直接触れるような感覚をもたらす。


だが同時に、その香りが彼女自身の吸血衝動をも刺激していることに気づく。

「この香りには力がありすぎる……。制御するには何かが足りない。」


涼音は再び香料リストに目を向けた。

「次に必要なのは、魂を癒す香り……。エクリプスアッシュ。」


その素材を求める旅が、さらなる危険を伴うことを彼女は知っていた。



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