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11 香りが満ちる調香室
涼音は静かに言った。
「この香りは、闇の中に光を灯すもの。支配のためではなく、救いのためにある。」
吸血鬼たちはその場に立ち尽くし、やがて一人ずつその場を去っていった。
最後に残ったのは情報屋の男だった。
彼は微笑みながら涼音に近づき、軽く肩をすくめた。
「君は特別な調香師だな。まさか香り一つで吸血鬼を黙らせるとは。」
涼音は小さく笑い、完成した香水瓶を手に取った。
「これは、私自身の救いでもある。」
涼音は調香室の机に向かい、新たな香りのレシピを書き始めた。
吸血鬼としてではなく、人間らしい心で新しい未来を紡ぐために。
香りが満ちる調香室の中で、彼女の新たな旅が静かに始まった。




