表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/25

少年は野生王子

久しぶりの投稿です。よろしくお願いします。

 燦々とした陽光に澄み渡る青空。

 飛空艇ドッペンハイネ号は純白の綿雲を横目に、犬狗族の隠れ住まうと言い伝えられる、大陸の遥か南方クスノバ山地を目指し飛行を開始した。

 操縦士ラッセルを除く一行は、艇内設置の眺望抜群のカフェテラスで旅路の幸運を誓い合うやら、待ち構える敵へ闘志を燃やすやら、僻地の特産物への興味関心等を快活に喋り散らしていた。

「神魂玉は完全だもんな。作り主でも解放できないかも知れないなあ。三大覇者は永久にあの中だね」フェルナンが果物ジュースのグラスを片手に無責任な事を言う。

「出してあげないと、あの我儘おたんこナスに世界は乗っ取られてしまうわよ」ケイトが乾燥ケーキを食べながら嗜める。

「ケイトちゃんに賛成だね。ラングルは覇者たちが治めてナンボというもの。異世界のうつけ者に人類の命運を明け渡すわけにはいかん」ユンケルが口髭に付いた食べかすを拭きながら言う。

 バルトスもビフテキを味わいながら、同様の感懐を抱いていた。

 三大神獣不在のラングルは今やアルヌスの手中にあるも同然だった。

 極悪非道の悪魔と言うわけではないが、危険極まりないお尋ね者の暴れ馬であることには間違いない。

 是が非でも神獣たちにアルヌスを誅してもらう必要がある。

 しかし隊長たるラッセルは一人、少し異なった心境で飛空艇を操舵していた。

 アルヌスは確かに鼻持ちならない暴漢だが、どこか憎めない部分のある偉丈夫男だ。

 もっと人間の事を理解すれば、平和の導き手になる可能性はある。 

 奴をけなし畏怖するのではなく、むしろおだて受け容れて仲間に取り込むのが最善ではないか。

 異星から来た為政者の壮大な智慧とカリスマ性でこの世界を建て直すのも面白い。

 そんな各人の思惑を尻目に、ドッペンハイネは南に向かって加速して行った。


 折り重なる山岳の麓に敷かれたゴサック湿原に着陸した一行は、犬狗族の里を探すべくその湿地帯に足を踏み入れた。

 そこは隘路の入り組んだ薄ら寒い草原だった。「いかにも、出そうだなあ」 

「最強の護衛が二人いるのよ。どんなモンスターが現れたって怖くないわ」

 そのユンケルとバルトスは、いち早く敵の気配に勘づいていた。

「いつまで盗み見ているつもりだ?出てこい」ユンケルが例の装飾麗しい杖を構えた。

 バルトスも息を吐いて、悠揚に剣を鞘から外した。

 「人間は害虫。いじめてやるべし」敵一体が機械的な口振りで、草陰から声を放った。

「いじめるだって!なにする気なんだ?」

「かなりの人間不信みたいね」

 ラッセルが真摯な語調で交渉を持ちかける。

「害は与えない。ただ通行したいだけでな。穏やかにいこうではないか」

「嫌だ。それなら、荷物と服、全部置いてけ」

「その要望には応えられんな。お前たちには軽いお仕置きが必要なようだ」ユンケルは杖に念力を込め、さざめき立つ雷光を現出した。

 周囲の叢林から、どよめきの声が響く。

「なぜ人間がクスノバの地にやって来る。山狩か?」

「違う。覇者、詰まりそなたらの主を助けるためだ」ラッセルは掻い摘んで経緯を伝えた。

「神獣様が封印に?そんな事あるもんか」敵が意地になって否定する。

「本当なんだよ。早く解かないと人間も魔物もめちゃくちゃになるんだ」

「犬狗っていう部族はあそこの山に住んでるんでしょ?だから通らせて頂戴」

 すると、草木を揉み倒して小さなモンスターがぞろぞろと大量に現れた。数は百ほどにものぼるようだ。

「ハッハッハ。ゴブリンのテリトリーだったか」ユンケルがおもちゃの拳銃を見るように拍子抜けして一笑する。

「教授、相手は子供モンスターです。ここは強く脅してもいいんじゃないですか?」これは勝ったとばかり、威圧的な表情を敵に見せつつ、フェルナンが耳打ちする。

「ゴブリン殿方。お代は払う。どうか平和裏に頼む」ラッセルが貨幣袋を出して言う。

「金だけじゃ嫌だ。お前たち人間を捕まえて売る。そしたら金持ちになれる」

「おいおい君たち。立場が分かってないな。この魔法使いと暗黒剣士は強いのなんの。勝ち目はないよ」 

「フェルナン。この人たちオツムは駄目そうだから、怪我でもしなきゃ分からないのよ」

「賢明なケイトちゃん。いいだろう。一瞬で終わらせようじゃない」ユンケルが杖を翳す。

 とその時。一人の少年が木陰から躍り出た。

「待って。いじめないで。ゴブリンは悪くない。悪いのは人間。おじさんたちがいけないんだぜ」

 一同は少年の純粋な眼差しと物言いに待ったをかけられてしまった。


「おいら、ヌノス。この山麓でゴブリンと暮らしてんだ」

 一行はゴブリンの村に立ち寄り、食事を饗された。ヌノスの説得でゴブリン一団の怒りは何とか収まった。

「大変ね。お父さんもお母さんもいないなんて」

「殺したのは人間だよ。お姉さんたちが殺したんだ」ヌノスは恨みの念をぶつけて言う。

「気持ちは分かるよ。でも人間は皆悪い奴ばかりじゃないんだ」

「お兄さんも一緒だ。動物を自然をモンスターを殺し続けるのが人間の趣味なんだ」

 この薄幸な少年は人間という存在に対し完全に心を閉ざしてしまっていた。

 袖振りも縁という。ラッセルは少年の過去に迫り、その傷を少しでも癒そうと、優しく朗らかに話しかけた。

「ヌノス君。つらい思いをしたね。よかったら、ご両親が亡くなった理由を聞かせてはもらえないかな」

 戸惑いの面差しを見せながらも、ラッセルの温かみに促されたヌノスは、やがて訥々と語り始めた。

 あれはまだ自分が五歳の誕生日を迎える前のことだった。

 ヌノスの両親は、クスノバの西にあるサルディ王国のゴブリン討伐隊の一員としてこの地に派遣された。

 目的は各地の村々の田畑から盗みを働くゴブリンの集団を追い払うためだった。

 しかし両親はゴブリンに内心同情していた。彼らとて生きるための死活手段として窃盗を犯している。追い払うと言っても、その先定住場所を探し求めるのは大変だろう。

 そこで両親は、彼らに人間の知識と技術を伝道しようと考えた。

 討伐隊はゴブリン一掃を試みようとしたが、ヌノスの両親は隊長に作戦中止を直訴し、和解案を持ちかけた。

 しかし勤王派の野心家だった隊長は、二人を国家の反逆児として捕縛してしまう。

 その後、両親は罪人となり牢に収容された。ろくな食事も与えられず、二人は無念の牢獄死を遂げたのだった。

 それから数年後、物心ついたヌノスは両親の意志を継ぐべくゴブリンの棲家へ行き、彼らを懐柔すると、その仲間となり一族となった。

 人間の文明文化を彼らに教え育み、一人前の生活様式を植え付けた。

 今やヌノスはゴブリンの同胞であり、郎党を率いるリーダーにまでなっている。

 村は規模こそ小さいが、家屋は頑健な資材で造られ、都会の集落と代り映えのしない立派な佇まいだ。ヌノスの啓蒙のおかげで、殆どのゴブリンは読み書き計算ができるようだ。生活も決して低文明なものではなく、各自料理の腕前は秀逸らしく、また高度な農耕や牧畜も手掛けていた。

「ゴブリンは何も悪くない。人間が傲慢で卑怯なんだ」ヌノスは憤りを噛み締めて言い捨てる。

「そうだったのか。実によく分かった。そなたの信念、感じ入るぞ」ラッセルが微笑みかける。

「もう僕は人間には戻らない。一生人間と戦うんだ」

「大した決意だね。まさに、もののけ王子だ」フェルナンがその勇断を讃える。

「でもね、ヌノス君。人間を憎むのは止めて。愚かじゃない人も大勢いるわ」ケイトがじっと少年の双眸を覗く。

「少年よ。恨みに報いるには愛をもってしなければならんのだ」ユンケルが真理を諭していう。

「愛?そんなの嘘だ!人間なんて愛せないよ!」

「いずれ貴方は人間界に帰ると思うわよ。このままモンスターと同化して暮らすのは無理。そのうちに人間が恋しくなるに決まってるわ」

「恋しくなんかならないよ!僕はもう人間じゃない。誰が何と言おうが、僕は悲しいモンスターだよ!」

「そういうのを憐憫の情と言うのよ。自分を悲しい存在だなんて思ってたら、ずっと不幸に嵌ったままよ」

「じゃあどうするんだよ!」

「不幸を人間のせいにするのはよしなさい」

「ゴブリンをいじめてるのは人間だ。僕はゴブリンに頼って生きるしかないんだ」

「モンスターに頼るのも駄目。ゴブリンに甘えてるだけじゃ何の解決にもならないわ。あなたの抱える不幸を解決する道は一択。人間として自立して、もう一度人間を信じること」

 辛辣なケイトの言葉の応酬にヌノスは押し黙る。

「ヌノス君よ。幼いそなたには、きつい説教だろうな。少しずつでいい。人間と分かり合う気持ちを大切にしまって置いてくれるとありがたいな」ラッセルが柔和な笑顔を浮かべる。

 ヌノスは俯き加減に目を逸らし、逡巡を続けていた。

「まあいっか。人間はいざ知らず、僕たちはゴブリンさんと打ち解け会えたし。明日に備えて、今夜は宿を借りましょう」フェルナンが腕を伸ばして大きく呼吸する。


 翌朝、一行は山地へ踏み入るべく寝屋で支度を整えていた。

 すると別れの挨拶か、ヌノスがやって来た。

「もう行っちゃうの?寂しいな」

「わしもだよ。だがこの世界の危機を乗り越えるために、我々は急がねばならんのだ」ラッセルが少年の肩を叩く。

「そうなんだ。頑張ってね」

「ゴブリンと遊ぶのもいいけど、そのうちに人間に復帰した方がいいよ」フェルナンが小さな頭を撫でてやる。

「あなた、勇気があって賢いから、人間とモンスターの親善大使になるといいわ」ケイトが上品な笑い声を上げる。

「幼き日々の苦難は必ずや将来の宝になる。このユンケル伯のように偉大な大人になるんだぞ」ユンケルも夜郎自大に高々と笑う。

 バルトスも仮面の内から温かい眼差しを送って、ヌノスと握手する。

「僕、やっぱり国に帰ってみる。会いたい人たちもいるしさ。人間にはこんなにいい人たちもいるって分かったし。勿論ゴブリンとはこれからも一緒だけどね」

 孤児の少年はどうやら改心したらしかった。深い心傷は決して消えないが、痛みは本人を必ずや磨き清めてくれるはずだ。

 一行はゴブリンの民族食だという蜂蜜胡瓜の缶詰を手土産に村を発つことにした。

 ところがその時。ゴブリンたちが慌ただしくドタバタと駆け集まって来たのだった。

 何事かと問い詰めると、山腹にある村の聖堂に魔物が現れ占領されてしまったとのことだった。

「平気平気。無敵の二人がいるから。ユンケルさん、バルトスさん。ここは久しぶりにひと暴れしちゃってよ」フェルナンが囃し立てる。

「いいだろう。通行料と宿賃代わりだ」ユンケルが勇んで請け合う。

 ヌノスたちも同行して共闘すると言ったが、正直足手まといだから村で待つよう説諭した。

「何だよ。僕たちだって戦えるのに。付いて行けば力になれるよ。あそこはゴブリンの神バスラ様を祭ってある大事な場所なんだ」

「いいから大人しくしておれ。この大魔法使いに助っ人は不要だ」

「いいな、ヌノス君。すぐに戻る」ラッセルも笑顔で言い聞かせる。

 幾時か山を登ると、一行は聖堂らしき建物を眼中に捉えた。

「中から強い霊気を感じるな」ユンケルを先駆けに聖堂へと入って行くと、正面の祭壇に途轍もない巨大さの大蛇が巻き付いていた。

「わあっ!デカい!」おっかなびっくりのフェルナンがユンケルの背中に隠れる。

「こんな所で何をしようとしてるのかしら」ケイトの呟きに、大蛇が舌をそそり出して答えた。

「バスラ様は俺たちの神だ。ここはゴブリンが拝み立てる場所ではない。今日から聖堂は俺たちのものだ」

「なるほどな。お主たちにも信仰の対象が必要なのだな。であれば、皆で聖堂を共有すればよかろう」ラッセルが冷静な物言いで提案する。

「バスラ様は俺たち蛇族の生みの親。他の奴らに崇める権利はない。ましてやゴブリンなど論外だ」

「傲慢無知な乱暴者め。神を汚すのは貴様自身だ」ユンケルが杖に火炎を発現させる。

「邪魔な人間ども。まとめて飲み込んでやる」

 大蛇が火気をもろともせず、大口を開けてユンケルに襲い掛かかった。

 倍増した炎の渦が大蛇の頭部を巻き込み覆う。

 しかし敵は黒い気体を吐き出し、吹き消してしまう。

 それならばと、ユンケルは炎を分割させて、敵の全身に放射し浴びせる。

 それでも大蛇は怯むことなく、首をユンケルに差し向けると、強引にその身体を巻き掴み縛り上げた。

「ヤバい、ユンケルさん!」

「最強魔術師にして最強エロオヤジ。蛇なんかにやられるたまじゃないわ」

 大蛇がユンケルを窒息させんばかりにグイグイと巻き上げる。長い舌が纏うローブに届かんとしている。

 しかし大魔導士は苦悶の仕草を一切見せない。

 よく見ると、薄いオーラが卵の膜のように身体をガードしていた。

「何ともタフな皮膚をしているな。通り一遍の魔力では通用しないか。だがこれからがユンケル様の本領発揮よ」そう言うと、ユンケルは超特大の爆炎を大蛇の顔面に撃ち放った。

 さすがに敵はユンケルを離すと、痛苦に巨体をうねらせて聖殿中をのたうち回った。

 すると、入り口から粗末な竹槍を携えた数人の何者かが叫んだ。

「お頭様!逃げて下さい!」 

 大蛇は悶えながら入口から敗走して行く。

「バスラ様は俺たちのもんだ!」何者かは入口を閉じた。

 立ち去ったかと思われた時。聖堂の通風口から白煙がモクモクと流入してくるのが見えた。

 フェルナンがハッとして入口の石板を開けようとしたが、全く動かない。

「しまった!閉じ込められちゃったよ!」

 これにはさしものユンケル、バルトスも動揺を見せる。

「焚き火の煙で聖殿もろとも燻るつもりだな」ユンケルが口角を歪める。

「この建材は重厚無比。壊すことはできまい」ラッセルも焦慮を露わにする。

「嫌だよー!苦しみながら死ぬなんて!」

「見張りを立てるべきだったわね」

 二人は憔悴して座り込む。

 煤煙はどんどん侵入し、堂内は見る間に灰白に染められていく。

 このまま世界救済の旅は終わりを迎えるのか。 絶望感が白煙とともに祭殿を霞ませる。

 その時。不意に石板がゴトリと開いた。

「大丈夫かい!早く外に!」踊り入って来たのはヌノスだった。

「ヌノス!」フェルナンが半泣きで飛びつく。

「よく来たわね!」

「だから言ったろ。余所者には慣れない土地は危ないんだよ」少年は自慢げに喝破する。

「この坊主。勇気だけはオメガ級だな」ユンケルが冗談めかして讃嘆する。

「お前たちのバスラ神への敬虔さは本物のようだな」沈静なバルトスも賛辞を述べて興奮する。

「ヌノス君。よくぞ来てくれたな。感謝するぞ」ラッセルがその小さな手に自身の手を重ねる。ヌノスは初めて明瞭な笑い顔になった。

 聖殿を出ると、一同を閉じ込めた連中がゴブリンによってお縄になっていた。風貌は皆蛇面で、どうやら前言の蛇族の者たちらしい。

 大蛇は表皮に火傷を負って、怖気づいたようにとぐろを巻いている。

「祭壇を燃やすなんて罰当たりじゃないか!」ヌノスが痛罵する。

「バスラ様の加護がなければ、俺たちは生きる支えを失う。ここは蛇族の聖地なんだ」

「ゴブリンたちだっておんなじだ!バスラはクスノバの土地神様だ。お前たちだけのもんじゃない!」

「すまない。悪気はなかったんだけどよ。あんたらがバスラ様を独り占めしてると思ってたんだ」

 大蛇は申し訳無さそうに、舌を出して自分の体皮を舐める。

「そうか。お主たちにも人知れぬ苦労があるのだろう」ラッセルが慰めるように言い遣る。

「俺たち、人間に住まいも食べ物も取られちまってよ。行くとこがねえんだ。俺っちは冬眠できるからいいが、他にもいる沢山の人型の部下たちは寒い冬を越さなきゃならねえ。けども、いくら探せど適当な土地が見つからんのよ。だから最後は神頼みするしかないと思ってこの聖堂に来たんだ」

「また人間か。僕たちの責任だね」フェルナンが改めて人間の罪科に思いを馳せる。

「モンスターさんたちは皆追い詰められているのね」ケイトは哀しそうに服に付いた煤を払う。

「言い訳にしか聞こえんがな。なぜ、素直にゴブリンどもに相談を持ち掛けなかったんだ?聖堂を共同利用させてくれと嘆願すれば事足りるではないか?」ユンケルが手厳しい口調で訊問する。

「そうするのがよかったんだがな。ゴブリンとは、前にも喧嘩したことがあったからよ。プライドとか恥ずかしさとかもあって、言い出せなかったんだ」

 大蛇はすっかり邪気や殺気を喪い、反省の弁を貫いた。

「どうだなゴブリンたちよ。蛇族をバスラ神の同胞として歓待してはくれんか?」ラッセルが明朗な面容で、ゴブリンたちに視線を走らせる。

「あんたたち蛇の可哀想な過去は分かった。これからは自由に礼拝してもいいよ」やや訥弁ではあるが、ヌノスは彼らを信仰の朋友として認めてやったのだった。

 そしてゴブリンと蛇族は今後力を合わせて、焼損した聖堂を新築する旨を約束した。

 戦争と環境破壊がもたらしたラングルの窮地にあって、人間だけではなく魔物までもが心を荒廃させ、信仰に飢えている。

 世界滅亡は来るところまで来ている。

 一同は今一度、心を一つにして旅の成就を祈るばかりだった。

「どうだった?僕たちが助けに行かなかったら、おじさんたち燃えカスになってたよ。ゴブリンだってやる時はやるんだ」

「まさにそうだな。お前さん方には一生涯頭が上がらん」ラッセルがすっかり観念したような手振りで謝辞を述べる。

「弱くたって、一生懸命努力すればエリートを上回ることがあるんだよね」フェルナンがゴブリンに自分を投影する。

「弱いなんて失礼だわ。皆勇ましい一流の戦士じゃない」ケイトが温かくフォローする。

「人数が足りない時はまた呼んでよ。小回りの効く作業なら、得意だからさ」ヌノスが自負心を漲らせる。

「うむ。そうさせてもらおう」ラッセルが少年大将と愛しい抱擁を交わした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ