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メリーさん

 実はメリーさん知りませんでした。

 

 うわさとというか、巷では知らない人はいない、数々の都市伝説あるあるメリーさん。

 私たちは悪ノリでメリーさんの真似事をしてみた。

 要は鬼ごっこの広域版みたいなもので、メリーさん役は今いる自分の場所を伝え、対象の相手は場所のヒントを与えるといいう、いわゆるJKの暇つぶしってヤツ。

 今回は私とミカが逃げ役で、かなこがメリーさんでやってみた。


「せーの」

 の合図で、私たちは逃げ回る。

 ほどなくして、

「私・・・かな・・・あ、私、メリーさんだった。今、学校の前にいるよ」

 スマホに電話がかかった。

「えーっと、今、スタバにいるよ」

 電話を切った後、私とミカは苺フラペチーノの写メをラインで送った。

 

5分後。

「・・・私、メリーさん。スタバに着いたよ」

「今?スタバをでて、図書館にいる」

「わかった」

 10分後。

「私、メリーさん、図書館来たよ」

「公園にいる」

「わかった」

 20分後。

「私、メリーさんよ。公園のどこ?」

「ふふふ、電車に乗っちゃった」

「ちょっと!奏、ミカ、なにやってんのよ!」

「へへへ、鬼さんこちら~」

「ん、もうっ!」


 私たちは電車を降り夕暮れの町を駆け回った。

 鳴りやまない電話。

 先へ先へと進む。

 ちょっと度が過ぎたかなと思った頃合いでミカが、

「そろそろやめない」

 と、言いだした。

 スマホを見ると時刻は18時を回っている。

「そうね」

 私はかなこに電話をする。


「かなこ」

「私もう疲れたよ~」

 開口一番、疲労困憊の声、

「ごめん、ごめん。もうやめるね。うちから近い駅で待ち合わせ」

「わかった」

「じゃあね、メリーさん」

「は・い・」

 私は電話を切る前のかなこの声に違和感をおぼえたが、すぐに忘れてしまった。


 駅につくと、人影はまばらだった。

 私とミカは駅の入り口の長椅子に腰かけ、かなこを待った。

「おーい」

 彼女が手を振り駆けて来る。

「おーい」

 私は手を振り返す。

「ちょっと」

 ミカが私の手を握りしめる。

「どうしたの」

「あれ」

 ・・・・・・。

 ・・・・・・。

「どうしたの2人とも?」

「かなこ後ろの子だれ?」

「へ?」

「ア・タ・シ・・・メリー・・・ヤット・・・アエタ」



 ○○○さんのひつじかと・・・てへっ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 都市伝説の作法に則って「私、メリーさん」と電話口で名乗る行為が、どうやら本物のメリーさんを呼び寄せる結果になってしまったようですね。 本物のメリーさんに後ろを取られてしまった彼女達の今後が…
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