甘い香りに誘われて
前回がえらく長かった分、今回は短めです。
中繋ぎの回ですが、どうぞお楽しみを。
「おかえり」
グレアスのその言葉で迎えられたカナリアたちは、とりあえず椅子に座り、今の幸せを喜んだ。
ノインはいなかった。カナリアたちをここに送り届けると、また行ってしまった。人買い達の屋敷に役人たちが来たので、その相手をすることとなったからだ。また、コレットもいなかった。ここへ来る途中に皆で頭を下げて家に帰したからだ。
「あー、疲れたわ。もう、駄目―」
パトリシアが一番最初に机に伏した。続いて、バズも机に伏す。
本当に疲れたのだ。
「ところで、カナ―――いやカナリア、どうしてアイツと知り合いだったか、教えてくれねぇか?」
「アイツ」とは、ノインのことだろう。
元よりカナリアも話すつもりだったので、こくりと頷き、バズとパトリシアが突っ伏していた机に寄って行った。
「マスターも来て下さい。貴方にも話したい」
そう言うと、三人のために紅茶を淹れてくれていたグレアスは柔らかく頷いて、その紅茶を持って席についた。
紅茶の甘い香りと温かい湯気が、カナリアを過去の記憶へと誘うのだった―――…