1/24
プロローグ
貴方がくれたものは、居場所。
残酷な名前で優しい束縛をくれた。
全てをなくした私には、それすら嬉しくて。
ずっとこうしていたかった。
声も出さず、閉ざされたままの世界で貴方だけを見つめて、貴方だけの声を聞いて。
貴方の出してくれるご飯が大好きだった。
貴方の少し恥ずかしげに笑う顔が大好きだった。
淡々とした足音も、少し怖い目つきも、時折気まぐれに弾き始めるチェロの音も、全て。
いつまでも変わらない世界を夢見ていた。
何を考えているのか分からない貴方は、いつ私を捨てるかわからなかったから、いつもそればかり考えていた。
ただ、一言たりとも発さない私に怒ったりしないか、呆れたりしないか不安で。
けれど、結局彼は一緒に居てくれた。
それが、どんな理由だったのかは知らない。
しかし、そんなことは関係ない。
ただ、嬉しかった。
けれど、時は来てしまった。
ここには居られない。
貴方の側に居続けることは、私には出来ない。
だから―――