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2話 カナヅチ人魚

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




。。。。ぱち!


「あれ?ここはどこだろう。。。」


目を覚ますと、平たい大きな岩で出来たベッドの上に寝ていた。

転生したとか喜んでたけど、まさか本当な訳あるまいと自分の腕をつねってみる。

。。。。。痛っ

やっぱり痛いってことはさ。。。。ね?

夢じゃないってことなんだよっっ!!!ね?

。。。。。これってやっぱり、今流行りの転生って奴なんだよ!!!

平凡な日本人の高校生、宮本美寧々だった私が

金色の人魚に転生するなんてやばくない!??!

しかも(鏡見てないから分かんないけど)双子のメリルがあれだけ美少年なら、私も絶対美少女。。。


ヒレとウェーブのかかった長い髪が、懐中電灯よりも眩く光っていて周りが見渡せる。。。。

ここは、部屋?洞窟?なのかな。。。?

周りはぴっちりと岩壁に囲まれていて、子どもの大きさなら平気だけど、大人ならちょっと狭そうな空間。

そして隣には双子のメリルと名乗っていた美少年が眠っている。

綺麗な顔立ちのせいで、眠っているというより本物の人形のようにも感じられる。

けれど小さな口からは寝息が聞こえてくるので、生きてるんだなぁと感心するほど。

うん、これ以上見てると、あまりの神々しさに鼻血出そう。

よいしょ。。。

起きあがろうとしたら

うまく立てなくて

そのままバランスを崩して砂の地面に倒れた。

ズサッ!


「ひゃあ!!!

なんで?起き上がれないよ。。。」


足元を見ると人間の足の代わりに魚のヒレ。

そっか、ヒレのままじゃ人間のように二足歩行で歩けるわけがないよね。

。。。よっこらしょ!

。。。。。。

。。。。。。

。。。。。。だめだ。

起き上がれない。。。。

必死にほふく前進していると、

寝ていたメリルが目を覚まして、私を見るなり驚いた。


「大丈夫!?コーデリア!」

「えっと、。。。メリル?

起こしちゃってごめん。」


メリルは私のところまでスイッと泳いできて、私を抱きかかえるとそのままベッドに寝かせてくれた。

羊のようにふわふわで無造作にカールされた金色の髪、金色の長いまつ毛に縁取られた金色の瞳、男の子だからか私とは違って少し尖った形の金色の鱗とヒレを持っている美少年のメリル。

そして私を、双子の妹のコーデリアと呼んでいる。。。


「やっぱりおかしいよ、コーデリア。

昨日から君は変だ。

僕の名前も、呼吸の仕方も、泳ぎ方までも忘れていたし。。。」


そう言って私の金色のウェーブ髪をかき分けてわしゃわしゃと頭を撫でるメリル。

昨日。。。?

いつの間にか1日経ってたのか。


「ヒレも上手に動かせてなくて、

岩になったかのように沈んでたよ。」


そう、思い出した。

昨日、メリルの腕から離れた途端

1人で泳げなくて深海へ沈みかけたんだ。

それをメリルが慌てて追いかけてきて、

助けてくれた。。。

。。。。。。。


「。。。。コーデリア、聞いてる?」

「。。。。。。メリル」

「ん?何?」

「泳ぎ方忘れちゃったみたい。教えて」

「。。。いいけど。」


私はメリルの肩を掴んで起き上がるのを支えてもらった。思えば人間の美寧々だった頃、李々斗にこうやって泳ぐ練習を教えていたっけ。

李々斗は私と正反対で運動得意じゃなかったからなぁ。

目の前にいるのはメリル。

神様のいたずらなのかな。

転生先でもまた双子なのに、メリルからは李々斗だと一切感じない。

李々斗は今どうしているだろう。

橋から落ちた時、李々斗と須賀ゆらくんは助かったのだろうか。



「そうそう、ヒレの向きと尾の動かし方で行きたい場所を変えられるから、うまく利用するんだ。

それじゃあ手を離してみるよ?」

「。。。うん!!!」


ある程度動かし方をメリルに教わった後、大きな返事を返してメリルの腕から離れた私。


「あれ?なんで?!ちょっ。。。。。」


一生懸命ヒレを動かしているのに、一歩も進まないままゆっくり地面まで落ちていく私。

人魚として、海の生き物として大事な”泳ぐ”という事が出来ないなんて!!!

うんうんと床にうつ伏せのまま考え事をしているとメリルが私をお姫様抱っこした。


「わぁ!!」

「大丈夫だよ、コーデリア。これから練習していこう。昨日までは泳げていたんだから。」

「そうだよね!ありがとう、メリル」


。。。って、あれ?

私、人魚なのに泳げないってやばくない。。。。??

。。。カナヅチ?

前世ではスポーツ全般大得意だったはずなのに。。。


「。。。。あの、メリル。。。」

「どうしたの?コーデリア」

「私、昨日から記憶喪失になってしまったのかも。。。。

自分のことも、この世界のことも、泳ぎ方のことも忘れちゃって。。。。

それで、色々と教えてほしいの。。。。」


とりあえずこの転生先のこととか色々知る必要があるよね!

幸い私にはメリルという良き双子もいるみたいだし、色々教えてもらいましょうー!



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



それから私はメリルに、この世界のことと私達人魚のことを教えてもらった。

無駄に長かったのでまとめました!


•まず私の名前はコーデリア•エナリオスで6歳。

 双子の兄はメリル•エナリオス。

•私とメリルが住んでいる海はこの世界で最も広いグラバース大国の海、グラバース海域であること。

•グラバース大国の皇帝は代々人間が受け継いでいて、現在陛下は病死してしまったので皇妃が代わりに国をおさめている。彼等の息子にあたる皇太子クラウス•ルイ•グラバースが8年後の成人と共に新しく皇帝陛下の座を引き継ぐらしい。

•グラバース大国は魔法を使う人間が力の格差上頂点であり、私たち人魚のような獣人は奴隷にされたり、血肉に価値があるため殺されたりする。

•なかでも金色の人魚は大変貴重で、体力、魔力、治癒力を上昇させる効果があり、尾鰭を手にした人間は「セイレーンの嘆き」という超高度な魔法を獲得できるらしく、街の土地をまるまるひとつ買えるほどの価値があること。

•最近増えてきた密猟により人魚の数が減少し、両親はその密輸船に連れて行かれて殺されてしまったこと。

•私達双子は人間を寄せ付ける金色の価値の高い人魚のため、日が沈む前に村の人魚達から必ずこの洞窟に閉じ込められること。


これを聞いて私、ピーンときたの!

グラバース大国、皇太子クラウス、金色の人魚の尾ひれにメリル。。。。

この世界は、私が日本人の宮本美寧々の時にプレイしていた「ギルティハート」略して”ギルハー”というタイトルの乙女ゲームの中なんじゃないかって!

その乙女ゲームには6人の攻略対象がいるんだけど、攻略対象の人気No.1が『クラウス•ルイ•グラバース』。

この世界のグラバース大国の第一皇子の名前と同じなの!

それはつまり!!!この世界にはリアルにテイト•グレイド様が存在している!!!


そしてメリルと、金色の人魚の尾ひれについてなんだけど。。。。。

乙女ゲームでイベントバトルっていうのがあって、優勝者への賞品として「金色のメリルの尾ひれ」というものがあるの!!

優勝商品巡って攻略対象達がバトルをするストーリーがあるわけなんだけど。。。

私、好きな攻略対象から貰ったこともあるし、ゲームやり直して自分でイベント参加して「セイレーンの嘆き」魔法を獲得して高感度アップした事もあるよ。

でもさ、ちゃんと切られてるのよ!しっぽが!!

おそらく皇太子クラウスの時系列的に、あと8年後くらいにイベントバトルが開催されるはず。

メリルの命が危ない。。。。

そう思うと私、背筋がゾワっとした。

メリルの身にどんなことが起こるのか、その乙女ゲームには何も詳細がなくて分からないけど。

私は。。。乙女ゲーのイベントバトルの優勝賞品にされてしまう、人魚の双子の妹として、どうやら転生したらしい。。。。

そうです私。。。。乙女ゲームのキャラクターに全く関係ないの!

コーデリア•エナリオスなんて名前の人魚は出番なんて一切ないはずなの!!!!

公式キャラクターブックにも載ってなかったし!

普通は悪役令嬢とかに転生するものじゃないの!?

なんなのさ!ひどいよ!神さま!!


でも。。。。。

この世界に転生してメリルと出会ってしまったからには、なんとしても美少年のメリルを失うのは絶対に避けたくない!?

普通に嫌だよ?しっぽ切られるなんて!!

乙女ゲーしてた時は、推しキャラのテイト•グレイド様から「金色のメリルの尾ひれ」を貰えた時は大興奮して宝物にしてたよ!!?

視野が変われば考えも変わるよね。。。


これからいつになるか分からないけど

8年後くらいに双子の兄メリルの尾ひれが

何らかの形で切り落とされてしまう。

私はそれを阻止してあげたいな。。。

そして、あわよくば人間界へ行って、

大好きだった私の推し!!!

攻略対象No.5のテイト•グレイド様に会いたい!!



⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎


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