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魔法少女がいく~TS魔法少女は運が悪いようです~  作者: ココア


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魔法少女と下見

 アンヘーレンの奴らが去ってから、午前中はまた門番の真似事をしていたが、不運体質の俺にしては珍しく何も起きない。


 今日にでも動きたかったが、アンヘーレンが組織である以上、ブルーの独断で決めることは出来ないのだろう。

 こんな時は珈琲でも飲みながら休みたいが、明日まで時間があるのならば、やらなければならないことがある。


「少し出掛けてきます。明日には戻ります」

「出掛けるって何処に?」

「拠点の下見ですよ」


 フランさんの「待て」と言う言葉を無視して空へと飛ぶ。

 

(結界を頼む)


『了解。魔力や赤外線とかの識別は誤魔化せるけど、目視はされるから注意してね』


 結界が張られたのを確認してから速度を上げる。


 宇宙。正確には衛星軌道上にあるアルカディアの拠点だが、おそらく魔物探知用に使っていた衛星を元にして作っているのだろう。

 そうでなければ一度文明が滅んでから僅か千年で人類が宇宙で生活できるとは思えない。


 魔物探知用の衛星に張られている結界は結構高性能な物であり、小さい隕石なら問題なく防ぐ事が出来る。

 おそらくだが、アルカディアの兵器を保存している拠点は、この魔物探知用の衛星を改修したものだと睨んでいる。


 上手く改修できれば、隠蔽程度問題なく出来るだろう。

 

 アクマの探知が普通に使えれば見つけるのは容易だろうが、今はそれが出来ないので探すのは正直困難を極める。

 流石の俺も、宇宙に放り出されれば死んでしまうからな。

 

 一応風の魔法を使えば少しの間活動出来るだろうが、だからって何かできるわけでもない。


 何も情報が無ければ困った事になっただろうが、ミトスで貰った情報により目星がついている。


(アルカディアの兵器があるだろう場所だが、全ての拠点から等しい距離辺りにあると思うが、どう思う?)


『可能性としては高いね。後は本拠点の近くとかもありえそうだね』


 いざとなれば手動で動かすためとか考えていれば可能性としてはあるが、その可能性は低いだろう。


 なにせ、仮に暴発でもすれば巻き添えを食う事になるだろうからな。


 それならばどの拠点からも同じ距離にしておけば、リスクは最小限になるし、もしも手動で動かす際に擦り付けも出来ない。


 地図には全ての拠点が記されているわけではないだろうが、これだけの数が分かれば…………。


 ザックリと計算した位置に到着し、水の魔法で望遠鏡を作る。


(アクマ)


『今確認するから待ってね……おそらく当たりだね。もう少し詳しく探るから少し待ってて』


 視界には宇宙空間が広がるだけだが、一点だけ歪んで見える場所があった。

 間違いなくそこが兵器のある拠点だろう。


 俺だけでは見逃していたかもしれないが、こんな時のアクマだ。

 

 情報や索敵については頼りになる。


 まあ、勘だけはあまり信用できないがな。


『おまたせ。内部に高濃度の化学物質を検出したよ。それと、銃口らしきものもあったから、あそこがアルカディアの兵器がある場所だね』


(最初から当たりを引けるとは運が良いな。マーキングを忘れないでくれよ)


『ちゃんと地図と照らし合わせて記録してあるよ。次はエデンの方だけど、当てはあるの?』


 アルカディアの方は、大まかな予想は付いていたがエデンの方はな……。

 

 地下にあるとは思うが、これと言って予想がつかない。

 拠点からは離れているとは思うが、魔法を用いた兵器だとすると、射程なんてあってないようなものだ。


 可能性とすればアルカディアの拠点の近くか、あるいは遠くか……射程はどうとでもなるだろうが、流石に地球の裏側から裏側に向けて撃つのは無理があるはずだ。


 そうなると、北半球のどこかとなるが、これだけでの情報で探すのは流石に無理がある。


(あまりないな。アクマはあるか?)


『多分だけど、軍事利用されていた施設を再利用してるんじゃないかと思うんだ』 

 

 なるほど。大型のミサイルなどを格納しておくなら、新しく作るよりは再利用した方が良いだろう。


 今の技術力がどれ程のものか分からないが、妖精が居た頃に比べれば確実に劣っているはずだ。


(その可能性はありそうだな。位置を教えてくれ)


『了解。元の世界のデータを参照して頭に流すよ。いくつかは潰れているとは思うけど、こればかりは実際に行って確認するしかないね』  

  

 該当しそうな場所は全部で15カ所か。距離的に全部回ったとしても問題なさそうだな。


(それじゃあドライブと行こうか。なるべく早く当たりを引けることを願ってな)


『それと見つからないように注意してね』


 改めて世界を眺めることとなったが、結構な量の魔物がうろついていたり、魔力汚染されて異世界のようになっている場所があったりした。


 S級やSS級は流石に見かけなかったが、これだけの魔物がうろついていれば、一般人にはたまったものではないだろう。


 個人的に倒してしまいたいが、隠密行動をしているのでそんな事をすれば見つかるリスクがある。


 これだけ様変わりした世界を見ると、復興できるのか不安になるが、それはこの世界の人次第だろう。


 駄目なら死ぬだけだからな。


 アクマの案内の元あちこち巡るが、中々当たりにたどり着く事が出来ず、とうとう最後の場所となった。


 日も暮れ始め、今向かっている場所がハズレだった場合、計画に支障が出る。

 まさかここまで運が悪いとは……折角アルカディアの拠点を直ぐに見つけられたのに、これでは他の事をする時間が無くなってしまう。


 一応兵器のある拠点さえ分かれば後は適当に魔法を撃つだけだが、下見や確認は仕事をする上でとても重要だ。


『ストップ! 結界の反応があったよ』


(――やっと当たりか。頼んだぞ)

 

 念のため近くの岩場へと降り、目立たないように身を屈める。

 最後の最後で当たりを引けて良かったが、まだ安心することは出来ない。


『大量の魔石の反応と大型のミサイルと思われる反応があるね。当たりだよ』


(とりあえず発見できて良かったが、こんな兵器を隠している場所が他にもあると思うか?)


『規模的に微妙な所だね。アルカディアやエデンの暮らしや技術を見ることが出来れば判断も出来るけど、今のところ他にもある可能性は20パーセント位かな』


 アクマが絶対に無いと断言してくれれば他にもあると確信出来るが、曖昧に誤魔化されてしまうと判断に困る。


 最悪の場合は発射されてから対処するしかないが、流石にリスキー過ぎる。


 ナンバーズかロイヤルナイツの奴らを締め上げて、情報を聞き出すのも視野にいれよう。

 

(最低限の仕事もしたし帰るか。今からだとどれくらい掛かる?)


『最速で3時間かな。見つかるのを覚悟で一直線に飛べば1時間もあれば帰れるだろうけど、流石に無理だろうしね』


 昼飯と夕食を抜く事になるが、仕方ないか。


(見つかったら元も子もないし、ゆっくりと帰る。最低でも明日の朝までに帰れればいいからな)


 何処かに泊まってから帰るなんてできれば良いが、この世界では野宿以外の手段がない。

 しかも野宿した場合魔物に襲われる恐れがある。


 アクマが居るから問題ないだろうが、出来れば屋根のある所で寝たい。


 再び空を飛び、ミトスを目指す。


 空には大きく欠けた月が浮かび、たまに魔物の鳴き声が響く。


 こんな世界からはさっさと帰りたいものだ。





 

1






「昨日ぶりね。先ずは結果の報告だけど、我々アンヘーレンはあなたの提案に乗るわ」


 何とか日付が変わる前に帰ってこれたのだが、時差と言うものを初めて経験した。

 俺が生きていた世界では妖精の魔法で言語は全て聞き取れ、地球の何所に居ても時間は一緒だった。


 やはり妖精が居た恩恵は大きいものだったな。


 帰ってきたら風呂に入って直ぐに寝て、玄関を叩かれて今に至る。


 来たのはブルーともうひとりだが、威圧感を感じる。


 この人は確実に強い人だ。


「それはありがとうございます。ところで、そちらの方は?」

「アンヘーレンの戦闘指揮官をしているブラックよ。あなたがイニーフリューリングね?」

「はい。立ち話もなんですから中にどうぞ。水くらいしか出せませんがね」


 大人として人が訪ねてきたら茶と菓子位は出したいものだが、こんな場所では水くらいしかない。


 ふたりをリビングに招き、昨日と同じ感じに座る。


「私の方はいつでも動けますが、そちらはいつから動けますか?」

「既に動き始めているが、最速で今日の夜からだな。此方としては夜に行動を起こしてもらった方がありがたい」

 

 アンヘーレンは争っている両陣営に介入する流れとなるので、素性が判断し難い夜の方が良いのだろう。


 明かりなんて月位しかなかったからな。


 魔法で代替え出来るだろうが、逃げる場合とかは夜の方が有利だろう。


「でしたら今日の夜に決行としましょう。早ければ早いほど準備をする時間を与えないで済みますからね」

「それは良いけど、そっちは拠点を潰せるのよね?」 


 ブルーの心配はもっともだが、アクマの試算では問題ないだろうと結果が出ている。


 もっとも重要であろう兵器の保管場所の結界の強度を解析して出した結果なので、あっているだろう。


 まあ、射程と威力の問題が残っているが、時間を掛ければなんとかなるだろう。

 アルカナの魔力供給があってこそだが、相手が相手なので多少の卑怯は仕方ない。


「問題ありません。既に両陣営の最終兵器が保管されている場所も把握してあります」

「なんだと!」


 ブラックは思わず立ち上がり、驚いた声をあげた。

 アンヘーレンからしたら一番知りたい情報を知っていると聞けば無理もない反応だろう。


 その後、一言謝ってからブラックは直ぐに座り直した。

 

「それは本当なんでしょうね?」

「はい。アルカディアの方は魔物探知用の衛星を改修したものを。エデンの方は軍事利用されていた施設を改修したものを使っていました」

「……場所は?」

「それは秘密です。下手に動かれると作戦に支障が出ますからね。信用できないとは思いますが、やる事はやりますのでご了承ください」

「その言葉が嘘じゃない事を祈ろう。それで、作戦の流れを教えてくれ」

「分かりました」


 作戦は全部で三段階となる。


 第一段階は俺が適当な拠点を攻撃し、指定した場所に両陣営の魔法少女等を誘き寄せ、アンヘーレンの魔法少女たちに擦り付ける。


 第二段階は昨日探した兵器の保管場所を強襲して、通信機器の破壊と出入りできないように封鎖する。

 アルカディアの方は場所的に破壊しても問題ないだろう。


 正確には破壊するしか方法がない。


 流石に宇宙に行くのは無理であり、時間も必要となる。

 地上から破壊してしまうのが一番だろう。


 注意する点としては破片も残らないように、完璧に破壊することだ。

 地球に降り注ぐのだけは阻止しなければならない。


 おそらくこの段階で俺の存在は露見するだろう。


 ここからが第三段階となり両陣営の拠点を破壊しながら魔法少女たちを殺す。


 アンヘーレンがどれだけ魔法少女を引き付けてくれるかにもよるが、主戦力は俺の方に集まってくるだろう。


 それらを殲滅すれば表向きの作戦は終了する。


 この時点で俺が帰れれば良いのだが、もしも帰れなかった場合は第四段階に移行することとなる。


 アンヘーレンたちの殲滅。


 ここまでやればおそらく問題ないだろう。


 地球を巡る戦いは終わり、残った一般人たちが細々と生きる世界。


 その先の未来がどうなるか分からないが、今より更に過酷となるだろう。

 なにせ、魔物の脅威が残っているのだからな。


 とりあえず表向きの作戦をふたりに伝えるが、反応は芳しくない。

 

「昨日ブルーから聞いたが、たったひとりで数百から数千の魔法少女を相手に戦るのか?」

「楓さんが出来たのなら私にも出来ます。それに、昔に比べると少々弱くなっているみたいですからね」

「それは聞き捨てならんな。私たちが弱いと?」

「昔に比べればですよ」


 俺の時代には空間を斬るブレードさんや、単純な強さでは世界一位だったかもしれない本気の桃童子さん。


 更に色々とおかしいらしい楓さんなど、普通とは言い難い魔法少女が大勢居た。 

 

 おそらく魔女へ対抗するために神様だか、世界の意思とか呼ばれる存在が何かしたのだろう。

 そうでなければあそこまで強い魔法少女が、同じ時代に居るわけがない。


「昔ね……なら、本当に弱いか試してみるか?」

「構いませんが、死んでも文句は言わないで下さいよ」


 シミュレーターが無い以上、戦いには死のリスクが伴う。

 武器ではなく魔法で戦う以上、手加減なんて出来るわけもない。


「ブラック」

「…………今の言葉は取り消そう。だが、お前が作戦に失敗した場合、こちらは即時撤退させてもらう」

「構いませんよ。話を戻して、第二段階の場所は此処から北西に五百キロ程離れた場所にします。地図とかありますか?」

「念のため持ってきてあるわ」


 ブルーが差し出した地図にミトスの位置と、戦うのに丁度良い場所を記す。

 指定した場所は盆地になっているため、いざという時は逃げ難い場所だ。


 この逃げ難いは俺の魔法からであり、アンヘーレンたちからしたら戦うのに丁度良い場所だろう。


「方法は伏せますが、この場所におびき寄せるので、出来るのでしたら確認しておいて下さい」

「分かったわ。時間は?」

「現時刻から10時間後。19時過ぎにしましょう。大丈夫ですか?」

「問題ない。この作戦は私たちにしたら降って湧いたものだが、期待している。頼んだぞ」


 最後に形ばかりの握手をして、ふたりは帰って行った。


 これで一旦作戦については問題ないが、やはりアンヘーレンも潰す事になりそうだ。


 ただの勘だが、あいつらは最後に俺を裏切るだろう。


 そんな予感がする。

tips.エデンとアルカディアの兵器はどちらも発射されれば、地球は完全に人が住めなくなるよ

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