8:レセア、私たちのガゼボ
ルナリスとレセアのガゼボ。
「ルナリス…あなたはどうしたいの?グレイ様の事」
呆れて聞く。
「どう…って、グレイは何も覚えていないんだし、どうもこうもないわ」
「そのことじゃないわ。…あなた、グレイ・ヴェントスが好きなんでしょう」
「!?、な、何を言っているの、レセア。そそ、そんなわけないでしょう!あんな、あんな…私の苺を無断で食べてしまうような人!」
「そこ…?」
「ええ!苺はとっても大切なのよ!」
ルナリスは、恥ずかしさを隠すように話を変えようとする。
―まったく、このお嬢様は。
才女で人望もあり、スタイルもいい。シルクのような金髪に、綺麗な海のような瞳は、誰もが見とれる。
…ダメなのは、恋愛に関してだけ、なのよね。
「そんなんでいいの、アクア公爵令嬢。いつまでもぐずぐずしてると、プリンセスに取られちゃうわよ」
「っ!」
プリンセス。それは、そのままの意味。王の娘。王女。
現在、アロノスのプリンセスと言えばただ一人。
リゼ・アロノス王女。
現王には男女の双子がいて、その片割れだ。リゼ王女は、双子の妹のほう。
彼女には、あるうわさがある。
「リゼ王女は、グレイ様のことを慕っているらしいじゃない」
「…」
「あなた、その様子だと知っていたのでしょう?」
「…」
「ルナリス」
「もう、しつこいですよレセア!私は、グレイのことなんてなんとも思っていません!…ただ少し、会うと緊張して顔が熱くなって、体内の魔力の調子がおかしくなるだけ!」
「いや、それもう確定で好きだね?」
「だ、だから違うって言ってるでしょう!」
勢いで立ち上がったルナリスは、公爵令嬢ならぬ慌てようで、紅茶をぐびっと飲み干した。
「行きますよレセア!そろそろ午後の授業の時間だわ」
「はいはい、わかりましたよ」
バスケットを持って、校舎を目指す。
公爵令嬢ルナリス・アクアは、不器用で強がり。
それでも私は、この方が、可愛くて仕方がない。
レセア・グラキエス。ルナリスの部下であり、女騎士であり、そして、一番の友だ。