3:ルナリス、風の公爵家
灰色の髪と瞳、私より5センチほど高い身長、この態度。
「グレイ。また来たの?」
「あ、苺。もーらい」
パクっと一口で、サンドウィッチを頬張るグレイ。
「うま」
「あぁぁ!私の苺…っ」
「こんなにあるんだから、一個くらいいだろ?」
「あなたね…苺が私にとってどれだけ大切なものかわかってるの!?」
「はいはい、おふたりともそこまで。グレイ様、なにか御用でしょうか」
ヒートアップしそうだった私とグレイとの間に、レセアが仲介に入った。
「いや、べつに。たまたま通りかかったら、美味しそうなものがあったから。あ、じゃあ、俺行くわ。またな、ルナ」
「グレイ、待ちなさいっ!」
「ルナリス、落ち着いて。いつものことじゃない」
「…そうだけど」
レセアにたしなめられて、落ち着く。
―グレイ・ヴェントス。風のヴェントス公爵家の子息。私の幼馴染。
アクア家とヴェントス家の領地は隣同士で、屋敷もそこそこ近く、お互い貿易で助け合っているため、幼い頃から会う機会が多かった。
それと、あの時——
「ルナリス、また顔が真っ赤よ。まったく、いつになったらそれは治るのかしらね」
レセアが、やれやれといった感じで言う。
―そう。私は、グレイを見ると、いつも顔が熱くなって、心拍数が上がる。
「しょ、しょうがないでしょ!グレイを見ると、思い出してしまうんだもの…!」