1:ルナリス、はじまり
アロノス。この世界の総称だ。
あちこちで魔法が飛び交い、人と魔法が共存する世界。
皆、魔力を持って生まれてくる。基本的には、母親か父親、どちらかの属性が受け継がれる。もしくは、両方の血が混ざりあって、新しい属性が生まれる。
アロノスにおいて、はじまりの4属性というものがある。現在属性の数は50以上あると言われているが、すべての始まりはこの4属性なのだ。水、草、火、風。これらの属性である。
この世界が始まるとき、神は人類に魔法を与えた。その際、神に選ばれた4人の若者が、一人一属性ずつ授かったのが、このはじまりの4属性。彼らは民衆を率いて、アロノス全体を一つの国にした。
そして、神はもうひとり、特別な存在を作り上げた。
それが、初代アロノス王である。すべての属性を扱うことが出来る、神からの寵愛を受けた者。
そして、現在。アロノス王国建国から3000年もの月日が経っている。
始まりの4属性を授かった4人の若者の地を受け継いだ、4つの公爵家。
水のアクア家。
草のヘルバ家。
火のイグニス家。
風のヴェントス家。
には、奇跡的に、同い年の子息、息女がいた――――。
「おはようございます、お嬢様。」
「ん…おはよう」
真っ白なカーテンが風でなびく。
「朝食はいかがいたしますか?」
「今日は遠慮しておくわ」
「かしこまりました。では、お着替えを」
メイド長がそう言うと、10人くらいのメイドたちがいそいそと私にドレスを着せる。
「…今日も、青色のドレスなのね」
上等なオーシャンブルーのドレス。とても綺麗だし、私は青が好きだから嫌なわけではない。
―でも―。
「当たり前でございます。なんといっても、あなた様は——」
メイド長は、これが口癖なのだ。
「アクア公爵家35代目当主のご息女、アクア・ウィサイド・リ・ルナリス様なのですから」
「ええ…わかっています」