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夜を統べる血鬼  作者: 晩蟬 剣
第一章 夜の血鬼
12/14

12

PV800達成!

ついでにユニークも400行ってました!


この間300行ったばかりなのにすげえ!まじありがとうございます。


ブックマークも増えててうれしいです。

いつも見てくださり本当にありがとうございます。


 息が切れる。

 冷や汗が頬を伝い顎から落ちる。


 「なんなんだいったい…」


 翔真は胸中で問う。何故こんなことになっている。

 何故自分が巻き込まれている?

 焦燥が頭の中をかき混ぜ思考が定まらない。


 今思っても今日はさんざんだ。吸血鬼と出会い、防衛軍に追われ、さらにコスプレ女の登場。

 それを現実と思えず現実逃避するしかない。

 彼らは人の事情などお構いなしに殺し合い、憎み合う。


 蛇炎とコスプレ女が戦闘に入った。どうやら彼らは不仲らしい。

 その間隙を縫い――脱兎の如く逃走した。



 これ以上の面倒事はごめんだった。早く家に帰って、熱いシャワーを浴びて、ふかふかのベットで甘美な眠りにつきたかった。


 「止まれ!」


 鋭い静止の警告。それを背に受けるが今更止まれる訳もない。

 翔真の頭は情報過多で混乱していた。そのまま逃走を続けようとして。


 たんと銃声が鳴り響く。


 「んなっ!」


 驚愕の一声。まさか()()()に発砲するとは。

 銃声が続く。


 近くに当たったそれは恐怖の音をまき散らす。

 焦燥と疲労で思考が追いつかない。

 とにかく背後の恐怖から逃げようと足に力を込め――。



 「――ッ!」


 ――被弾した。


 弾丸は右大腿をわずかに抉り、血の軌跡をひきながらかなたにすっ飛んでいく。

 その光景をどこか、諦観に似た、滑稽な気持ちで眺める。


 直後、猛烈な痛みが脳髄を掻き廻す。


 「ぐぅう…」


 獣じみた声が漏れる。痛い、熱い。なんだこれは。

 あまりの激痛に涙が滲み、視界を侵食する。

 痛みと、恐怖。それから、それらを生み出した者への――憎悪。


 激情が瞳に灯る。


 「クソったれが…」


 ――殺してやる。


 身を起こし、背後を見る。


 自分に向けられた銃口、それを握る男を。

 漆黒の戦闘衣(バトルアーマー)で身を固めた、防衛軍の。

 殺意を身に帯びたその眼を。


 ――殺してやるッ。


 獣の死に際の、呼吸。


 「フーッフーッフ―ッ」


 腿から帯びたたしい血を垂らしながら立ち上がる。


 「殺してやるッ!」


 転瞬、力の奔流が沸き起こる。

 瞳が、虹彩が深紅に染まる。血のように紅く、朱く。

 瞳孔が縦に伸長する。まるで、爬虫類のそれ。


 身をかがめ、下肢に力を込める。半ば無意識のそれはまるで、獣の跳躍を彷彿とさせる。


 一息に跳ぶ。一瞬で距離を詰める。反応の遅れた男の驚愕の灯るその瞳を見据える。

 慌てて男は銃を構える。だが致命的なまでに遅い。


 殺意を迸らせ、突撃銃(ライフル)を無造作に掴む。横に逸らせばもう当たらない。


 「ひっ」


 驚愕の、恐れの交じった情けない悲鳴。

 それをしり目に思い切り蹴とばす。


 鋭い蹴りが横腹に吸い込まれる。男は体をくの字に曲げふき飛んだ。


 「っ…」


 激痛が思い出したかのように戻ってくる。

 たまらず膝をつき荒い呼吸を整える。


 腿を見やれば抉れた傷口からどす黒い血液が、命の灯が流れ落ちる。


 脂汗が湧きだし。吐き気と眩暈が込みあがる。


 胸中でまるで他人事のように思った。

 これは大丈夫な怪我なのか。


 焦慮たる思いを脳みそから追い出しつつ、翔真は帰路についた。


 



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