6 未来行きタイムマシン完成
時空研究所の活動が始まってから早3年がたつ。未来行きタイムマシン開発も佳境に入り、あと数日で第一号機が完成しそうな勢いだ。私は、一生懸命組み立てを行っていた。
未来行きタイムマシン第一号機は、かなり巨大になりそうだ。高さ3m、幅2m、奥行き4m。何とか屋内の研究室にに収まる大きさなものの、移動がそこまで簡単ではなさそうな構造となっている。私は、研究員の指示に従って部品を組み立てていた。
そして2日後、ついに未来行きタイムマシン、「アル・フトゥーロ」が完成した。
タイムマシン自体はかなり巨大ではあるものの、中に人が入れるスペースはない。そこまで大きなものを移動させることはまず困難な構造になっている。入れることができたとしても、大きくて英和辞典2冊程度だろう。
第一号機の実験で最初から人(生命体)を未来に飛ばすわけにはいかない。まずは、コンパクトなもの(持ち運びができるもの)を最初に未来に送ることになるだろう。今のところ、送られる対象は缶ジュースのゴミになる予定である。
缶ジュースのゴミを未来行きタイムマシンの中にセットし、5分後の未来に飛ばす。正常に戻ってくるか、ということをチェックするのである。
実験を行う人にとっては、缶ジュースがいきなり前に現れたように見えるだろう。それで、どのくらいおかしなことが起こるのかと言うことについて調べる。未来に飛ばしたことによる影響はないか、……。
様々な実験を行い、無事に物質が未来に飛ばせるかをチェックする。その後、中に入る物質のサイズを大きくしていく流れだ。
タイムマシンには時間を入力できる部分があり、指定した時間分だけ中に入れたものを未来に飛ばすことができる。物を入れるスペースは電子レンジのように窓張りになっていて、中を覗けば、物体がどのように消えるのかを見ることができる仕組みになっている。
研究所の14人のメンバー及びガルシア教授が、タイムマシンの置いてある研究室に集まっている。私たちは、固唾をのんで実験の様子を見守っていた。
「では、中に缶ジュースのゴミを入れて、10秒後の未来に飛ばしますよ!」
彼は缶にサイン(Galcierの名前を書く)をして、装置の中に缶をいれ、時間が表示されているディスプレイに「10秒」と入力した。
「それではボタンを押します!」
彼はそう言って、タイムマシンの稼働ボタンを押した。ボタンが押されると同時に、中の缶が消えた。そして10秒後、ふたたび中に缶が現れた。
「おー!」
タイムマシン第一号の実験が成功し我々は子供のようにはしゃぐ。実験は無事成功だ。つぎは、1分先に飛ばしてみよう。そう言って、ガルシア教授はタイムマシン内部に缶を入れて60秒先にセットし、稼働のためのボタンを押した。
タイムマシンの中に入っていた缶が消える。それと同時に、ガルシア教授はストップウォッチで時間の計測を開始した。
「57,58,59, 60!」
ガルシア教授が60と言い終えたあたりで、タイムマシンの内部に缶が現れた。無事タイムマシン実験は成功ということになる。私たちは、今までの努力が報われたという実感で大騒ぎしてしまった。
2035年9月1日。ついに、私たちは(おそらく)第一号となる未来行きタイムマシンを開発した。正直それなりに巨大ではあるが、間違いなく未来に物を送ることができる装置だ。
次に、中にカメラを入れて、撮影状態にしながら未来にカメラを送ってみる。装置の中からもガラス越しに外が見えるので、録画した結果、外がどのように見えるか、と言うことが判明するのである。
ガルシア教授は、先ほどまでと同じ要領でタイムマシンを操作し、カメラを20秒後の未来に送った。今までと同じように中のカメラが消え、20秒後再び出現した。
カメラを稼働させてからの時間を測っておいていた。ストップウォッチは、47秒を指示していた。一方、カメラは27秒を示している。録画を確認してみると、ボタンを押された瞬間に外の様子が変わっているようだった。
問題なく、未来行きタイムマシンは稼働しているようだった。
しかし、課題はこれからである。過去行きタイムマシンを作らなければ、我々が本当の意味で「タイムマシン」と呼ぶものを完成させたことにはならないだろう。
私たちは、ここから先が本番である、と言うことを強く認識しなければいけないことを実感した。