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痛み

作者: N(えぬ)

1

 ある男の年老いた父親は重病で医者から「もうそれほど長くはない」と告げられた。男は最期は家で過ごさせようと決めた。

「これを使っていれば、ひどく苦しむようなことはないでしょう」在宅で医者に訪問診療を受け、特殊な痛み止めを処方してくれた。

 男は自宅近くの薬局へ行き、受付カウンターで薬剤師に処方箋を渡した。薬剤師は処方箋に目を落として確認すると、

「この薬は、ご家族の方がお使いになるのですか?」といった。

「ええ。父親がもう末期で」男がそう言うと薬剤師はまた処方箋を一度見て、

「この薬は特殊なものなので在庫がないのですが。取り寄せになりますが?」薬剤師は、少しイヤそうな顔でそういった。男はその態度を見てほかの店にしようかとも思ったが、ここ意外の薬局はかなり先まで行かなければならない。とりあえず最初の数日分は入院していた病院でもらっていたので、

「取り寄せると何日くらいかかりますか?」

「はい。あさってにはお渡しできると思います」

「そうですか。じゃあそれでお願いします」

「わかりました。取り寄せで……それで、これからどれくらいの間、お使いになりますか?」

「……」



2

「一日一回の服用で痛みがすっきり!『スッキリ愛』のご紹介です!」

 通販番組で出演者が素っ頓狂な声で瓶入りの錠剤を紹介している。膝や腰の関節の痛み、そのほか痛みなら何でも軽減してくれるという。

 それは爆発的に売れた。社会現象になった。日ごろから習慣的に常用する人も出だした。事前に飲んでさえいれば「痛みを予防」できるということだった。だが、痛みを感じなくなると人々は病院に行かなくなった。そして、皆、苦しまずに……。

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