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61 作戦会議

 


(とうとう、この日が来たか……)


 オレ、ブルース・ラピスラズリはイヴの話を聞いて、深いため息をついた。

 朝、シヴァルラスがイヴに話があると、寮母から伝えられたらしい。おそらく、悪夢のイベントがこれから本格的に始まるのだ。


 貸切った談話室には、オレとイヴの他に事情を知るヴィンセントとグレイムもいる。ちなみに、グレイムは昨日、全校集会が終わった直後に腹を割って話した。前世の話からこれから起こることまで知らされたグレイムから「最初から腹割って話せよ、バカ野郎」と鳩尾にいいものを食らった。


「んで、どうすんだよ? あの悪魔がイヴを狙ってるなら、王子様の話を断ればいいだろ?」


 グレイムは壁に寄りかかり、組んだ腕を指で小突いた。眉間に深く皺が刻まれ、ライムグリーンの瞳にはうんざりとした色を浮かんでいた。


「どうせ強制力はねぇーんだ。知らぬ存ぜぬで通せばいい」


 グレイムの言う通り、本当に逃げたいなら白を切ってシヴァルラスの頼みを断ればいい。王族の頼みを断るのは、のちのち体裁が悪くなるのが、こちらは命がかかっている。しかし、イヴは赤い瞳を不安げに揺らしてグレイムを交互に見ていた。


「で、でもグレイム……私がどうにかしないと、悪夢っていうのが他の人を襲うかもしれないんだよ? わ、私は、悪夢にグレイムやブルースが襲われたりしたら……」

「……ンのぉ、バカっ!」


 グレイムが一喝し、イヴが小さく肩を震わせた。


「お前は自分の心配をしろ! もしかしたら、殺されるかもしんねぇんだぞ!」

「で、でも……」

「でもじゃねぇ! 昔からお前は……っ!」

「おい、グレイム。その辺にしておけ」


 2人の間に割って入ってきたヴィンセントをグレイムはじろりと睨みつける。今にも怒りの矛先がヴィンセントに向かいそうな状況下で、ヴィンセントはオレに目をやった。


「おい、ブルース。そのイベントが始まるまでに時間はどれぐらいあるんだ?」

「おそらく、早くて今日、明日の夕方でしょうね……学園側も早く解決したいでしょうし、悪夢は夕方ごろに動いてるみたいでしたから」


 ゲームではそのルートの攻略キャラも一緒にイベントに参加し、悪夢の箱を浄化するのだ。それなら事情を知る全員がイヴと一緒にいれば守れるのでは?とグレイムは提案するが、首を横に振ったのはオレとヴィンセントだった。


「お前……あの悪魔が相手だぞ?」


 このメンバーの中でもジェットの最大の被害者であるヴィンセントは語る。


 ジェットには天才的な魔法の才がある。クリスティーナ曰く、8歳の時に魔法で分身を作って、さらには国外にそれを飛ばしていたのだ。そんなデタラメが体現化したような男を相手に、真っ向勝負をかけて勝てるのか。勝てるわけがない。


「アイツのことだ。一緒にいたところで複数の人間をバラバラの場所に移動させる魔法もやりそうだ」


 ヴィンセントは自分の赤い髪を掻きながら、まだ腑に落ちない感情を吐き出すように、口を開いた。


「お前らには悪いが、オレはまだジェットがそんな事をするなんて信じられない。オレとしては現行犯で捕まえて、アイツが逃げられない状況を作りつつ、理由を問い詰めたい……まあ、アイツがそんな事をしないことが1番なんだが……」

「一癖も二癖もありますからね……彼は」


 前世では彼のイベントを起こすことも一苦労だった。攻略サイトを頼らなかった自分のせいもあったが。


「でも、この学園で起こっている問題を解決できるのはイヴの力がいるのは確かだ。被害者もいる……シヴァルラス様もどうしても協力してもらいたいだろうし、オレも殿下には恩を売っておきたいんですよね」


 オレの言葉にグレイムの射殺すような視線が突き刺さる。もちろん、ヴィンセントも呆れたような目をしている。


「別にオレは野心的な意味で言ったんじゃないんですよ? イヴの未来のために言ってるんですから」

「イヴの未来だぁ~?」

「今、うちの親父は真っ黒なことに手を出してて、オレは学園卒業後、ラピスラズリ家を出て、イヴは殿下の庇護下におきたいんだ」


 できるなら、ラピスラズリ家の裏事情をどうにかして父親を侯爵の座から引きずり降ろし、オレがラピスラズリ家を継ぐのが理想だ。しかし、そこまでどうにかする人脈も力量も自分には圧倒的に足りない。それなりにシヴァルラスと交流があったが、イヴを頼めるほど仲がいいわけでもない。それなら、これを機に恩を売っておくのが良い。ジェット・アンバーさえ出てこなければ、このイベントで恩を売ってイヴを彼の庇護下に置きたかった。


「それにジェット様だってきっとイヴを引きずり出そうとしてくると思います。それでヴィンセント様、少し提案があります」



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