厄介者と厄介払い
「……ふむ、レイアウトはこれで構わないかな。必要と感じたら、買い足せばいいだろう」
その後買い物を済ませたカーフは、買ってきた機材のテストを兼ねてコーヒーブレイクと洒落こんでいた。その間にも店内を隅々までチェックして、足りないものは無いか、逆に過剰に用意したものは無いかの確認をしている。
「必要以上の在庫は、データを取る上でも要らぬ情報になりかねないからね。今はまだ2階を在庫置き場にすることは出来るが、いずれ出来なくなるだろう。適切な在庫管理は、今後必要なスキルになっていきそうだ」
出納帳に買ってきた機材等の出費を記入していく。準備金はまだ潤沢にあるものの、無駄遣いは避けたい。必要なスキルの再確認をしたところで、カーフの腹の虫がなり始めた。
「おや、もうそんな時間だったか。コーヒーだけで腹を膨らませるのもよくないね」
カーフは食器を片付けると、食事のために外に出た。
いつもの酒場か、新しい店を開拓するか。そとに出てぼんやりと考えているカーフのその足は、ギルドの方向でも飲食店街の方向でもなく、街の外れ、街の外の方向へ歩を進めていた。
見られている。それも1人2人ではなく、数十人と思われる視線から。それを感じとっていたカーフは、朝の買い物で捕まえたひったくり犯とその不愉快な仲間たちのことを思い出していた。
「全く、懲りない連中だ」
せっかくの食事を邪魔しないでほしいものだ、とカーフはそのまま、街の出入口である大門まで来ていた。
「おや、カーフさん、依頼ですか?」
門前に立つ守衛に声をかけられる。顔なじみでもあるその顔を見て、カーフはやあ、と一声かけた上で、
「依頼というか厄介払いだね。ちょっと外で大きい音がするかもしれないが、まあ気にしないでくれ」
とだけ言い、そのまま街の外に出ていってしまった。