買い物
その後、依頼を受けたソーラたちと別れ、カーフは1人、ブロッスシードの中央街に来ていた。
「さて、と。あの木の良さは是非活かしたい。余計な物はおかず、シンプルにまとめて行くとしよう」
目的は、店内に置くインテリアの物色、の予定だったが、想像よりカーフの印象が良かった造りに、カーフは当初の予定を変更し、あくまで最低限のアレンジで済ますことにした。
必要なものとして、香りが弱く、鮮やかだが華美でない花、店の雰囲気にマッチした食器や備品。
ギルドから用意された2500ゴールド、そのほとんどは、食材やコーヒー豆にそのほとんどを費やすことになるだろう。
「まずは花屋かな。あそこなら花瓶も置いてあるから、買い物の時間も省けて楽だからね」
開店間近でもいいのではないか、と思いつつ、実際置いてみないとね、と頭の中で自問自答を繰り返し、カーフは1人、街の雑踏に消えていった。
「いらっしゃいませー。どちらの花を……って、カーフさんじゃないですか!久しぶりですー!」
そうこうしている内に花屋にたどり着く。店内から聞こえてきたのは、はつらつとした女性の声だ。その声の主は来店したのがカーフだと知ると、明るい声をより明るくさせ、じょうろを片手に近づいてきた。
「やあ、久方ぶりだね、ルファルちゃん」
カーフは笑みを崩さず、近づいてきた女性、ルファルに返事をする。ルファルは「はい」と元気よく答えると、作業用のテーブルの下にじょうろを置いた。
「最近来ないから、誰かと駆け落ちしたのかと思いましたよー!カーフさん、女性のファン多いですし!」
「いやいや、フィルエルムもそうだが、私の人気が高いことに驚きを隠せないのだよ。ソーラ君とかの方が、若くてカッコイイとは思うのだがね」
「ソーラさんは確かにカッコイイですし人気もありますよ?でも私はやっぱりカーフさんです!それにソーラさん、アリンさんと付き合ってるって噂が…………」
「あの二人がかい?ははは。彼らはお互いに良き相棒と見てはいるが、それぞれ好きな異性のタイプとは異なっているよ。パーティを組んでいた私が言うのだ。間違いない」
「へぇー……。……あれ?組んでいた?組んでいる、ではなくてですか?」
「ああ。実はこの度、カフェを開くことにしてね。ギルドには所属したままではあるが、パーティは離れることにしたのだよ」
カフェ、その一言にルファルの目が一層輝いたように見えた。
「カフェ!!いいですね!!私も是非行きたいです!!」
「オープンしてからであれば、いつでも構わないよ。時に、注文したいものがあるのだが……」
そう言って、店先から店内に入っていく。舞い上がってマシンガンのように話しかけてくるルファルを見て、今日くらいはいいだろう、と内心苦笑するカーフだった。