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悪魔契約に縛られた異世界生活 第2幕(異世界生活編)  作者: 雨宮 白虎
第4章 トキザミの国(仕事編)
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081 会月(えづき)の刻(とき)1/2

 ~荷馬車がゴトゴト僕らを乗せて、ユラユラユーラー荷馬車が揺れる~

 なんて呑気に脳内再生している場合じゃ無かった。



 今日は何かの祭りか宴かの催しがあるそうだ。

 その準備の手伝いにとして私達、修道院の子供達は荷馬車で目的地に向かう。そう、今まさに荷馬車の中に居るのだ。

 ゆらり揺られて、時折ガッタン、ゴットンと荷馬車は弾む。

 『お手伝い』先へ移動する時に何度か相乗りさせてもらった事があるから分かっていたとはいえ、今回程長い時間乗るのは初めてだから、乗り物酔いしそうになる。

 いくら(なら)された通りでも、石礫(いしつぶて)に小岩が混じるし、(わだち)はあるしと、凸凹(でこぼこな)地面と、その凸凹(でこぼこ)(じか)に伝える木枠の車輪。

 馬の歩み程にゆっくりとはいえ、どう考えても揺れない方がおかしい。

 同じ荷馬車に孤児院のみんなで乗るのだから親睦目的に会話をしようとか考えていたけど、流石に無理だった。ガタゴトと(わだち)の響きが大きくて声が届かないし、下手に口を開けると舌を噛みそうになる。

 普段は賑やかに(さえず)る少女3人組が珍しく静かにしているのだ。相当な事態だと納得する。


 (ほろ)があるので左右は大丈夫だが、前後はオープンになっている荷台。跳ねた勢いで飛び出さない様にと、クレハ抱きかかえながら、言われるままに持ってきた枕をクッションの代わりにして座り込み、今か今かと到着を待ちわびた。



 1つ刻半程が過ぎてやっと城門に辿り着いた。

 年月の暦は『2つの月』を基準としているが、1日は日差しというか太陽を基準としており、時間の数え方としては1日を12分割している。24時間制の現代社会で慣れていた身としては未だに1つ刻=1時間と勘違いしてしまうが、ここでは2時間になる。

 馬の歩測をおおよそ時速6~8kmとすると、大雑把に20km移動した事になる。

 相当に年期の入った木箱に寄りかかりながら、そんな無駄な事を興味本位で考えてしまった。


 城門から北の方に朽ちた、いや、朽ちかけている街があった。物語風に言えば「スラム街」の様な感じがする。

 何より驚いたのは、ここに来た事は一切無いのに、以前辿り着いた記憶が浮き上がった。見た事が無いのに「見た」記憶は、きっと既視感(デジャビュ)という誤認だろう。少々の長旅に疲れてしまい、ありもしない感覚に襲われたのだろう。と思い込む事にした。疲れた時は疲れたまま余計な事は考えない方が良いのだ。


 荷馬車が国の西の城門を潜り、北方へ進むと、そこは墓地が逢った。

 奥には道具入れと思われる大きい納屋と、人が暮らせそうな小屋があり、数多の墓標を見下ろせる場所にそびえ立っていた。ボロいけど。

 墓地より南へ下った所には先に到着していたシスター・テレサが祭りの場所の確認をしていた。


 シスター・テレサが立ち位置に枯れ枝で十字を記した。ぶら下げたのは棒磁石、ここは地球と同じく北と南に磁極点があるのだろう。

 パンと柏手を叩いて

「はいはい、みんな。杭打ちと縄張りをなさい」

 シスター・テレサは指示を出し、私達に続けて声を掛けた。

「ノブナガとリトにクレハは初めてだったわね。とりあえずはみんなの姿を覚えなさい。この次からは・・・あら? ノブナガはどうしたの」

 地面にへたり込みながら私の腕を掴んで、かろうじて体を起こしている感じになっていた。間違いなく馬車酔いだろう。うぉっうっ、って嘔吐な仕草から随分と苦しそうだ。

「みんなが準備してるのにごめんなさい。ノブナガは馬車の揺れで気持ち悪くなったみたい。休ませてあげたいの、お願いします」

「そうなの。まぁみんなも慣れるまで時間が掛かったから仕方ないわね。準備が終わるまで休める場所は無いから、とりあえず馬車の傍で積んできた椅子に座りなさい。それよりリトとクレハは大丈夫なの」

「え~と、僕は多分大丈夫です」

「あたしも、だいじょうぶ~」

「そう、流石は行商人の子息子女なのね。じゃぁノブナガの面倒看ながら、みんなの姿を覚えておきなさい」

 幸いにも、前の世界と同じく私達は地を駆ける乗り物では酔わないらしい。メフィスト設定の行商人の子供は良い方向へ尾を引いていた。



 次回以降に手伝う必要があるとの事で、準備作業をじっくりと眺める。

 縄で結ばれた杭と杭、12サク程で多分3.5m位だろう。十字を中心にコンパスの様に円を描き、東西南北とその中間で合計8カ所に杭を打ち込み縄を張った。ちょっとした八芒星の結界の様なサークルが出来上がった。今後の表現上これを『八芒星結界』と呼ぶ事にしよう。

 八芒星結界の北側には長いテーブルと椅子が3セット備えられた。


 用意が出来た頃を見計らって客車を引いた馬車が2台、八芒星結界の傍にやってきた。一見して分かる豪華な客車。弓なりの台座から相当乗り心地が良さそうだ。

 大きい方の客車からは、修道院長のトキザミ様が降りた後に、少々着飾った女性が3名現れ、少女3人組の手引きにより北のテーブルへ案内された。遅れて馭者(ぎょしゃ)とハン・セルが楽器らしき物をテーブルへ運んだ。

 気が付けば国の人々が、もちろん全員ではないが、沢山集まってきて、出張というか離れの礼拝堂を巡回している修道士(モンク)が整列に追われていた。



 ()が西の地へ差し掛かり空が(あか)く染まり始めた頃に、八芒星結界の中央で胸元に短剣を掲げたシスター・テレサの挨拶から宴が始まった。

「今宵は2つの月が(かい)し連なりて、常世(とこよ)隠世(かくりょ)(かい)す『秋の(ごう)』。我はここに四大英霊精霊を呼びたもう。生きと死、生けるモノへ、常永久(とことわ)に温もりと安らぎを(まお)す」

 そして携えた短剣を掲げ東西南北という順に周りながら、短剣は空に何かを刻み祈りを奉る。

「幸いあれ:

 東を守護し風の王シルフィード。汝の風なびく衣は命ある全てを御包む慈愛がごとし」

「幸いあれ:

 西を守護し水の王ウィンディーネ。汝の戯れ集いし水面は万物を洗い清めるがごとし」

「幸いあれ:

 南を守護し火の王サラマンダー。汝の息吹は塗れた障り穢れを打ち消す雷炎がごとし」

「幸いあれ:

 北を守護し地の王ノーム。大地を支え恵みをもたらすは生きとしモノへ源泉がごとし」

「あらゆる災厄近寄る事なかれ! 我、四大精霊に守護されたれば、なり!」

 唱え終わり、短剣を胸元に戻すと、八芒星結界が淡く光り始めた。


 (あか)らむ空も、東から顔を出す重なった月の淡く青紫の光で塗り替えられるに従い、八芒星結界の光は天へと立ち(のぼ)る。

 より豪華な客車からシスター・レミアが、そしてその手に引かれて姫様が舞い降りた。腰程もあるプラチナブロンドの髪は淡い月の光を束ね光芒を放つ様に輝いている。

 姫様はシスター・レミアから手渡された、柄の兜金(かぶとがね)に神楽鈴をあしらった2振りの(つるぎ)を構えて、シスター・テレサを入れ替わり中央に立ち入った。



※:注

 ここで使用されている楽器は『(こと)』ではなくて『(こと)』。弦を()と呼ばれる支柱で弦の音程を調整された和楽器です。

 なお、琴には()がない代わりに、ギターやバイオリンの様に弦を押さえて音程を調整します。



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