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悪魔契約に縛られた異世界生活 第2幕(異世界生活編)  作者: 雨宮 白虎
第3章 トキザミの国(生活編)
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066 修道院の外について

 大樹の影に寝そべりながら、これからの事についてクレハと一緒に思案に(ふけ)っていると、突然、アリアが私の正面に顔を出して見下ろしながら声を掛けてきた。

「あら、どうしたのリト。今日は真剣な顔つきなのね。何かあったの?」


 ビックリして飛び起き、慌てて返事をした。

「や、やぁ。アリア。君こそどうしたんだい。これか・・・」

「あ、アリアだ~。おはよう。アリアはどうしたの?」

 クレハが声色変えて寝ぼけた感じに割り込んだ。私の太腿を鷲掴みにして「声色変え忘れてる!」という意思表示をしながら。

「アヒャヒャっ。こらっクレハ、くすぐったい」

「クレハちゃん。こんにちは。おはよう、じゃないわよ」

「「ちゃん」いや~。あたしはクレハなの~」

「ごめんね~、クレハちゃ・・・ん。こどもあつかいして」

 立場が凄く微妙な会話をしているな~と思いながら、改めて挨拶を返す。

「アリアはどうしたの? シスター・テレサの授業のお手伝いをしてるって思ってたのに、僕達の所に来て大丈夫なの?」

「はいこれ。リトがレミアに頼んでいた本よ。用があるから代わりに渡しておいてって頼まれたから持ってきたの。部屋には居ないし、勝手に部屋を開ける訳には行かないから持ってきたのよ。探したんだからね!」

 アリアはそう言いって3冊手渡した。

「あ、アリアありがとう。それと、迷惑かけちゃってごめんなさい」

「大丈夫よ。リトは何時もここに居るって知ってるから探した内に入らないわよ。気にしないで。それよりも、リトって直ぐ「ごめんさない」するね。悪い癖だと思うから治した方が良いよ」

 日本人としての癖なのかもしれない。「すみません」を多用しすぎるのは。英語での「ExcuseMe」のつもりだけど「Sorry」の方を使っているらしい。言葉をもっと勉強しなければと改めて思う。


「そういえば『レミア』って言ったけど、シスターのお仕事はお休みなの?」

「そうよ。レミアは中後は私用で外へおでかけよ。なにか、レミアに用があったの?」

「あ、いや、そういう訳じゃ無いんだけど・・・」

 そう言いながらノブナガの方へ視線を向けてしまったのだろう、アリアが気付いた。

「そっか~。ハンスとガッセル、それとノブナガの事が心配なのね」

「ハンスとガッセルって誰の事?」

「なに言ってるの。みんながハン・セルって呼んでるでしょ。もしかして、名前覚えてなかったの・・・呆れたわね」

「ごめんなさい」

「ま、仕方が無いかな。リトって何時もノブナガの心配ばっかりして、他の事は後回しにしてたものね。本当にどっちがお兄さんなんだか判らなくなるわね」

「そんな事無いっ!」

 図星を突かれた気がして、ついムキになって反論してしまった。失態だと思った。

「ああ、気を悪くしたらごめんなさいね。勘・・・かな、なんとなくそんな気がしたの。勘違いよね。本当にごめんなさいね」

「ううん。僕の方こそビックリしてごめんなさい」

「ふふふ、さっきから謝ってばかりね、わたし達」

「そ、そうだね、ははは・・・」



「そっか。リトはみんなの事を心配してるんだ。わたしもね、あの状況は心配なのよ。ハンスとガッセルの・・・リトにはハン・セルの方が馴染みがあるんだったわね。彼らの両親は国を守った勇敢で自慢の兵士さんだったのよ」

 兵士の子供で孤児院に世話になってるって事は、あえて質問する必要はないだろう。

「大きな戦争があったの?」

「戦争? ええと、他の国との争いの事だったかな。ここはそういう争いは無いわね。ただね何処からか魔獣が襲ってくるの。それでね、ハン・セルは立派な両親の意思を継いで国を守りたいって言ってたわ」

「そっか。それで稽古してる時が多いんだ」

「そうなのよ。ただ、今はノブナガが独り占めしてるみたいね。女のわたしが口出しするのも、どうだろうかって心配してたけど、リトが心配してくれるなら、お願いしようかな」

「お願いされても、僕もどうして良いのか分からないよ。アリアは何か良い案なないの?」

「男の子の事はリトの方がずっと知ってるでしょ。それにノブナガよりもリトの方がずっとお兄ちゃんに見えるわね。何て言えば良いのかな? 慌ててる様な仕草は多いけど落ち着いているというか、すっごく冷静だよね。まるで修道士(モンク)みたいだなって思う時があるわね」

 本当によく見てるなって気がした。コレが『女の勘』なのだろうか。それとも私の子供の演技が下手だからだろうか。なにか、こう、首筋から冷たいナニカが覆い被さる寒気がした。


「アッリア~。アリアってば~。リトとばっかりお話ししてて、あたしつまんな~い。いっしょにお話ししようよ~」

 私が言葉に詰まっている所にクレハが割り込んだ。

「あらあら。それじゃ今度はクレハちゃ・・・んとお話ししよっか。なにか聞きたい事あるのかな」

「あのね、あのね、いつも仲の良い3人のおね~ちゃんは何処にいるの。見かけないのおおいよね?」

 凄く良いタイミングで話題を変えてきて正直助かった。このままだと、わたし達もノブナガと同じ異世界人と云うか、この国で呼ぶ『迷子』とバレてしまいそうだった。

 どう表現したら良いのだろうか? クレハは勘が良いというか、期を読むのが上手い。いつも言葉に詰まった時に話題を変えてくれる。それとも私がコミュ障で会話を途切(とき)らせてが問題なのだろうか?

「あの子達は、おねーさんたちはね、お外のおうちへ、お手伝いにいってるのよ」

「おそと? おそとでなにしてるの?」

「お外のおうちでお手伝いをしてるわね」

「おてつだい・・・ってなに? おふとん、干すの? おせんたく、するの?」

「そうよ。他にもいろいろなお手伝いあるわね」

「どうして、おそとに行くの? お仕事?」

「お手伝いするとね、おこづかいをもらえるの。おねーさんたちはね、おこづかいで服を買ってるって言ってたわね。それとね、お手伝いは自由の選べるのよ」

 修道院の外で『お手伝い』という仕事があるのか。言葉が不自由だから院の外の事なんて考えた事が無かった。そうか、修道院の外へ出るって方法があったか。

「話しに割り込んでごめんなクレハ。アリア、その・・・『お手伝い』について詳しく教えてくれないかな。いや、教えて下さい。おねがいします」

 必死だったのもあるが、言葉尻がうわずって変な言い方をしてしまって恥ずかしい。

「んも~。折角アリアと話ししてたのに、なんで邪魔するのよ。リトは」

 クレハの声色はそのままだったが、話し方に落ち着きがあった。善後策の糸口が見えたのね、後はよろしく。そういう雰囲気が感じられた。


 アリアの説明を掻い摘まむと下記になるだろうか。

・『お手伝い』という依頼は子供の私達でも出来る程度である事。

・『お手伝い』を受けるか否かは、原則としては自由だ。

・依頼料の半分は院の収入で、残りの半分が自分達が自由に使えるお小遣いとなる。少女3人組はオシャレに使っているという。小さく見えても女の子なんだなぁって思う。

・そして『お手伝い』には将来を考える為の社会勉強という意味合いがあるのだそうだ。


 『お手伝い』という依頼のシステムは、成人して孤児院を去った後の働き口を見つける為に色々な経験を学び、希望合った働き方を考える機会にするという。

 職業安定所(ハローワーク)みないた事を兼ねているんだなって思うのと同時に、何となく違和感を感じる。

 前の世界では昔の、大戦迄は家督相続とかいう、長男が家を継いで当たり前。他の弟姉妹(ていしまい)はただ生きる為だけに望まない仕事へ丁稚奉公するのも当たり前。そんな風習があったと思った。

 家を継ぐが否かは兄弟姉妹(けいていしまい)で決めれば良い事だ。私にとってはどうでもかまわない。

 気になっているのは丁稚奉公する先を選べるという事だ。家督を重んじるなら、孤児の社会的な立ち位置は不自由だ。それこそ馬車馬の様に使役されて疲弊したって文句なんて言えないと、ずっとそんな事を考えていた。社畜精神の至高の極みだろうか?

 そして感じている違和感というのは、メフィストが「ここは中世ヨーロッパ風の世界」と言っていた割には、現代社会の法律や習慣が垣間見えてくる事だ。

 現代社会の未来人、いや異世界人が自分達の生活習慣の良い所を取り入れる様に提案した。そんな感じで良いだろう。もちろん勝手に想像しているだけで、もともと『しっかりとした社会』が築かれた世界だったという事もありえる。

 下手な考えはこの辺にしておこう。ノブナガをどうやって修道院の外へ連れ出すか。考えなければ。



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