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悪魔契約に縛られた異世界生活 第2幕(異世界生活編)  作者: 雨宮 白虎
第2章 トキザミの国(入国編)
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039 門兵さんと言葉の壁

 子供らしさの練習をしていると、突然、門が開く音がしてドキッとした。

 物陰から除くと、馬車1台と護衛2騎が姿を現した。客車だった事から要人というか、偉い人が出かけていくのだろう。

 これから夜になるのに何で? と、なんとなく違和感があったが、今の私には関係の無い事だ。それよりも・・・

 このまま出て行ったら不自然だよな。いきなり現れたら不審がられるのは当然だろう。

 どうしたモノかと考えている内に門は閉まり、見送った兵士は守衛室に戻っていった。

 これは絶好のタイミングだと感じて、行動に移す事にした。



 守衛室はレンガ造りで6畳程の大きさに思えるが、奥行きがあればもっと広いのかも知れない。そして内開きの扉と、顔が覘ける程度の小窓があった。小窓は大人用なので子供には少々高い所にあった。

 背伸びをしても全然届かない。仕方が無いのでとりあえず

「こんにちはー」

 と、日本語で声をかけてみた。

 しかし、なんの反応もなかった。風鳴りとでも勘違いされたのだろうか。

 仕方なく扉にノックする。

 今度は兵士がすご勢いで小窓から顔を出し辺りを見渡す。しかし小窓が高いので私達の姿に気がつかなかったのだろう。何事も無くて良かったと安堵して下に溜息をこぼしていた。

 仕方なく手を伸ばして振ったら、やっと私達に気がついた。

 兵士は守衛室から飛び出して私達をジロジロと見まわす。ギョッとした視線が気味悪かったけど、これも兵士の仕事なのだろうと割り切った。

「キウジ、エスタス、ラ、ナボ」<訳:君達は誰だ>

 ・・・嗚呼、やっぱり何言ってるのか分からない。ん~どうしよう。。。

 とはいえ、私から声を掛けたのだし、兵士が何かするのを待つのは駄目だと思うので、もう一度挨拶をしよう。日本式だとお辞儀だけれども、ここは洋風な感じがする国だ。西洋の挨拶がいいのだろう、と考えた。そしてクレハに耳打ちした。

 メフィストの仕草を思い出しながら、私は胸に手を添えて、クレハはスカートを軽く摘まんで軽く膝を曲げて挨拶をする。

「こんにちは。・・・あの・・・僕たち・・・僕はリトといいます」

「あたし、クレハ、いいます」

 仕草は兎も角、挨拶は日本語だった。少し気まずい沈黙があった気がする。「グッデイ」とか「ハロー」のほうが良かっただろうか。


「ヒッティ」

 そう言って兵士は胸に手を当てて軽くお辞儀・・・というより身長差を埋める為に目線を落としたのだと思う。

 なるほど? 「ヒッティ」が挨拶の言葉なのか。

「ヒッティ?。リト、クレハ」

 真似をして、名前の所は自分達を指さした。

 兵士は少し首を傾げてから考えて、そして親指を自分へ向けて話す。

「サルートン。ミ-、エスタス、アイン」<訳:こんにちは。わたしはアインです>

 やっぱり何を言っているのかさっぱりだ。ただし自分を指しての言葉なら、最後は名前だろうか?

「アイン?」

 思わず兵士を指して聞いてしまった。無礼な仕草に気付いて慌てて手を後ろに回して隠す。

「ジェス」<訳:Yes>

 兵士は自分を指したままうなずいた。予想は正しかったようだ。

 それならばと考えて、もう一度真似をする。

「サルトン。ミー、エズタス、リト」

「さるーとん。みー、えすたす、クレハ」


「リト。クレハ。ミー、ビダス!」<訳:I See>

 アインと名乗る兵士は私達を指さしてから、掴んだ、というか分かったという感じで握りこぶしをつくった。

 とりあえず無事に? 名前の交換は出来たと思う。これぞ、異文化コミュ・・・じゃなくって、異世界コミュニケーションだ!

 「これは私達にとっては小さな一歩だが、きっと大きな可能性に辿り着くだろう。」とか、心の中でドヤ顔な感じにつぶやいてみた。

 まぁ、共通言語があればこんな苦労はしなくて済んだのにな~。と、ぼんやりと遠くを眺めながら・・・。


 門兵のアインの姿を改めて見つめた。

 前の世界で判断すれば、30歳程で小太り、身長は170cm後半くらいだろう。

 服は肘と膝に当てがあり、装備は皮鎧で腰には長剣(ロングソード)短剣(ショートソード)を携えている。 顔はアゴ周りが肉付きが良い瓢箪型。円い輪郭は温和な感じを受けるが、垂れ目の眼光は強かった。流石は兵士という所だ。


「キアル、ヴィ、エスタス、バンディタ(ケガ)。デ、キエ、ヴィ、エスタス?」<訳:どうして怪我をしているんだい。どこから来たんだい>

 兵士は私達の成りを見渡した後に質問したけど、私には何を言っているのか分からない。

「きある、び、えすたす、けが。で、きえ、び、えすたす」

 クレハがオウム返しで言葉をなぞると、「けが」という言葉が聞き取れた。

 もちろん日本語ではなくてこの国の言葉。『怪我』という言葉を何時知ったのだろうか?

 考えるのは後回しだ。聞き取れた単語から怪我の心配をしているのだろうと予想してみる。私が同じ立場ならそうするだろうから。

 とりあえず「獣に襲われました。助けてください。」と訴えてみた。残念ながら日本語で・・・。

 兵士はよく聞こえなかったと頭を掻いていたので、もう一度訴えた。ちょっと棒読みだったかもしれなと内心焦りつつも。

 やっぱり言葉が通じなかった様だ。アインは質問を変えた。

「キエ、エスタス、ミアジ、ゲパトロジ(リョウシン)?」<訳:両親はどこにいる>

「きえ、えすたす、みあじ、りょうしん」

 クレハがオウム返しで言葉をなぞる。今度は「両親」という言葉が聞き取れた。・・・となると、親は何処だ? と聞いているのだろう。

 親は兎も角、保護者無しで子供が草原を歩いてきたというのは異様な光景だと思う。とりあえず聞き取れた単語を交えて答える。

「ノー、ゲパトロジ(両親)」

 こう言ってみたが伝わっただろうか。

「ネ、ゲパトロジ?!」

 アインは驚いて言葉を返した。そして私の肩を軽く叩いてから

「アテンデュ、イノメンテ」<訳:少し待て>

 そう言ってアインは守衛室へ戻って行った。

 何を言ったのか分からないが、手招きしている訳ではないので、とりあえずこのまま待つしか思い付かなかった。


 待ちながら言葉を考える。先ずは「No」は「ネ」と発音するのかと改めた。

 そういえば・・・

「言葉を繰り返していたけど、クレハは言葉が分かったのかい?」

「ううん。ぜんぜん、わかんない。でも、ことばをまねれば、わかるかと、おもった、から」

 なるほど、と思った。

 文法とかそういうのは考えずに、片言になるけど分かる言葉を話すだけでもなんとかなるのでは、そういう気がしてきた。


 少しすると守衛室から嫌な予感しかしない音が聞こえてきた。

 木を叩く音、紐状の物が床を引きずる音、鎖の様な金属が絡まる音、ドスンという重い何かが床に置かれた音。

 思わず、手かせ足かせを付けられた自分達の姿を想像してしまった。拘束エンドだ。中世の世界観だと、きっと処刑か奴隷行きかと寒気がしてくる。

「逃げようクレハ。このままだと・・・」

 慌てて、左腕でクレハの手を引こうとすると、逆に間接を極める様に抱きつかれた。

「だめよリト!」

 クレハは睨みながら腕を引っ張った。



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