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魔王の転生先は日本(ファンタジー)でした。  作者: くろきしま
01章 魔王様は劣等生
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第4話 魔法が使えない魔王様

 無能、僕はこの世界でそう揶揄され続けている。

 新世代において、魔法が使えないという事はそれだけで存在価値を失うのだ。


 そりゃあ魔王としての自負なんて早々に砕かれたね。

 魔王のくせに魔法が使えないとか、草生えますわ。


 そんな僕が使えるのは身体強化のみ。

 ただ魔力で全身を補強するのだから、魔法ですらない。


 こんな僕に居場所なんてあるわけもなく。

 また、話しかけてくる物好きな人がそうそういるわけもない。


 だからバッチリクラスに浮いている。


「この世に魔力が満ちるようになったのは、4カ国同時マイクロブラックホール実験が原因とされている」


 今は現代史の時間だ。

 山中昭夫先生、無精髭を生やした50代の男性教諭で元国体選手だったらしい。

 だが、山中先生を始めとした教員達は魔法が使えない。


 魔法を扱えない教師たちは魔法自体を教えられないのだが、魔法の観測や事実関係、近年の研究内容を僕達に教えてくれている。

 僕達の時代において、現代史の価値は非常に高いと言えた。


「結果としてこのマイクロブラックホールの実験は失敗した。佐伯、何故だかわかるか?」


 指された女子が立つ。


「4カ国間での相互干渉が発生し、次元が裂けたとされています」

「よろしい。その説はあくまで仮説に過ぎないという事を念頭においてもらいたい。次元が裂けた事で別の次元と接触し、向こう側に存在していた魔力が地球に流れ込んだというのが現在の定説となっている」


「そして、それがきっかけとなって君たち新世代は誕生した」と山中先生は付け加えた。


 世界に魔力が満ちた事で、胎児に何かしらの影響が出たと考えたんだと思うのは当然の発想といえた。

 山中先生が「ここまでで何か質問はあるか?」と尋ねると、一人の生徒が手を挙げた。

 学内カーストでは上位に位置している何とかって人だ。

 こっちをチラチラ見てはニヤついている。


「同世代の中には新世代じゃない奴もいるみたいですけど?」


 クラス内でクスクスと笑い声が漏れる。

 もしかしなくても僕の事だね。

 魔法がつかえない僕は無能以前に『新世代』の枠にも入っていないらしい。


 ま、お茶受けの和菓子くらいの価値はあるみたいだけどね。

 僕は全く気にしていなかったけど、山中先生はそうじゃなかったようだ。


「小島は『新世代』の定義を理解していないな」


 眉間にしわを寄せて放った山中先生の一言に、クラスは静まり返った。

 小何とか君も顔が引きつっている。

 いや、ビビるくらいなら言わなければいいのに……。


「国際的な『新世代』の定義は『魔力を保持している』その点のみだ。そして現在は出産時に魔力測定と区市町村に設置されている各役場への報告義務が、法律によって定められている」


 へぇ、そういえば悠が生まれた時には色んな検査してたな。

 僕と悠の年齢差は1歳。

 つまり、1年で法整備を国はこなしたという事だ。


「そして、現在生まれてくる子供は全て魔力を保持していることが分かっている。つまり、この三知之島にいる子供は例外なく『新世代』というわけだ」


 そして、山中先生は僕達を眺め改めて釘を刺した。


「お前たちは上の世代にはない力がある。だがその精神は年相応だ。無駄に敵を作るなよ」


 ダメだよ山中先生。

 反発したくなるのが若さなんだから、そんな事言ったら……。


「魔法一つまともに扱えねぇ奴が敵に回っても怖かねぇよ山中先生」


「そうだそうだ」


「そう言えばこのクラスにも魔法が使えない奴がいたなぁーー」


 案の定、クラスがざわめき出した。

 主に矛先が僕なのが辛い。


 ほらぁあ!!

 なんか同調して面倒臭い流れになってるぅー!!


 山中先生は顎に手を置いて、少し思案したように見せると一言。


「なら試してみるか?」などと口走りやがりました。


 え? 先生が相手をするって事だよね? 偶々小何とか君との台詞が繋がっただけですよね!? 僕を巻き込む流れになってません?


 小何とか君は唖然とした顔をするとゲラゲラ笑い始める。


「ぎゃはははは、山中先生ナイスっす! やっべ、モロ腹きた! 間違いなく今世紀最高のギャグっすわ」


 あ、小何とか君の中で僕と戦う事になってるわこれ。

 皆も同調して笑う。

 んー、これが空気を読むっていうスキルかぁ。

 前世でも持てなかったわぁー。


「喧嘩、武力、暴力。言い方は数あるが、魔法が使える人間が使えない人間に喧嘩で負けるはずがない。その甘えた・・・考えは早々に捨てた方が君のためだぞ」


「――――――――――――」


 あ、これ完全に小何とか君ブチギレたね。

 僕には分かるんだ!


「あぁ、私が相手をするのは体罰問題になってしまうな。すまない、君の陳腐な価値観を正せない先生を許してくれ」


 あ、ついにあからさまに煽り始めたよ。


「……いいっすよ。やったりますよ。なぁ比良坂!」


 え、何で僕の名前覚えられてるの? 接点ないよね?


 みんな僕の返事を待たないでゾロゾロと外に出ていった。


「……え、付き合わないとダメなの? 勉強しようよ」


 知らない間に学級崩壊してました。

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