第8話 日常は大変です
ふと、目が覚めて暫くそのまま身体を投げ出したまま無心で………
遠くから微かに音が聞こえて来る。夕梨が朝の支度をしているんだろうな。
彼女は頑張っていると思う。いきなり異世界に飛ばされて大自然の中、現代日本の女の子が中々順応するのは難しいとお思う。
不自由な何も無い世界。無いからどうにも出来ないとは言え、本来は食料一つ、調理一つトイレや風呂一つ取っても困難で不自由な環境。
慣れてしまえば。とは思うが生まれた時からならいざ知らず、あの世界を経験しては難しいと思うのに、かなり順応してるとは思う。女性にはかなり辛いんじゃないかと。
彼女は元々、体力も無いから肉体的にも辛いと思う。
様々な技術が進歩し便利な物で溢れ、物を消費するだけ。金さえ有ればどうにでもなる世界。
ここは物が無い。智恵と体力と気力で乗り越えて行くのが自然界だ。
当然、俺も努力はしているけど、その中で何とか工夫して好環境を作ろうと努力している。俺に美味しい食事と住み良い環境で生活が出来る様にと一生懸命だ。
誰も居ないのに女性として綺麗で居ようと身だしなみにも注意しているし、俺の前でだらけた姿なんて見せないのも凄い。
ただなぁ、そんなに頑張って大丈夫かも心配になる。夕梨は多少、俺至上主義みたいな所が有るから俺の為にって感じなんだろうけど………それで彼女が疲れてしまっては本末転倒だしな。
ま、色々経験して分かっていく事だから見守るしか無いのかな?女性だから男とは違って繊細な部分もあるだろうから注意して見ておかないと。ちゃんと約束通りに言葉にもして貰って,不満や不安を溜めない様に。
俺自身はどうだろう?うん。至って平常運航だ。精神が揺れる事も無いし、常に冷静に対処出来ている。ハズだ。と思いたい……けど
最近、夕梨の頑張りも有ると思うけど………可愛くて、乱される。うまく自分を制御出来ない。こんな事は今まで生きて?記憶の有る中で初めてだ。
交際もしたし肉体関係も有ったけど、揺さぶられる事は無く常に自分の制御下だった。
でも夕梨には少し歯止めが効かない。夕梨が気になる、目で追う、考える、欲しくなる……これは普通の事なのか?それとも考え過ぎでもっと思うままで良いのか?どうなんだろう。
分からない以上はこれも自分で注意しながらだな。夕梨を困らせたり傷つけたり不安にさせたり負担をかけたりしない様にだな。
それもだけど夕梨には何かが有るんだろう。それは能力も含め妖精達の反応でハッキリしている。
だけどそれが何かまでは分からない。だからって放置も良く無い。
あの黒いヤツの正体も理由も分からないけど、妖精達は知っている。守ると言ったんだから正体も理由も分かっているって事だ。
夕梨の殺害じゃなく奪う?何かに利用する?って事なんだと思う。誰が何故?材料が少なくて分からないが黒いヤツは恐らく人間じゃないな。
まず俺に忠告した様に、この世界に魔法は存在するけど衰退している。なら、異世界に表れて転移させる魔法なんてモノが存在していいたとしても使えるかは怪しいだろう。
勿論、魔法以外でってなると人間には無理だ。じゃ、人間以外の存在で、精霊が自分達から協力しに来る程の相手、まぁ夕梨の存在がそれだけ精霊にとって大切って事も有るだろうけど。
そのどちらかだけど、人間じゃ無くあんな力を持った存在に俺が勝てるか?難しいから妖精達が来たんだろう。
一度は討ったけど多分、刀の力だ。こいつはオッサンに譲られた代物で妖刀村正の内、世に出ていない一振りを俺が託されただけだ。魔を払うらしいとは聞いていたけど……
いや、まあ問題は他にも有って、妖精達が夕梨の保護しか考えてないことも一つだ。
俺では勝てない。だから夕梨を保護する。でも俺の事は放置。うーん………夕梨だけを精霊界で保護した方が確実じゃないか?連れて行けない?又はこの状態で保護する事に意味が有る?どんな意味だ?
放置なのに俺の秘密も仄めかす。大層な感じで。俺自身が勝てなくても問題が無いってか?でも、それを夕梨が許すとも思えないから精霊も考慮するだろうな。でも、放置と言うか問題無い様な振る舞い。
なんだか違和感と言うか矛盾と言うか………
む?俺が勝っても勝てなくても結果は変わらない?世界にとっても妖精にとっても夕梨にとっても。そんな事が有るか?精霊は保険で俺と"ヤツ"が戦う事に意味が有るのか?
まず、夕梨が狙われていて精霊が来た。俺達2人に配慮している風だが、俺は放置。俺になにか有れば夕梨が困る前提でもそうだとすると、俺が勝っても負けても結果に変動無いから。あくまで精霊は保険。だとすると、俺と"ヤツ"の接触が目的か?
有り得ないとは思う。普通なら。
なんか………さっきから、夕梨がドアの隙間からチラチラこちらを覗いているのが視界に入ってる………このカワイイ生物はなんだ?無性に抱き締めてしまいたいぞ!
「こっちおいで夕梨」
「………う…うん………ごめんなさい………」
「どうしてあやまる?」
「の………覗いて………」
お互いが落ち着く時間が必要だと感じ、抱き締めて夕梨の匂いを嗅いで自分を確かめた。
今朝は怠くて起き上がれないかと思ったけど………がんばってみた。
だって、その……結局昨日も可愛がってくれたの。だけど……第2ラウンドが始まっちゃって………途中から意識無くって。ごめんなさい。
嬉しいんだけど体力無いから、朝がちょっと辛いの………
パンツもナイトブラもパジャマも脱ぎすててあったから、寒いけど急いで脱衣所に行って洗濯物に。
そのままシャワーを浴びて温まる。寝汗も落として髪の毛もトリートメントでお手入れしてタオルを巻いてお湯に浸かる。あったかーい。オレンジも半分浮かべて。
こうやって1人の時は考える様にしてるの。
なんか………毎日思うんだけど、零が激しくなってるって言うか。や、嬉しいの。求めて貰えるのは。でも何だかこんな感じで良いのかなって。
お互いにやる事はやってると思うから、良いとは思うの。学生じゃ無いし、異世界だし、2人だけの生活なんだから。
ただ………日本人だった質か、背徳感?罪悪感?なんだろ。お父さんとお母さんは海外育ちで海外暮らしだからそうでも無いけど、私は生まれも育ちも日本だから。日本人って余り性に対してオープンじゃなくて閉鎖的とか秘匿的な感じで、ダメです!みたいな感じでちょっと………私が小心者なの?内向的でも有るわね。
考え過ぎ?もうちょっと思うままに求め合っても良いのかも。若いのだし。
他にも考える事は有るからエッチは置いといて、私の能力?色々試すとしても、願えば現実になるのは理解出来たわ。意味不明だけど。
これってどんな意味なのかな?何で私にこんな力が宿ってるの?異世界だから?最初、ティルーネは母神様って言ってたけどなんの事だろう?
取り敢えずのぼせるので出て身体を拭いて保湿クリームを塗るの。下着は黒の上下でお花のレースが可愛いの。
薄いブルーのブラウスを着て膝上のプリーツスカートは白ね。タオルで塗れた髪の水気をしっかり取って、横の髪は編んで後ろは纏めてリボンで結ぶ。
キッチンに行って朝食の準備ね。
さっきの続きだけど、私って何なのかしら?大地のちから?が使えて、狙われてて、妖精が守ってくれてる。サッパリ分かんないよ。
じゃあ零は?数千年の記憶が有って、時間も世界も飛び越えて生きて来た。魔法も使える。カッコイイし優しいし、背も高くて身体も凄い!何でも知ってて出来ちゃう。何故か刀も持ってる。完璧じゃない!!
じゃなくて、そんな零は狙われて無い。おまけに尊主様?って呼ばれてた様な…………あれは何だろう?禁則事項って何?私の頭じゃ分からない事だらけ!
でもでも!おバカでも、考える事だけは放棄しちゃダメだとおもうの。
ちゃんと考えて、零の支えにもなって、自分なりの答えも出して、一緒に生きて行かないと只のお人形さんかお荷物だもん!そんな風に思われたら嫌だから。
それに…………そう、遠くない未来にママになってるかも知れないし!キャーキャー
でも現実問題として有り得るから、私もちゃんとしないと。
ここで零と2人で育てて行くって事だもん!私で大丈夫かなぁ?でも…………逃げられない。頼る人も居ない。
っと、パンを焼いてる間にスクランブルエッグとサラダをワンプレートにして…………鶏さんと牛さんに挨拶しなきゃ。
「みんな、おはよー!あ、ちゃんと返事くれるんだ!開けておくから帰って来てねー」
で、初めてだけど牛さんのお乳を搾るの。こう?痛いの?こんな感じ?あっ、こうね!わかったわ。ありがとう。もうちょっと貰うね?
鶏さんの部屋を見て卵を拝借~4つあった!宝探しみたいで楽しいかも!ウフフ…………私の楽しみ。
家に入ってキッチンへ行き、オレンジ。苺。ミルクでジュースを作ってパンをお皿に盛る。今日は即席のマーマレードね!
身だしなみを姿見で整えてリップだけ塗る。さ、零の様子を見に行こう。
部屋のドアを静かに開けると零は起きていて、何やら難しい顔で考える事をしているみたい…………声、掛けちゃマズイかな?ダメだよね?零に頼ってばかりだし、考える時間位ないとね?夫婦でもプライベートは必要だもんね。
で、暫くモジモジしていたら気付いてたみたいで、呼ばれて抱き着くの!うーん。零の匂いって落ち着くなぁ~。なんて思ってると私の匂いを嗅ぎはじめました!恥ずかしいです!私臭くないかな?大丈夫?臭い女と思われたく無いんです!ど、ど、ど~しよ…………臭かったら。
またもやモジモジしてると右腕で確り抱かれて動けなくて、左手は…………お尻揉まれてます。。。
あ、あの零さん?え、嫌じゃないの。嬉しいけど……朝食が用意出来たから。夜まで我慢してくれたら…………してくれたら頑張るから。ダメ?うん。じゃぁ、ご褒美ね。ちゅ!
さてさて。漸く朝ご飯です。
「もぅ…………冷めちゃった。嬉しいけど……やる事出来なくなっちゃうよ?」
「いただます。うん、そうだな。何だか夕梨が可愛くて歯止めが効かなくてね。」
「あ…ぅ……ありがとう……今日はお洗濯と……お掃除するの」
「俺は昨日に引き続きだね」
朝食の感想を貰ってから、それぞれ動くの。私はまず、お布団を干してシーツのお洗濯。服やタオルのお洗濯。各部屋のお掃除。お茶休憩してまた掃除。キッチンを片付けたらもうお昼前。
ふぅ~お昼はどうしようかな?あっ、昨日考えた親子丼!卵スープも付けて。よし!
なんか………手抜きみたいで心苦しいから、お茶を飲みながら零にひっついてイチャイチャしてみたら嬉しそうだったから、正解……なのかな?
食器を片付けてからお風呂掃除!掃除の最後はリビング。チュカレタ~
畑に行って、足りない物を考えながら収穫。
小屋の前に行って、牛さん鶏さん帰っておいでー……帰って来たわ。牛さんは軽くブラッシング。鶏さんは少し構ってあげて終了。
服が汚れたからワンピに着替えてからお茶の時間。夕飯はどうしようかな?
零は何かリクエスト有る?え、私?夜にね。じゃ私が決めるね。
零は倉庫で糸とゴムの製作を頑張ってくれているから、美味しい食事を作りたい。
猪肉は豚肉に近い赤身肉だから、スライスして生姜焼きはどうかな?味噌生姜!キャベツも沢山にしてニンニクのチップも。
スープは……玉ねぎと溶き卵の中華スープかな?
明日のお昼はカレーにしよっかな?ルーは今晩から作らなきゃね。
晩御飯の生姜焼きはまずまずの出来上がりだった。豚肉には敵わないのは仕方ない。
それと糸が出来たって!糸ゴムも!色々と楽しみ。
今日のお風呂は湯舟にハーブを入れてみたの。香りも良くて気持ちいわね。
一緒に仲良く入って湯舟で肩の揉み合いこ。こういうスキンシップ好き!
少しリビングで寛いでから寝室へ。頑張ったもん……約束だから。内容は秘密です…………
台風去りましたけど、被害が心配ですね…………