レンズの先に
鮮やかな、様々な色の願い。小さい体で願うのは、これまた小さな願いだったり。微笑ましい、大きな願いだったり。
『シャーペンがほしい!』
『いろえんぴつがほしいです』
『おっきなクマのぬいぐるみ!』
『ケーキやさんになりたい!』
『シャチョーになりたい!』
『かくれんぼがうまくなりたいです!』
一つ一つが大切なもの。愛おしくなる純粋な願い。子供達の想いに、自然と笑みがこぼれる。
「七夕かぁ・・・」
夕暮れ空を見つめた後、ポケットのスマホを取り出す。
「・・・君らしい、お願い事だね」
嬉しいような、少し寂しいような。すんなりと笑顔にはなれなかった。
「先生も、今日は彼氏さんと?」
「ええ、まぁ・・・ 園長先生はお孫さんとですか?」
話を振ってあげると、とても嬉しそうな笑顔を見せた。ああ、こんなふうになりたいなぁなんて思わせてくれる。そんな笑顔。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
部屋を出る前にふと思いつき、少し情けないけどメモ帳を一枚切り取り、ボールペンを手に取った。
「結婚・・・ いや、ダメダメ」
本心だけども。書くどころか言ってやりたいけども。・・・言ったところで、君はねぇ。うーん・・・ まぁ、これでいいか。とりあえず。願いすぎてしまうほど、子供でもなくなったんだし。
「・・・よし。できた」
短冊なんて用意してないから。願い事を書いた紙を、テーブルの上に置いて家を出る。君に、会うために。
『今日、天の川。写真、撮りに行こう』
「・・・なんだそれ」
なんとなく、この言葉を口にする君の顔を想像したらおかしくて笑えた。
きっと君は。子供のようにはしゃぐよね。私には価値が分からない高そうなカメラを片手に、夜空ばかりを見つめるんだろうね。私もたまには撮ってよ。・・・そんなこと、いつかの君に言ったら。
「人は仕事で撮ってるから大丈夫」
・・・そのあと怒ったことも、もう忘れちゃったかな? そんな君なのに、好きなには。きっと君がそんな人だから。
「・・・今日は七夕だよ」
薄暗くなった空。少しずつ輝きを放ち始める星々。これから君と見る空。
「・・・好きだよ」
願い事、口にして。ゆっくりと、君の元へと歩いていく。
『来年も、一緒にいれますように』
終・・・?