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「…………」
吐き出した吐息は水蒸気となって空中に立ち上り、瞬く間に四散していく。そんな光景を、どれくらいの間見ていたのだろう。連日の絶食で意識はぼやけ、加えてこの寒さと、しばらく前から止まらない頭痛のせいで、もうそんなことすら思い出せない。何故もっと慎重に食料を配分しなかったのか。薪を大切に使わなかったのか。そんな、今更どうしようもないことが止め処もなく頭をよぎる。
霞む視界。靄のかかった思考。止まらない頭痛。濃い水の匂いと、耳に届く微かな音から、外ではまだ雨が降っているのだろうということがぼんやりと分かるものの、状況を改善する役には立たない。仮に、何か役に立ちそうな物音を拾ったとしても、この動かない体ではどうしようもないだろうが。
「…………」
再び、息を吐く。白い煙が立ち上り、四散する。息を吐く。煙は立ち上り、すぐに四散する。繰り返されるその光景を何とはなしに眺めているうちに、次第に意識は闇に飲まれていく。十年ばかりの人生の中で、思えば死をこれほどまでに身近に感じたのはこれが初めてだ。このまま横たわっていれば、あと一日――いや、早ければあと数時間もすれば、飢えか寒さによりそれは僕のもとに訪れるのだろう。
――僕は、どうやら親に捨てられたらしい。
実に笑える話だが、今更になってそんな事実に行き当たる。僅かな食料と薪を渡され、戻るまでここで待てと言われた時点で気づけそうなものだ。素直に従った僕は、結局のところ莫迦が付く程度にはお人好しなのだろう。
「……?」
不意に、春の訪れを告げる梅の花のような甘い香りが鼻腔をくすぐる。
いつの間にか閉じてしまっていた目を開けると、ぼやけた視界に、何か光るものが見えた。
でも、それが何かを確かめる前に、意識は、沈み込んでいく……




