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最強文豪-ただの作家に興味はない-  作者: 倉敷(クラシキ)
9/20

命懸けの脱走劇4

夕飯。それは一番ゴージャスであるべきだと我が家では決まっていた。





朝はトースト、昼は軽く食べ、そして夜はしっかりと食べる。





きっと、両親が共働きだったら夜くらいしかしっかりと食べることができなかったのだろう。食べ盛りの時にはとても有難い話であった。





それから何年も経過して、俺はほとんど夕飯を食べなくなった。酒さえあれば少量のおつまみと共に腹は膨れる。それで十分満足であった。







「貴生川さん、遠慮しないで食べてね!」







そこに広がったのは大量のご馳走。





ローストビーフにアワビ。伊勢海老に恐らくキャビア。


贅沢の極みとはこういうことなのだろう。





見ただけでお腹いっぱいというか気持ち悪い。


サギは葡萄酒をゆっくりと飲んでいる。何とも絵になる光景だ。







俺はローストビーフを一枚食べてみた。


・・・思ったよりくどくなく美味しい。


きっと何年も前の自分なら全て平らげてしまうだろう。


しかし、今は二、三枚が限界だ。







「貴生川さん、食べたいものあったら遠慮せずに言ってね」






そう微笑むサギを見て一言






「寒いし、雑炊かな」






と呟くと少しびっくりした顔をしてそして大きく笑い出した。


俺、何か変なこと言ったか?サギは涙を流して笑っている。







「あはは、雑炊ね。わかった!貴生川さんは本当に面白いね」






どうやら面白かったらしい。








「いいよ、雑炊を作らせよう。君!彼に頼んできて!」







サギは近くに居た給仕の女性に手だけで合図をする。







「そういや先生は?」







俺は林部先生が居ないことに気づく。


サギはこちらに目を向けることなく葡萄酒をクルクルと回した。







「ボスは今日、任務があって参加できないそうだよ」






「そうか・・・」







サギからしたら林部先生はボスなのだろうが俺にとっては病んだ時に助けてくれた医師の林部先生だ。







「何?ボスのこと気になるの?」







サギは相変わらず林部先生のことを話すと不機嫌になる。理由はわからない。







「気になるっていうか、先生も一緒にご飯食べられたらお話できたのにな」






「本当に、貴生川さんはお人好しというか純粋というか・・・」






「そういや先生は、いつからここのボスをしているんだ?」







ふと俺はボスとしての先生が気になった。






「ボスは俺が十四の時に就任したね。前ボスが亡くなって、就任したんだ。それから今までだから八年は経過しているかな」







先生は俺が病院に通う前から、裏社会の住人ということは、少なくとも俺はずっと騙されていたのだなと思うと少し辛くなる。





でも、先生は俺を回復させてくれたのだ。





それは紛れもない事実であり、俺は先生を嫌いになることができなかった。






というか、サギが十四の時に就任して八年が経過しているということは・・・







「お前、今、二十二?」







「え?そうだけれど」








俺はサギを二度見する。


こんな高校生みたいな見た目で、二十代ということが信じられなかった。






俺の方が確かに年上だけれど、少し腑に落ちない。





これが悔しさなのか何なのかわからないが、少しムッとする。


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