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最強文豪-ただの作家に興味はない-  作者: 倉敷(クラシキ)
19/20

今世紀最大の危機1

貴生川がサギの元を去って一週間が経過した。


サギは貴生川の前では元気そうに振舞っていたが思っていたよりも傷が深くベッドから起き上がれなくなっていた。


枯草は、そんなサギの為に献身に尽くし、また自分がサギと出会った時のことを考えていた・・・。







こんな寒い日に僕は生まれた。皆が持っている右腕を持たないまま。





その姿は余程世の中の人間には気味悪かったのだろう。両親は酷く落ち込み、


また世間の目は冷ややかなものであった。





僕が小学生になったある日、両親は僕を巻き込み心中を計った。





もう、限界だったのだろう。





結果、僕だけが生き残り孤児となった。





そこから待っていたのは、地獄の日々。






孤児院で僕のように心に傷を負った子どもと仲良くなれるかと思ったら、その子ども達は人との接触を酷く恐れ、攻撃性を持つようになり、カースト制度を取るようになったのだ。






簡単に言うと差別と虐げの負の連鎖である。






その中で僕は片腕が無いのと小さいからという理由で底辺に位置された。





最初の反抗は無意味に終わり、自分は負け犬として惨めな気分を背負ったまま生き続けた。





人生はこのまま終わると思っていた。





しかし、転機が起きた。





孤児院の子ども達は全員殺されたのだ。





原因は孤児院の経営者が裏社会で金を借りて返さなかった為。





毒ガスが撒かれ、僕も吸ってしまい死にそうになっていた時に今までの人生が走馬灯のように流れた。








なぜ・・・なぜ僕がこんな目に?








疎まれ、蔑まれ、虐げられたのは片腕がなかったから?





どうして?僕はそんなに悪いことをしたの?









どうして?どうして?









どうして!












朦朧とした意識の中で、僕は包丁を持ち暴れた。その時に湧き出たのは間違いなく「怒り」であった。この世の全てに対する絶望を通り越し、憤怒の想いは無差別に人を刺していた。







もう死んでいる孤児院の子どもも、毒ガスを撒いた大人も、刺して刺して刺して一滴の血も残らないように刺した。







そして最期、自分に包丁を突きつけた時に


あなたが、現れたんだ。






サギ様に連れて行かれ、屋敷に到着した時には義手の話が出ていた。







「この腕が、君に光を与えるとは限らないよ?」







サギ様はそう言ったが、僕は力が欲しかった。






誰にも負けない、強靭な金属の腕。







手術は死ぬほど痛かったし、リハビリも大変だったけれど、今までの人生に比べたら痛いもの等何もない。








そしてようやく手に入れた腕はサギ様の言う通り、光を与えてはくれなかったが後悔はしていない。







でも、この腕をくれた彼は間違いなく光であった。








僕の唯一の光。








その光には感情がなかった。








いつも無表情で、笑えばきっと素敵だと思っていた。でもいつか自分がその役割を果たすのではないか、そう思っていた矢先、サギ様は「本」と出会った。






女給仕が持っていた本。







ただのきまぐれだったのだろう。







しかし、彼は大きく変わった。感情豊かになり、よく笑うようになったのだ。





それは嬉しいことであったが、同時に強烈な嫉妬心も生み出すこととなった。








自分にとって特別な存在に特別ができたのだ。






それは自分は特別ではないという事実を突き付けてくるのと同じで。






悔しかった。妬ましかった。







でも、相手は本。ましてや作家。





表社会の住人だ。サギ様の傍に居れるのが自分だと信じていた。






だから貴生川が来た時は許せず、脱走を図る奴を殺そうと目論んだ。








今でも奴は嫌いだ。






でも、きっとサギ様の願いを叶えられるのはあの男だけなのだろう。







「彼草様!」







部下が叫びながら駆けて来た。







「どうした、騒々しい」








僕が注意しても部下は焦る気配を止めない。







「敵襲です!」







「・・・!」







僕はサギ様の元へと駆け出した。


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