俺の美食日記
・月曜日
澄み渡るような快晴。日差しが眩しかった。
今日の御馳走は、なんだか地味な色味をした単色の蝶。結構、小ぶりだな。
両手で掴み、その腹に齧り付く。
その身は新鮮そのもので、溢れる体液はジューシーな旨みを迸らせた。その割に淡白な味で、量も少なかったから、評価は星一つだな。
明日は何を食べようか。
・火曜日
相変わらずの晴天。巨大なホコリみてえな入道雲が空を行く。
今日の御馳走は、鮮やかな緑色のバッタ。なかなか大きかったな。
その背中に齧り付く。
バリバリと音を立てて咀嚼する度にバッタは蠢いたが、そんなものは新鮮さの証明だ。量も味も良かったが、不快な雑味が気になったから、評価は星二つか。
明日はもっと旨いものに出会える気がする。
・水曜日
久しぶりの雨。草木の一本一本が濡れそぼって活き活きとしていた。
こういう日には特別な食材に巡り合うものだ、と相場が決まっている。
だというのに、どういうことだ!蟻の子一匹すら居やしねえ!
…そんなわけで今日の御馳走は無し。
明日は旨いものが食えるといいな。
・木曜日
昨日とは打って変わって、雲一つない快晴。
今日は旨いものに出会えるだろう。そう思っていた矢先だった。
何だってんだ、あの野郎は!あんな爪で掴まれたときには最後、俺の身体は粉微塵だ!
あの空飛ぶくそったれに追われちまって、食事どころの話じゃなかったぜ、畜生め。
てなわけで、今日も御馳走は無しだ。
明日こそは旨いものを食ってやる。
・金曜日
天気なんて覚えてない。多分、晴れじゃないかな。
今日こそは、と意気込んでいたんだが…もっと素敵なものを見つけちまった。
そいつは「女」。
艶のある肌。一目で尋常ではない美人だと気付いた。こいつは本物だ。
必死でアプローチしてみたら、彼女のほうからも食事のお誘いが。おいおいマジかよ。
彼女を送って行くと、そこで別の男に会った。…ヤツは女を横取りする気らしかった。
だが俺の自慢の鎌を見て、一目散に逃げだした。どんなもんよ?
彼女はきっと俺にゾッコンだな。
明日が楽しみだ。
・土曜日
曇りのち晴れ。湿った風ですら心地よかった。
ランチの時間には晴れ間が広がり、絶好のお出かけ日和だ。
今日の御馳走は、黒光りする平たいやつだ。
彼女と一緒だったから、いつも以上に、いや、最高に美味しかった気がする。
別れ際に「明日も会いましょう」なんて言われちまった。
おいおい、ちょっと気が早いんじゃないか?嫌な気分なんて、するはずもないけどな。
明日は俺が食われちまうかもな、なんて。
・日曜日
きっと今日で、この日記は最後だ。だから、予定だけでも先に書いておくことにするぜ。
雲間から日が差し込む、とても過ごし易そうな日だ。
今日、俺は彼女にプロポーズをするつもりだ。
失敗したら…、そうだな。またいい女と旨いものを探しに行こう。
思いつくままに書いてしまったこの作品。皆さんはどう感じたでしょうか?
ぜひぜひ感想などをお願いします。