魔術師団長の正体
単身王都へと走って移動した俺は、王城の敷地内に入って通りかかった適当なヤツに魔術師団の研究室の場所を尋ねた。
「魔術師団の研究室ならあちらの方角ですよ」
王城内を見回っていた騎士がそう答えた。なぜか気まずそうな表情で俺から顔を背けていたが、やはり髪は下ろしてきた方が良かっただろうか。とはいえ王城に髪で顔を隠すような姿で来るのも無礼と取られる可能性はある。
黒帝は種族としては最上位に位置するものの、地位という点ではそれぞれに由来する。俺は一介の冒険者なので地位としては低いのだ。もちろんその気になれば相応の地位を獲得できるのだろうが。
スヴィエラが言っていた通り、魔術師団は城を挟んで騎士団の詰め所とは逆方向に駐屯しているようだ。しかし騎士が王都や城内を警備しているのはわかるのだが、魔術師団はそういった任務がないのだろうか。
研究室もあるようなので研究という仕事が含まれているのは確実だろうが。
騎士団の方は土剥き出しの訓練場や白く四角い宿舎などが見受けられた。
魔術師団の方はどうなのかというと、アパートを連想させる宿舎がいくつか奥に建っているのが見え、一応土剥き出しの訓練場はあった。しかし建物はたった一つ、平たい円柱のような形状をした施設のみだった。天井には短い煙突らしき突起がいくつも出ていて、その内いくつかから煙が上がっている。しかし『魔力感知』によると下に人がいるようなので、地下に研究施設を伸ばしているのかもしれない。
研究施設と思われるその建物の入り口へ近づく。
「ようこそお越しくださいました。団長が中でお待ちです」
左胸に国旗と同じ紋章を象ったバッジをつけたローブを着込む魔術師が出迎えてくれた。スヴィエラのように帽子を被る必要はないようだ。
「通例となりますので一応魔術師団の活動についてご説明させていただきます」
俺を出迎えた男性の魔術師は先導して歩きながら説明を始めた。
施設内はややファンタジー世界にしては異様だった。現代での研究施設を彷彿とさせるようなモノが多い。入り口もガラスの扉で手をかけず自動で開くようになっていた。そこら中から魔力を感じるので俺と同じような世界から来た者の知識をなんとか魔法で実現できないかと工夫した結果なのかもしれない。
入り口から入って左右の壁に沿って通路があった。内側が部屋になっているようだ。
「魔術師団は魔法による戦闘はもちろんのこと、数々の研究についても任されております。右手をご覧ください」
ガイドを務めてくれるらしく、先導しながら右手を指し示した。右を向くとガラス張りになった壁の向こうでガラス細工の生成が行われている。
「異世界から召喚された方々の異世界の技術を参考に、技術開発を進めています。異世界の中には魔法の存在しない世界もあり、しかし我々よりも優れた技術力を有しています。科学というモノらしいのですが、今壁に使われているガラスの薄さはその異世界の技術によって再現しています。しかしあの薄さでありながら強度を持たせるなど今の我々では不可能と理解しました。なので日夜こうして薄くて頑丈なガラス作りを行っているのです」
確かにこの世界のガラスが分厚いという印象を受ける。だがそれは当然というモノだろう。魔法などというあり得ない力に頼れない俺がいたような世界では、世界の常識に則って技術力を高めるしかない。それを魔法が使えるこの世界で実現しようと画策しているのだから、欲深いモノだとは思う。
俺がもし異世界人です、と名乗ったらこういう研究に手を貸す羽目になっていたかもしれない。だが俺には技術に関する知識が全くない。ガラスを薄く仕上げるにはどんな温度でどんな器具を使えばいいのか、と問われれば知るかと答えるしかない身だ。元は高校生なのだから、一般教養でもその程度。興味のある分野もなかったので車に必要なパーツだとか銃器の仕組みだとかも詳しく知っているわけがなかった。
そう考えると、未だに言っていないことは正解だろう。もしかしたら諫山先生辺りはそういった知識に深いのかもしれない。なら異世界人を名乗るだけの価値はあるだろうが。
「……魔力による補強がされてるな。元は砕けやすいのか」
ガラス板にすら魔力を感じた。
「その通りです。流石はカイト様」
上っ面な褒め言葉を聞き流しつつ、では常時ここまで魔力を施設内に供給させるだけの代物があるのかと考察する。まさかこれらの魔力を人が補っているわけではないだろう。あの魔術師団団長でも数日しか補うことはできないはずだ。それとも魔力量以外の素質があるのだろうか。スキルで言うなら『無限の魔力供給』のようなモノが。スキルによって魔力量ではなく魔力の回復速度を上げられるのだとしたら、有用ではある。基本使い切らないので適当に使っていても切れることはないのだが。
「……これだけの魔力を供給するのは大変そうだな」
装置なのか人なのかによって変わってくる。流石に『蠱毒』は生物にしか効果がないので、無機物を破壊したところでスキルは得られない。
「ええ、研究に没頭する余り徹夜で作業する者もおりますので、この施設は常時稼動状態なのですよ。次はあちらの研究ですが――」
男性は頷きつつ、しかし供給しているモノがなにかまでは言わなかった。まぁ当然か。秘匿するべき部分だからな。そう簡単に尻尾を出すとは思っていない。
そうして男性の説明を聞き地下で潜っていく。異世界でエレベーターに乗れるとは思わなかったが、機械に頼っている部分が少ないため到着した時の揺れがないことは利点だろう。ただ速度を出せるので独特の浮遊感がやや強めになっている。賛否両論ありそうだった。
「スヴィエラ様、カイト様をお連れしました」
エレベーターで地下最下層まで降りると、目の前に扉があった。この研究施設にそぐわない木の扉だ。中からは魔力を感じない、というよりは『魔力感知』を通さないなにかでもあるのだろう。部屋の中を窺おうとすると弾かれるような感覚があった。
男性が呼びかけてからこんこんと扉を叩くと、がちゃりと鍵の開く音がして扉が開いていく。しかし中に人影はない。
「入って」
部屋の奥にいるようだ。
「どうぞごゆっくり」
男性が深く頭を下げる。仕方なく部屋の中に入っていった。部屋の中は暗く灯りすらない。外からの光も開いた扉の方からしかなかったが、いつだったかモンスターから奪った『夜目』のスキルがあるので薄っすらと暗闇の中が見えた。ばたん、と背後で扉が閉まる。誰かが閉めたわけではなかった。部屋の主は奥のソファで寝転んでいる。
「あら、ぁ。見えてるのね、ぇ」
そこでスヴィエラが笑った。俺と目が合っていることからも、彼女もこの暗い空間で問題なく俺が見えているらしい。でなければわざわざこんな空間にする必要がない。
「……そっちこそな」
俺は言ってから、人とモノとが白んで見える黒い空間で、彼女の対面にあるソファへと腰かけた。
「せっかくだから、灯りを点けましょうか、ぁ」
彼女がそう言うと、頭上から光が灯った。なにもしていないように見えるが、おそらく魔法の関係だろう。……『魔力感知』ができればいいんだが、そのために封じてるのか。
明るくなった室内で、クリーム色のソファに相変わらずのだらしない格好で寝転んでいたスヴィエラが見える。
「暗いと色が見えないでしょう? 色は大事よね、ぇ」
「……『紫電』がそうだからな」
ただの紫色をした雷、ではないのだから色に意味があるのは当然だ。
「なにか飲む、ぅ?」
「……なんでもいい」
素っ気ない答えを返すとどこからかティーセットが飛んできてソファの間にあるテーブルに着地した。飛行する魔法はまだ知らないな。基本的にモンスターは魔法で飛ぶよりも翼で飛ぶ方が多い。モンスターを狩るだけでは得られないスキルもある。
「どうぞ」
ティーポッドが勝手にカップへと紅茶を注いでいた。こういう元の世界では不思議な現象が次々と起こるのが、魔女の部屋に相応しいように思える。
香りに変なところはないので一口飲んで毒などがないことを確認した。
「……で、わざわざこんなところまで来させる意味があったのか?」
出向いてくれればある程度楽ができたのだが。
「ええ。だって人目のつくところじゃ、『紫電』の説明なんてできないものね、ぇ」
それがどういう意味なのかはこれから語られるはずだ。
「『紫電』は本来、モンスターが持つスキルなの。それをなぜあなたが持っているかは、さっきのでわかったわ」
変に間延びをさせる口調をやめている。おそらく話が長くなるとぐだるからだろう。
「――あなた、本当はモンスターなんでしょう?」
そう、スヴィエラは聞いてきた。……正直なに言ってんだこいつという感想しかないんだが。一つずつ彼女の考えを聞いていくしかないか。
「……なんでそう思う」
「だってこの部屋は人の持つスキルを無効化するようになってるもの」
なるほどな。『魔力感知』だけを無効にするんじゃなく、人が持つスキルを無効化するのか。だからさっき俺が『夜目』を使って平然としてたことでモンスターのスキルを持ってると推測できたわけか。そして普通なら人がモンスターのスキルを持つなんてことがあり得ないから、俺が正体を隠したモンスターだと確信した。こんなところだな。
つまり目の前にいるスヴィエラは人の姿をしてはいるがモンスターであると白状したようなモノだ。
しかし、モンスターであるなら黒帝だというのは嘘だと思っていることになる。モンスターと種族は全くの別物だ。
「……じゃあお前は俺が黒帝だと嘘をついてると思ってるのか」
「いいえ。黒帝にモンスターを取り込む力はないけど、モンスターは人を喰らい吸収することができるもの。世間に出る前の黒帝と遭遇し、喰らった。その辺りでしょう」
彼女はモンスター、と言ったがおそらくは上位のモンスターのことを指すのだろう。俺が知るモンスターで喰ったらその力をモノにできる能力を持ったモンスターはいない。そんなことができるのはかなり上位のモンスターだけだ。
モンスターでなければ、それこそ俺くらいのモノだろう。
「しかしこんなところで同族、って言うと失礼に当たるわね。格上と遭遇するなんて思いもよらなかったわ」
彼女の中ではもう俺が『紫電』を使えるモンスターが黒帝に化けた存在だということは決定事項のようだ。勘違いさせておいた方が俺にとって都合がいいのかどうかだが、微妙なところだな。『紫電』について話す、と言うことで『紫電』を持つモンスターである俺が二人きりで話せる場所へと呼び出し、そして互いにモンスターであると明かす。それだけなら、『紫電』がどういったスキルなのか理解できない。理解するために来たというのに盛大な勘違いをかまされて「あなたがそのモンスターなんだから知ってるでしょ」と言われたら来た意味がない。『紫電』を持つモンスターの正体を知っているなら棲家にも心当たりがあるはずだ。そこへ俺が「元々黒帝で遭遇したから殺して奪った」とか言ったところで辻褄の合わない理由をつらつらと並べ立てられる可能性がある。
というか『紫電』は俺が異世界に召喚された時になぜか手に入ったスキルだ。なぜ俺が持っているのかは知らないが、それ以外に説明して納得させるそれっぽい根拠を述べるにはこの世界の知識が足りなさすぎる。
こういう時よく見かけるのは、そのモンスターであるフリをしてかつ試してやろうみたいな体でスヴィエラの話を聞くという手だ。だがモンスターのフリをして得られる利点がこいつの協力ぐらいしかない。研究に協力しないという条件なら俺が異世界人であることをバラしてもいい。もしこいつが言い触らした場合は即刻始末する。そういう風にすれば問題ないとは思うが。
どちらを装うかによって認識が変わるだろう。……いや、正直に話す必要はないのか。ある程度隠しながら話せば必要な情報は聞き出せるはずだ。それによって彼女がどう勘違いしようが俺には関係ない。
「……知らんな。生憎と俺は気がついたら『紫電』を授かってただけだからな」
「隠さなくてもいいわ。『紫電』は天龍のみが持つスキル。天龍を殺せる黒帝はいないわ、歴代を見てもそれは明らかよ」
天龍という名前が出てきた。もちろん聞き覚えはない。
「天龍を含む特定の色の一属性を持つ存在同士でしか、殺すことは敵わない存在でしょ。その中でも『紫電』と言えば『蒼焔』や『鈍風』、『鉄閃』に並ぶ側の存在。そんな天龍がなぜこんな地で人のフリをしてるかは知らないけど」
色々と名称が出てきて覚えにくいが、どうやら九つの属性それぞれに『紫電』のような特別なスキルがあり、それぞれを持つモンスターが途轍もなく強い存在であるということのようだ。
「……九つの内一つ、か」
「他のも挙げればいい? 『黄河』、『紅土』、『碧氷』、『灰木』、『水闇』の五つ。さっき挙げたのと含めて九つがそれぞれの属性で最上位に位置するスキルになるわ。これはモンスターの世界だけにいると知らないでしょうけど、自分が最強であるとは疑ってないでしょ」
知らない体を出しているというのに確信が疑惑に戻らない。
「……で、そういうお前はなんのモンスターだ?」
確信を戻すのは難しそうなので一旦気にしないことにして、ある程度情報が得られたのでギルドマスター辺りに天龍について知っている情報を教えてもらうとしよう。
次はわざわざ俺をここに呼び出した意義が、スヴィエラにあるのかという問題だ。
「私はヘルネスティ。獄魔猫とも言うけど」
猫っぽい要素は全くないが。いや、ソファにだらけて寝ている姿はそれっぽいかもしれないが。
「……強くなさそうだな」
「天龍様から見たらね、ぇ。でも私から見たら他の同族も似たような感覚よ。私は突然変異とも言える個体なの」
「……そうか」
いつか会って何体か狩っておこう。スキルを入手すれば突然変異とはいえスヴィエラの力の大半がわかるはずだ。
「……なんで人里に下りてきたんだ?」
「あなたには言われたくないわね、ぇ。隠す意味はないから言うけどぉ、研究のためよ、ぉ。モンスターより人の方が色々と工夫を凝らすのよ、ぉ」
「……そうか。で、俺とこんな話をする理由は?」
「そんなモノ、決まってるでしょ、ぉ?」
言って俺へと壁から魔力で出来た白い縄のようなモノが伸びてきて、ぐるぐる巻きにされてしまう。
「天龍なのに黒帝なんて、研究材料としてはこれ以上ないモノでしょう?」
確かに、一理ある。しかも俺は今まで倒してきたモンスターのスキルさえも使うことができる。彼女にとっては興味を惹かれるのだろう。
『黒皇帝』も人のスキルではあるのでこの室内では使えない。しかもなぜか『紫電』までもが発動しなかった。このよくわからない白い縄のせいだろうか。モンスターのスキルまで封じる類いなのかもしれない。
「無駄よ、ぉ。それは『地縛』。テリトリー外のモンスターはスキルが使えなくなるのよ、ぉ。そしてここは私のテリトリーね、ぇ」
にやにやと笑いながらも寝転ぶ姿勢を崩さない。言ってしまえばスキルを全て封じられた状態だ。彼女のモンスターだというヘルネスティとやらも出会ったことがないので、スキルによる脱出は不可能だ。
「レベルがいくつだか知らないけど、黒帝とはいえ人の姿を選んだのが間違いだったわね、ぇ。せめて人の形をしたモンスターだったなら、足掻けたかもしれないけど、ぉ」
「……つまり相手が黒帝なら耐えられるだけの強度を持ってるってことか」
黒帝は仮にこの世界のレベル上限が100で正しかった場合、今の上がり幅を考えると90万近くまでステータスが上昇する見込みだ。つまり100万以下では破れないと見るべきか。
「その通りよ、ぉ。これであなたは私のモノ。身体の隅々まで研究し尽くしてあげるわね、ぇ」
恍惚とした表情で頬を染めて嗤うスヴィエラだったが。
「……悪いが、それには及ばないな」
俺は縄を力ずくで引き千切った。
「は!?」
スヴィエラはぽかんと口を開けた間抜けな顔をしている。そんな余裕をかましている暇ないだろうにな。
俺は縄を解いてすぐにテーブルを左足で踏み割って左手を伸ばしスヴィエラの喉元を掴んで持ち上げた。
「っ、ぐっ……!」
「……殺しはしないが、喧嘩を売る相手を間違えたな」
こいつが死ねば俺が殺したとバレる。案内した魔術師もいるのだから当然だ。魔術師団団長という地位についているこいつと俺が互いに主張をした場合は俺が負けることは必至だろうが。生きて俺に手を出す意味がわかるようになれば問題ない。
「……モンスターなら多少は再生するか」
ばりっ、と喉元を掴む左手から『紫電』を迸らせる。スヴィエラは逃れようと俺の腕を掴んで暴れるが、大した力ではない。そのまま『紫電』を彼女の四肢へと流した。紫の雷電が身体を巡り、そしてばちばちと放電して四肢を焼く。
「あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ……!!」
絶叫が室内に木霊する。無表情に泣き叫ぶスヴィエラを見上げ、四肢が完全に炭と化した頃に手を放した。どさりとソファに落ちた彼女は虚ろな目で呻き声を漏らすだけだ。首には俺の指が当たっていた箇所に黒い焦げ跡が残っている。
「……さっきも言ったが殺しはしない。落ち着いたら手足を再生して跡を消していいぞ。もしバラせばお前は自分の研究成果を目の前で壊された挙句に死ぬことになるが、その覚悟があるならやればいい」
放心状態のスヴィエラからはこれ以上情報が引き出せないと思い、俺は踵を返しスヴィエラの研究室を後にした。
天龍の『紫電』がなぜ俺に宿ったのかは知らないが、とりあえずいつかは居場所を調べて倒しておくといいだろう。『紫電』の強化になるかもしれない。
しかし今回は100万程度のステータスだったなら詰んでいた。先にダンジョンを攻略しておいて良かったとは思うが、やはり油断ならないな。100万でもリンデオール王国には敵なしぐらいだと思っていたが、どうやら認識が甘かったようだ。
とりあえず1000万までは上げておくとしよう。高難易度ダンジョン一回で600万程度だから、あともう一つ見つけられれば問題ない。
国が俺に斡旋してくれればいいが、でなければ自分で見つけて勝手に挑むとしよう。王都ですら攻略可能と思われる人材がヘレナと多分スヴィエラもだろうが、二人しかいない。もしかしたらドルセンのギルドマスターも全力を出せば相当強い可能性はあるが。リンデオール王国は世界で五指に入るほど大きな国だと文献には書いてあったが、他の国にも同程度の存在がいる可能性は充分にある。国に所属していない流浪の強者もいる可能性はある。
しかも、これらの国に魔界は含まれていない。魔界とは異世界とは違う隣接した異界。召喚という儀式を必要とせず比較的楽に行き来できるのだそうだ。元々一つの世界だったところを太古の昔に切り分けただとか、元は異世界だったがなんらかの衝撃によって世界が密着してしまっただとか、よくわからない推論が飛んでいる。その辺の理論はどうでもいいが、魔界にも強者がいる可能性はゼロではない。
ダンジョンを攻略できる強さを持った者としてそれらが挙げられるだろうが、ヘレナ達のように王都を離れられない者もいるだろう。冒険者で攻略できる者がどれだけいるかはわからないが、優先的に回ってきて欲しいモノだ。
そして特に話題はないがレーナの下へ行ってしばらく会話した後、俺は再びドルセンへと戻った。
依頼も増えてきているので、しばらくはのんびりと過ごせるだろう。どうせ事件が起これば俺にも話が回ってくるだろうから、それまでは適当に日々を過ごしていればいいか。
やりたいことがないとこういう時になにをしようか迷う。とりあえず時間ができそうならフーアへの教育と金稼ぎをしていればいいだろうが。