表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/79

始動

大変長らくお待たせしました

約一年半振りぐらいの投稿になりますかね


近況報告や今後の予定を活動報告で記載しています

 風呂から上がった私達は、しばらく休憩時間となった。シャフルールが言うにはここはかなり安全な場所で、許可なしには入れないらしい。

 なので、完全な安息を手に入れて、少し息抜きをしようということになった。私達は、シャフルール曰く『この世界の人達よりも強い存在』だそうだ。強い者は、その力を使う義務がある。誰かが言った言葉だと思うが、私が思うにこれは、強者は戦いを引き寄せるのではないだろうか。確実なことは言えないが、強いからこそ、強い敵と戦う機会が多く訪れる。強いからこそ、弱い人達に頼られて戦うことになる。

 結果、強い者はその力を使って戦わなければならなくなる。


 兎も角、私達が戦わなくならなければならない時が、来るかもしれない。だから、束の間の安寧を楽しもうということだ。シャフルールが創った空間なので、知識さえあればなんでも創り出せる。気晴らし、とも言えるだろうが、いつも詰めた状態では、壊れてしまう。だから休息をしたのだった。


 しかししばらく経つと、そんな生活に面白さを見出だせなくなってくる。


 最初はなんでも創り出せるという利点を活かして遊びまくっていた。私達でさえ、自棄気味にゲームなどをしていた。

 それでも退屈さは唐突にやってくる。

 けれど退屈になったからといって、なにをするわけでもない。私達全体としては、これからの目的や到達点がないのだ。


 しかし私達にはやりたいことがある。それを達成するためには、こんな場所でじっとしていられない。


 手がかりを探さなければならないが、それもこんなところにいては無理だ。

 割り振られた部屋で、私達四人は相談を済ませている。念のためこの場の責任者であるシャフルールにも話はした。諌山先生と水谷先生にも話してある。本来ならもうこの場所に用はないのだが、この世界の常識を学ばなければならない。文献を読み漁り、一通りの知識を確保している最中だ。

 さらに諌山先生に相談した時、もう少し待って欲しいと言われている。それを守る必要はあまりないが、どうやら考えがあるようなので待機しているのだ。

 雪音にも遅くなったが相談している。彼女は私達の行動に賛成してくれるようだった。


 ただなんとなく数日を過ごしていた。私達もいい加減焦れてきて、そろそろ行動を開始しようかと思っていたある日のこと。

 唐突に、諌山先生が動いた。


「そろそろ、この場所にも飽きてきたのではないか?」


 この場にいる全員の気持ちを代弁した言葉に、誰もが彼女へ目を向ける。


「今さらだが、私は今やお前達の教師ではない。ここに通うべきお前達の学校はなく、私達の務めるべき学校はない」


 今までと変わらぬ凛とした声音と表情で、私達に向けて諌山先生は語っていく。

 無言で彼女の話を聞いていたが、


「よって、私はもうお前達の引率をする義務はなくなったというわけだ」


 その一言で不安げにざわめいた。


「なに、お前達を見捨てようという話ではない。ただ、これからはそれぞれが思うように行動しないかと言っている。集団行動をする意味はあまりないからな。各々、これから当面はこの世界で生きていくのだ。その辺りをよく考えて身の振り方を決めなければならない」


 諌山先生は一人ひとりの顔を見ていきながら告げる。


「それに、どうやらこの世界でやりたいことがある者もいるようだ」


 冗談めかしてそう言い、ちらりと私達の方に視線を向けてきた。


「さて、私と涼羅は共に行動する。行き先はわからないが、同じ目的があるからな。そして私達に教師としての義務や責任がない今、大勢を連れて歩くような非効率的な行動を取る意味がない。だから、これからは個別に行動しようというわけだ」


 ここまで引率をしてきた諌山先生が、おそらく教師として最後の弁を振るっている。

 私達の答えは決まっているからいいものの、他の生徒達には迷いが見て取れた。明らかに不安を隠せない様子で、周りとひそひそ相談している人もいる。


「急に言われても気持ちの整理がつかないだろう。私達は五日後にここを出て、神都と呼ばれる大きな街へ行くつもりだ。途中で分かれる者や神都方面へ行く目的がある者には同行を許すが、自分の意志なくついてこようとする者は躊躇なく見捨てる。意志なき者など、足手まといだからな」


 いつも以上に容赦のない物言いで突き放すように言う。きっとそれが皆のためになると思ってのことだろう。諌山先生は受ける印象よりも優しいことで知られている。本人はきっと否定するだろうが、性根が善人なのだ。


 ただ、彼女が自らの欲望に忠実な行動を起こした時、一体どんな本性が出てくるのかはわからない。


 優しくて面倒見のいい諌山静香が、普段やっていること以上に望みを得た時、今までの彼女を切り捨ててやりたいようにやった時どうなるのか。

 もしかしたら変わらないかもしれないが、豹変する可能性もある。


「ではまた三日後に。お前達の答えを楽しみにしている」


 諌山先生はそう言ってこの場を締め、颯爽を身を翻して立ち去った。水谷先生もいつも通り微笑んでなにも言わず、その背中についていく。


 いよいよ、私達も動き出す時が来たようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ