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女神達

 四メートル級の人型巨人の対策を練っていく諫山先生。


 だがスキルにはランクがあり、EXPもある。誰もが「~~ボール」と言う魔法しか使えなかった。

 更に壁や窓ガラスは内側からも壊せないことが分かり試してみたのだが、ヘルメットぐらいの大きさをした各属性の球体を、手元または自分の前に展開した魔方陣のようなモノから放つので、無理だと分かった。窓にピッタリ身体をくっ付けても無理なので、しかも壁に当ててもEXPは上がらないため魔法による攻撃は無理だ。

 魔力に関する数値の高い数人でさえ、魔法は規模で段階分けされるようで階位と言うモノがあり、第弐階だった。第壱階の魔法を持っているヤツは小数だったが、かなり小規模で火であれば明かりや鍋の火程度しか使えない。第弐階からが戦闘用らしい。魔法にもスキルランクはあるので、一定まで上がると新たな魔法を覚えるのかもしれない。その辺は今はまだ分からないが。


 つまりその属性を自在に出せる類いのスキルが一番良いと言うことだ。


 そこで最有力候補に挙がったのが“四女神”だった。

 俺の姉四人は全員そう言うスキルを持っていた。勿論他の生徒会役員二人も持っていたが、連携と言う点ではこの四人だろう。


「……分かりました。やってみましょう」


 生徒会長である姉が少し逡巡してから頷き、撃退と言う名目で、異形の怪物への安全圏からの一方的な攻撃が始まった。


 繰り返し棍棒を振るっていたそいつも、今は疲れたのか肩で大きく息をして佇んでいる。

 その隙を狙って生徒会長は右手を伸ばす。するとそいつの全身を黒い闇の蔓が絡み付いて動きを封じる。そいつはもがいて解こうとするが、取れない。


 生徒会長、母屋美夜(みや)の持つスキル、『暗黒女神』。自分の意のままに闇を操るスキルだ。


 そこにそいつを覆う程の爆発が起こる。


 生徒会会計、母屋夏代(なつよ)の持つスキル、『爆炎女神』。自分の意のままに炎と爆発を操るスキルだ。


 焼け焦げたそいつを追撃するのは無数の剣。無数の剣は突如として虚空より現れると、そいつを四方八方から突き刺した。程なくして剣は消える。


 風紀委員長、母屋(かなで)の持つスキル、『剣舞女神』。自分の意のままに様々な剣(魔剣や聖剣を除く)を出現させ操ることが出来るスキルだ。


 焼け焦げ刺し傷だらけで身動きの取れないそいつにトドメを刺したのは、小さな竜巻とそれに混じった葉の刃。竜巻と葉でズタズタに切り裂かれたそいつは、息も絶え絶えに数秒生きていたが、遂には事切れた。


 生徒会女子副会長、母屋(きょう)の持つスキル、『森嵐女神』。自分の意のままに風と木などを操るスキルだ。


「母屋会計。血の臭いで新手が寄ってきては面倒だ。燃やせ」


 更に死体を焼却処理するように諫山先生は指示する。


「はいよっ」


 姉は快く引き受け、大爆発でそいつを焼き尽くした。


「「「わああああぁぁぁぁ!!!」」」


 それを見たヤツらのせいで、教室は歓声に包まれる。……煩い。俺が予想するに、こいつは大して強いモンスターじゃない。


「……静かにしろ」


 諫山先生が手で耳を塞ぎながら言うと、歓声は止んだ。


「異形の怪物とは言え、一つの命を奪ったんだ。窮地を乗り越えたことには喜んでも、相手を殺したことを喜ぶな」


 諫山先生は教室を睨み回して言う。……流石教師。言うことが違うね。


 因みに諫山先生も、『時光女神』と言う光と時を操るスキルを持っている。


 他には男子副会長の『電竜迅雷』。書記の『凍雪女神』。水谷先生の『慈水女神』。

 これらが強そうなスキルだ。……女神が四人から七人に増えたが、雷で強いのが男子副会長。これで計八つの属性と剣と言うモノが出てきた訳だ。

 因みに光と闇はクラスにも居ないため諫山先生と生徒会長のみだ。恐らく他の属性とは違い希少なんだろう。特に時と剣は所謂系統外と呼ばれるモノだろう。魔法やスキルについて分かったことは箇条書きされているが、諫山先生の見解ではそうなっている。

 他に土が確認されているため誰か土の強いヤツが居るかもしれない。


「「「っ!」」」


 突然戦闘に参加した四人と諫山先生がピクリと肩を震わせた。


「……これは、レベルアップか」


 諫山先生がカードを見つめながら代表して告げる。ステータスが変化しているのだろう。


「……今のヤツを倒して得た経験値は10のようね」


 生徒会長の言葉に三人は頷くが、


「私は17上がっているのだが?」


 諫山先生が仄かに苦笑を浮かべて言った。


「まあ、これは私のスキルが関係してくるようだがな。お前達、何か職業を手に入れたか?」


 諫山先生は不思議に思っているような皆に対して説明してくれるようだ。その前振りとして尋ねた。


「私は闇師を」


「私は風師と木師ですね」


「私は剣師だな。剣を武器として扱う剣士ではない方の」


「あたしは火師だな」


 四人が答える。……ふむ。ここから推測するに、恐らく使ったスキルに応じて一番最初の職業を手に入れられる仕様らしい。

 闇師は闇を操るスキルを持っているヤツがなる職業だろう。


「使ったスキルに応じて職業が追加されるのか。職業は名前の下に項目としてあるようだな。私は教師と指揮官を手に入れたが、恐らく作戦の立案者と言う意味で先の戦闘分とお前達に教鞭を振るった分が加算されたのだろう。私には『指揮』と『授業』と言うスキルがある」


 それら二つが発動された結果だな、と微笑む諌山先生。


「職業にはステータス補正の効果がある。勿論強い職業になる程効果は高くなっていくだろう。効果には闇師だと闇属性攻撃強化(小)みたいなモノがあると思う。職業の説明はタッチで表示される。今は私達五人しか持っていないようだが、恐らく通常の場合最初から表示されているモノの可能性がある。だがスキルを使うことで増えていくなら――使い方は試し撃ちではなく本番でなければならないが、私の教師のように戦わなくても経験値が得られるモノがあれば安全にレベルを上げられる」


 諌山先生の言葉におそらくその「戦わなくても経験値が得られるモノ」があるらしい数人がホッとしたような息をつく。


「私がこの人数を相手に一人で『授業』をしても、残念ながら私含め五人で怪物を倒した経験値には及ばないようだが。まあ経験値の計算が等しく分配されるのか戦闘に貢献した者が多く貰えるのかは分からないが」


 経験値については推測しか出来ない、か。ゲームでも均等分配か貢献度か分かれるからな。


「うん? ああ、分配のようだ。それか一人で倒しても10しか貰えないかの二つになるが、スキルも職業も経験値が入っている。『授業』が1、『指揮』が1だから恐らく使った回数が影響しているのだろう。職業は最初の職業だからか、レベル1の必要経験値が7のようだな」


 諫山先生はカードをよく見て経験値の分配方法が分かったらしい。……と言うことは、レベルはスキルを使った貢献度のようなモノで分配され、スキルは使った回数がEXPになるのか。


「……種族。種族は手に入れるモノなのか?」


 続いて諫山先生は、少しの思案を経て答えの返ってこない呟きを漏らした。……種族も手に入れたのか。


「いや。もしかしたら職業と同じでスキルを使ってから目覚めるモノなのかもしれないな。だがこれをタッチしてしまうと人間ではなくなってしまうらしい」


 諫山先生はカードを見ながら少し苦笑した。


「だが種族は人間から強くなるのだろう。これ以上ないくらいにはな。他は分からないが、私達五人はそうだろう?」


 諫山先生が尋ねると、四人の姉も頷いた。……人間じゃなくなるのか。まあ俺の場合、スキルだけで人間じゃなくなるしな。

 ……待てよ? スキルで人間じゃなくなるってことは、まさか――。


「私には教師としてお前達を元の場所に返す義務がある。お前達にも協力してはもらうが、教師としての義務を果たすには人間を捨てるぐらい何の問題もないだろう。それに、あまり私は未練がない」


 サラリと言って諫山先生はカードをタッチする。


 すると諫山先生の周囲に金色の粒子が巻き上がった。……あながち俺の予測も外れていないのかもしれない。変化していく諫山先生を見て思った。

 金色の粒子の奔流が諫山先生を包んだかと思うと、諫山先生の髪と瞳が、神々しく輝く金色に変わっていく。……何故か胸が大きくなった気がしたのはきっと気のせいだろう。


「……女神……」


 粒子の奔流が収まっていく中で佇む金髪金眼の美女が髪を靡かせている。確かに女神だと思っても仕方がない。誰とも知れない呟きに同意した。


「そう言われても否定しにくいのはくすぐったいが、私の種族は光の女神だ」


 諫山先生は少し苦笑して説明する。


「時の方はまだ使っていないから分からないが、種族は名前と職業の間に入ってくるようだ。ステータス上昇などの効果もある」


 諌山先生は窓ガラスの方を見やり、そこに映った自分の姿を見て苦笑する。


「……なるほど。髪の色まで――いや眼の色まで変わるのか。女神とはまた、大袈裟なモノだが」


 そんな姿に、一人残らず見蕩れていた。……つまりは俺も、と言うことだが。勿論顔に出すようなヘマはしないが、見蕩れたことは否定出来ない。


「お前達四人は人間を捨てなくても良いぞ――」


 諫山先生がそう言った瞬間、四人の周囲に粒子が巻き上がった。……生徒会長は黒、女子副会長は緑と白、会計は赤、風紀委員長は銀だった。恐らく各属性の色だろう。


「「「……」」」


 そしてその粒子の奔流が収まった時、四人は髪と瞳の色(生徒会長は艶やかな漆黒から艶やかな漆黒へ変わるので全く変化がないのだが。強いて言えば神々しく輝いているように見えるが)とスタイルが少し良くなったと思われる。女子副会長は緑と白が混ざった色の髪と瞳だ。


「……お前達」


 やや責めるような諌山先生の声音。だが四人は決意の色を瞳に宿している。


「先生が守りたいのは生徒らしいですが、私達にも守りたいモノはあります」


 こうして五人の女神が誕生した訳だが、諫山先生は少し不満そうだった。これが夢だと言う希望はもうない。既に現実として適応しているのだ。こんな現実離れした現象を見ても現実だと疑わない。そして現実に人間を捨てた。だが四人の決意は固いようで覚悟を決めて女神になったらしい。


「この場でレベルが上げられる者は魔力が切れるまで上げると言い。一先(ひとま)ず危機は去ったが、緊急事態にならないでもないだろう。敵は私達がこの中に居ながら倒せるが、強い敵が現れてここが破壊されれば脆い。そんな時に活躍するのがお前達の魔法だ。球体を放つことしか出来ないが、ステータスが上がれば回数や威力が上がっていくだろう。それなら充分に対応出来る。では他のヤツには、少し試して欲しいことがある」


 諫山先生は空気を切り換えて今後の方針を決めつつ、更なる調査をするようだった。

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