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異世界の村へ

少し間が開きましたね

相変わらずの美夜視点です

色々言われてますけどね(笑)


とりあえず三章の目標は

姉のヒロイン化(絶望的)

諫山先生をカッコ良く

異世界について触れる

ぐらいです


二週間に一回は、更新したいと思います

 異世界転移。そんな非科学的な現象が巻き起こり、少し異世界にも順応し始めた頃。

 弟の灰人に見放され、私達は川に沿って歩いていた。黒い水は飲めるかどうか分からない。深さも分からないのでもしかしたらモンスターが潜んでいるかもしれなかった。

 岩が突き出して流れを阻害しているようなこともなく、おそらく川幅に反して深いと思われる。


 水は、魔法か水谷先生のスキルで補充している。


 水系モンスターは今のところ現れていないが、今になって雷の神の力があればな、と思ってしまう。スキルだけ置いて死ねば良かったのに。

 土か雷の女神が、もしかしたらどこかに存在するのかもしれないが、現状ここがどこかも分からないのに女神が何かなど、思索するのも無駄だろう。


 灰人のクラスメイト三十五人と、諫山先生と水谷先生の教師二人、私達四姉妹と雪音の、総勢四十二人。最初に転移した時は四十八人だったので、六人減った計算だ。

 モンスターに人が殺される様を目の当たりにし、灰人が人殺しをする場面も見た。

 しかしそんなことよりも、灰人に見放されたことの方がショックだった。今まで明確に突き放されることがなかっただけに、ショックは大きい。


 普段から灰人にどうでも良いと思われていることは分かっている。それでも明確な別離は今までになかったことで、ショックはある。


「ウゴアアァ!」


 モンスターが森の中から飛び出し、突っ込んでくる。体長三メートルの筋肉隆々な鬼とゴリラの毛皮を組み合わせたような姿をしたモンスターだ。


「爆撃拳!」


 ドゴォン! と爆音が響き、赤い爆発がモンスターを襲った。モンスターは仰け反るが、倒れない。倒せないのではなく倒さない。諫山先生曰く「一人で倒すより大人数で倒した方が節約になる」らしい。

 一人が大きい力を使うよりは、大人数が小さい力を使った方が省エネだと言うのが分かったので、実践している。


「……技名を付ける必要があるのか?」


 呆れたような口調で無数の剣を出現させるのは、奏だ。剣を出現させられる時間は短いため、出現させた剣を扱うことは出来ない。ステータスが高まっているため出来ないこともないが、一人で戦えてしまう。だから奏も遠距離から攻撃するのだ。

 奏は元々刃のように鋭い雰囲気を持つ、と言われてきた。剣の女神となって更に増した気がする。銀髪のポニーテールが風に舞い、輝きによって数人が見蕩れる。


 髪の輝きは奏が一番増したように思える。私は元々黒髪なのであまり変わらないが。


「その方がカッコ良いだろ?」


 ニカッと爽やかに笑う夏代。燃え盛るような赤い髪になったが、とても似合う。


「はぁ。全く、夏代が覚えられないだけだろう」


 嘆息して奏。図星だったのか「う、煩え!」と顔を赤くする夏代。……二人はいつもより明るい。かけ合いが多い、と言うか。普段より明るく振る舞っているのが見て取れた。多分暗くなるこの集団を明るくしようとしているのだろう。夏代はそう言うことが得意だ。

 ホントは二人も辛いだろうに。


「よしっ。トドメは私が刺そう」


 どこか嬉しそうな諫山先生は、上機嫌に微笑んで光線を幾重も放ちモンスターを絶命させる。……女神となって美人に磨きがかかった諫山先生は、いつもよりテンションが高い。灰人と別れたのが嬉しいと言うことはないと思うが、上機嫌だ。

 それは隣を歩く水谷先生も一緒で、和やかなオーラがより一層高まっているように見える。

 何故教師二人がこうも上機嫌なのか、理由が分からない。仮にも生徒が死んで喜ぶのは、教師として不謹慎だろう。いや、もしかしたらそれはどうでも良いのかもしれなかった。


「……レベルも上がってきたな。これなら進行速度も上がるだろう」


 諌山先生が自身のステータスカードを見やって呟く。……確かに強さは問題なくなってきた。教室のあった場所から遠くへ行く程、出現するモンスターが強くなっていくがそれも問題ない。

 私達をまとめて七女神と呼んでいるが、七女神は強い部類に入る種族らしく四十二人の中でも強い。その気になれば出現してきたモンスターを無傷で倒すくらいには強かった。

 七女神が強いと言っても、他の種族でも特殊と言うか、それなりに強い種族の人もいる。一対一で戦えば、同レベルだった場合戦い方次第では負けることもあるくらいだ。


「……」


 水谷先生が先程から、と言うか良い索敵方法を思い付いてからずっと、水色の輝きを全身から迸らせて目を閉じている。何をやっているのかと言うと、空気中にある水分を使ってそれらに触れるモンスターが居ないかを探っている、らしい。

 引っかかったら『念話』と言うテレパシーみたいなスキルを持つ娘が水谷先生からその情報を貰って、他の人達にそれを伝える。そうやって索敵と襲撃への備えをこなしていた。


「……あっ。来ました、左方から一直線に突っ込んできますっ」


 『念話』を持つ灰人のクラスメイトの女子、須藤(すどう)瑠璃(るり)が水谷先生からの『念話』を受け取ったらしく、警告してくる。

 数秒後、須藤さんの言った通りに左方からバキバキバキッ! と言う木々を薙ぎ倒す音が聞こえ、黒い森から一体の巨大なアリクイのような姿のモンスターが現れる。黒く巨大なアリクイの手先を刃に変え、尻尾にも刃を付けたような姿だ。一番多くこの森で探索している私達も初めて見るモンスターだった。


「っ……!」


 巨体の割りに素早い。木々を薙ぎ倒して進み、川沿いに居る私達に向かって両手の刃を振り翳し、突っ込んでくる。


「……木々とぶつかるのを無視出来る程頑丈で、尚且つ両手と尻尾の刃は殺傷能力が高い。しかも巨躯に似合わず素早いと来たか。――面白い」


 諌山先生は巨大アリクイを分析しながら、不敵な笑みを浮かべた。……諌山先生はどうしてしまったのだろうか。何故か、物凄くテンションが高い。まさか異世界に来たかった、なんて言うのではないだろうか。そんなまさか。諌山先生は常識人だ。異世界なんて信じてもいなかっただろう。


「響。お前はこいつを蔓で雁字搦めにしろ」


 まず響に指示を出す。響は諌山先生の指示通り、暴風を正面からぶつけて地に足を着かせ、地面から無数の蔓を生やして巨大アリクイを縛る。巨大アリクイは脱け出そうともがくが、刃三つで蔓が切られる度に響が蔓を増やして捕えるため、逃げられない。

 その後も諌山先生は私達に指示を出していく。


 蔓で動きを封じられた巨大アリクイは、九人が放った魔法によってボロボロにされる。それでもまだ生きているのは、諌山先生が急所を外すように言ったからだ。一回でも多くの人に攻撃させる。この方法は灰人がレベル上げで実践してみせたのと同じだった。私も参加したあの時みたいに長い戦闘ではなかったが、灰人の見解を充分に考慮した戦闘方法だと思う。

 しかしモンスターを回復させたりはせず、皆の疲労を考慮して進行速度を緩めないようにしている。最小ダメージを与えつつ、それでもそのまま倒す。進行とレベル上げの効率を両方共出来るようにした方法だ。


「この程度なら問題ないか。では進もう。早く村でも街でも見つけて、休みたいだろうからな」


 諌山先生はそう言ってまた、私達を連れて歩き出す。

 それから三日経って、ようやく私達は街に辿り着いた。


 黒い川がいつしかただの川に変わり、広大な海へ流れていく中間地点。港町、と言うヤツだろう。小さな村が黒い森を抜けた私達を出迎えてくれた。

 灰人はもうここには居ないかもしれない。異世界人達と言葉が通じるのかも怪しい。女神と言う種族が忌避されているかもしれない。

 それでも諌山先生が先導して、主な話し合いは諌山先生と水谷先生で行うことを相談しておき、この世界の情報を集めて生き残るため、港町に向かった。

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