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吸血姫の真価

※本日二話目です


二話更新の理由は、長野県善光寺の御開帳の宣伝と、今日の更新について言い忘れていたからです


一応長野育ちなんで、売り上げに貢献しときます(笑)

北陸新幹線開通により、通過駅になってしまうことを懸念する市長

多分通過されるようになるんで、御開帳に行ってあげてください


七年に一度なんで是非

オススメは蕎麦です

信州蕎麦とか戸隠蕎麦とか


私情ですけど

めっちゃ混みますけど


で、更新についてです

二章をGWの修正期間前に更新しちゃうか、それとも間を空けてもいいか、ってことを聞こうと思ってたのに、忘れてました

キリのいいところで終わらせるなら後者ですね

開けから三章が始まる感じですし

 エリオナと少し親密になったと思われる俺は、ようやく解放されて寝袋のある場所に戻ってきていた。


(……ぎゅーっ)


 するとルーリエに頭を撫でられながらジッとしていたフーアはすぐに駆け寄ってきて、俺に正面から思いっきり抱き着いてきた。……寂しかったと言う思いが伝わってきたので、俺はフーアの頭を撫でる。何となくだ。特に意味はない。


「良かったね~」


 『送信』でもしかしたらフーアの寂しさを受け止めていたルーリエがにっこり笑って言った。


「……助かった」


 俺はルーリエに軽く頭を下げて礼を言い、フーアと手を繋いで(やっぱり抱き着いてきたが)寝袋に入った。


(……て、つなぐ)


 寝袋から顔を覗かせる可愛らしいフーアが言ってくるが、手が出ていない。


(……がーん)


 モソモソと手を出そうと動いていたフーアだったが、手を出せないことに気付いたようだ。心なしか表情もションボリしているように見える。

 俺は仕方なく寝袋を完全に閉めないで手を出し、フーアを抱き寄せる。


(……っ)


 フーアは嬉しかったようで寝袋に入ったモゾモゾと動く。芋虫のようだが可愛い。


「……私も」


 そこにリムが寝袋に入ったまま芋虫のようにモゾモゾと器用に動いて俺に近寄ってきた。


(……っ!)


 俺が仕方なくリムも抱えると、フーアがビックリしたような気持ちを『送信』してきた。

 俺は二人を抱えて眠ることになった訳だが、朝起きたら俺の寝袋を開いて無理矢理二人が入り込んでいると言う状態だった。……何でだ。

 よって二人をそのまま抱えるように眠っていた俺は、準備を始めている音で起きたんだろうと、周囲を見て推測する。十騎士のほとんどと冒険者全員が準備を始めていた。朝食の準備が始まっていないのはリムが寝ているからだろう。


「……リム」


 俺はリムを起こし、準備させる。フーアを起こさないように起き上がって寝惚けて忘れていったリムの寝袋と俺が使った寝袋とフーアが使っていた寝袋を片付けて借りた寝袋は持ち主に返した。リムの寝袋は無表情で分かりにくいが目覚めたらしいリムに渡す。

 その後はリム主導で比較的豪華な朝食を摂り、目標の二十階層突破に向けて動き出した。最悪これから三日程かけても良いと言われたのだが、リディネラがギルドマスターでありSSS級冒険者が抜け、人気一位を争う受付嬢が二人も抜けてはギルドの運営に支障を来たす場合があるので出来るだけ素早く突破することを目標にした。

 流石に雑魚モンスターがボス級モンスターだけはあって段々と攻略速度は遅くなっていくが、そこは王国最強の騎士団の精鋭達である十騎士と新旧の最高ランク冒険者が揃った集団である。怪我をすることがあっても薬や魔法で対処し、死者を一人も出すことなく順調に進んでいた。


 魔力切れを防ぐためにボス戦が終わって休憩することもあったが、その日の内に二十階層まで辿り着き、ボスと激戦を繰り広げていた。


「くっ! 十階層毎にボスの強さが跳ね上がるのはダンジョンの基本だが、まさかここでもとはな!」


 エリオナがボスであるシオナスと言うらしい巨大なモンスターと対峙しながら言った。……確かに威圧感が半端じゃない。俺が独りで来た時九階層と十階層のボスで二時間差があったのだが、それは考えてみればおかしい。だって俺は倒したモンスターのステータスを丸ごと自分のステータスに加算出来るんだから。それなのに二時間も差が出来てしまったと言うことは、余程強くなっていると言うことだろう。

 シオナスは蝙蝠のような巨大な翼を生やした二本足で立つ獅子だった。手足の爪は鋭く長く、尻尾は長い漆黒の蛇だ。……確かキメラのイメージがこんな感じではなかっただろうか。二本足で立つようなことはなかったと思うが。

 全長は約三十メートル。今まで戦ってきた中では一番でかい。


「……『紫電』」


 俺は試しに、全力(・・)で『紫電』の落雷をシオナスにぶつける。それに“雷電の騎士”アスカが驚愕したような顔で俺を見てくるが、無視だ。


「ガアアアアアアァァァァァァァァ!!!」


 シオナスは苦しげに絶叫を上げるが、『紫電』の落雷が収まった後に目に見える傷はなかった。……嘘だろ? 魔力の質が全く表示されない俺の全力『紫電』だぞ? それで全くダメージがないとはどう言うことだ?


「驚くのは分かるが、戦闘中に呆然とするのは感心せんのう」


 キルヒが言って少しだけだが怯んだシオナスに二挺の銃で弾丸を撃ち込む。


「カイト、魔力の質はどれくらいだ?」


 リディネラが聞いてくる。


「……知らないな」


「し、知らないだと? ステータスカードは持ってるんだろう?」


 俺が呆然としたまま答えるとリディネラは戸惑ったように再び聞いてくる。


「……持ってるが、俺の魔力と魔力の質は横棒が引かれてるだけで数値は記載されてない」


「「「っ!?」」」


 言うとこの場にいるフーア以外の全員が驚いたような顔で俺を見る。


「それはステータスカードを更新してないと起こる現象だな。ステータスカードが表示出来る数値の限界があり、更新していないとそのように数値が記載されない状態になる。それはいつからだ、カイト?」


 エリオナが難しい顔をしながら尋ねてくる。……良いのか、戦闘中に。確かに俺の『紫電』の効果で麻痺させてはいるが。いつ切れるか分からないぞ。


「……さあな。少なくともレベル一で才能以外が全部一だった時からずっとこうだ」


「……そうか。おそらく魔力と魔力の質がとんでもない数値なのだろう。だがそれでもあまりダメージがないところを見ると、かなり強いのだろうな」


 俺が言うと考え込むようにしてからエリオナは頷いて一旦この話題を終わらせる。シオナスが麻痺から解かれたからだ。……全力『紫電』をこうも簡単に破られるとは、流石にキツいモノがあるな。

 あまり魔法タイプのモンスターを見かけてきないとは言え、


「自信を砕かれて傷付くのはまだまだ若い証拠じゃよ。その年であの威力ならまだまだ伸びる。そう悲観することもないじゃろう」


 見た目が明らかに俺よりも若いキルヒにそう言われてしまった。……一体何歳なんだろうか。


「……見た目が俺より若いキルヒに若いとか言われたくはないな」


「儂はこう見えても齢何百年を生きる吸血鬼じゃからな」


 カッカッカ、とキルヒは笑う。……そんなの分かる訳がない。俺は少し前まで異世界にいた普通の少年なんだぞ。


「……そうか。見た目は可愛いのに本当はシワシワのお婆ちゃんかと思うと残念だな」


「儂は本当の姿もピッチピチじゃ! 吸血鬼は歳を取らないんじゃよ!」


 俺がしみじみと言うとキルヒは両拳を突き上げて必死な表情で反論してきた。……そうなのか。そうだろうとは思っていたが。感情のない俺に見た目は重要だからな。本来の姿がシワシワかと思うと残念さが際立つ。


「カイトとキルヒ殿。今は戦闘中なのだ、集中してくれ」


 光線を無限に放ちながらエリオナが注意を促してくる。……少し不満そうだったのは気のせいだと思いたい。

 ……俺もそろそろ本気で戦うか。だがその前に本気で戦って良いかエリオナに確認しておいた方が良いだろう。


「……エリオナ。本気で戦って良いのか?」


「……っ。ああ、問題ない。分かってしまう人もいるだろうが、私達だけで勝てる相手でもない」


 俺がエリオナに尋ねるとエリオナはしっかり俺の質問の意図を読み取ってくれたようで、少し戸惑ったようだが頷いてくれた。……じゃあ、やろうか。


「……十騎士よ、本気で戦え! 責任は私が持つ!」


 気を取り直したエリオナが戦っている十騎士に剣を突き出して指示した。


「じゃあ私が時間を稼ぐね~」


 『牛鬼神』を起こした修羅童子と共に叩き付けてシオナスの連続攻撃を弾き続けるルーリエ。それを援護するように虹色の魔法が次々とシオナスに叩き込まれる。フィシルの魔法攻撃だ。ドラゴンのように魔力障壁はないものの、かなり強いようでほとんどダメージは負ってない。元SSS級冒険者の魔法乱れ打ちをほぼ無傷で乗り切るなんて凄すぎる。俺でも無理だぞ。

 そこに『白虎』を使用した銀色の獅子の獣人らしいリディネラが突っ込んでいく。腕の肘までと脚の膝までを『獣化』させているリディネラは神々しく輝く白い巨大な虎のオーラを纏ってシオナスの脇腹を殴り、体勢を崩す。流石の攻撃力だった。


「我が祖先に伝わる光よ。閃光の名の下に、我に真の力を顕現させたまえ!」


 エリオナがそう唱える。「光」と「閃光」のところだけ違ったが、他十人も同じようなことを言っていた。

 すると十一人の身体がそれぞれの属性の色に輝き出した。


「いくぞ」


 エリオナが言って、目で追えない速度でシオナスの背後に回り込み光の剣でシオナスを切り裂いた。しかし光熱に焼かれただけで本当に切り裂かれた訳ではない。……これはまさか。


「……身体と触れているモノを司る属性そのモノに変える能力か」


「……そう」


 俺が呆然と呟いた声に、リムが言葉少なく頷き身体を砂に変えてシオナスの身体を礫で攻撃する。……魔力消費が多そうだが、それを実行出来るのは十一人の魔力の多さがあってのことだろう。流石十騎士と言うべきか。だがそれでもシオナスに与えるダメージは微々たるモノだ。

 そこに、無数の純白の羽根がシオナスに向かって舞い降りてきた。(……えくすぷろーじょん・ふぇざー)と俺に『送信』が来たので、フーアの『羽根魔法』だろう。


「ふむ。そろそろ儂も本気を出したいんじゃが、血を大量に吸わなければならないのじゃ」


 不意にキルヒがそんなことを言った。……それは暗に俺の血を吸わせろと言っているのだろうか。


「……そこにドラゴンと言う珍しい血を持った者がいるぞ」


(……がーん)


 俺が何とか自分以外に矛先を向けさせようとフーアの血が美味そうだと提示してみる。


「いやいや、儂は異性の血を飲むことで一時的に力を得ることが出来るのじゃ」


「……あそこに二人男が――」


「そこまで儂に血を吸われたくないのかの? 痛いのはほんの一瞬で、食事じゃから眷属にすると言うことでもないのじゃが。……まあ美味そうな匂いがするのは否定せんが」


 異性の血を吸いたいと言うのでアルバスとガレインを勧めるが、キルヒは俺の血を吸いたいようで上目遣いに潤んだ瞳を向けてきた。……血の匂いで美味そうだから、俺と言う訳か。丸っきり食欲と同じだな。

 上目遣いは分かっていてやっているので効果がないと言うことはない。フーアやリム、エリオナの上目遣いを受けてきたからと言って耐性が増す訳でもない。

 感情が死んでしまった俺にとって、見た目と言うのは非常に重要だ。上目遣いは、そう言う点で有効と言える。

 俺は諦めて屈み、首を右に傾けて首元を晒す。


「ふむ。首筋を捧げるとは感心じゃな」


 キルヒはニヤリと笑って言うと口を開いて尖った犬歯を見せる。……血を吸う箇所によって意味合いが違うのだろうか。

 キルヒは俺に近付いてきてガブリと犬歯を突き立てる。……軽い拷問を受けたことがある俺にしてみれば、こんな痛みは痛みの内に入らない。チクッとしただけだ。血を吸われる感覚は決して良いモノではなかったが。


「……こ、これは、予想以上に美味い血じゃ! まるで何種類もの血を混ぜた高級ミックスジュースのような味じゃ!」


 ゴクゴクゴク。

 キルヒは興奮したように言ってどんどん俺の血を飲んでいく。……どうやら気に入られてしまったらしい。


「……キルヒ?」


 ゴクゴクゴクゴクゴクゴク。

 ……ああ、意識が霞んできた。

 ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク。

 …………。


 パッタリ、と。俺は力なく身体を垂れる。……力が入らない。血を吸われる感覚と言うのは力が抜けていく感覚に近い。


「き、キルヒ殿!」


 俺の様子がおかしいのを見たからだろう、光の速さでエリオナが駆け付けてくれた。……早く何とかして欲しい。


「……ぷはっ! 美味かったぞ! まさかこれ程美味い血に出会えるとは思わなかった! ん?」


 キルヒは夢中になって俺の血を全て吸い取り干乾びさせると満足した様子で口を放してくれる。……やっと放してくれたか。これで血を作り直せる。


「す、すまん! つい夢中になってしまったのじゃ! 後でいくらでも詫びはするからの。おかげで真の姿を披露出来そうじゃ」


 キルヒは我に返ると俺に謝り、しかし今は戦闘が先かと真の姿とやらを、赤い輝きを纏って現した。


 キルヒの幼いぺったんこボディが、色香を放つ悩殺ボディに変化していく。だから下がスパッツのような伸縮性のあるモノだったのだろう。ムチッとした脚になったのでは今までの服が合わない。上の服も伸縮性の高いモノなのか、胸だけを覆い下乳が見えて臍丸出しと言う格好になったのだが、放つ色香を上昇させるだけだ。スタイルは抜群で、大人の女性と言う印象を受ける。

 大人びた輪郭になり、非常に綺麗だった。


「ふむ。では全盛期の儂の、フルパワーを見せてやるとしようかの」


 幼女から美女に変貌したキルヒは、妖しい笑みを浮かべて宣言した。

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