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十騎士

黒帝の設定が明かされる……っ!

訳ではありません

十騎士の話です


ですがまたもや説明回なので嫌いな人には苦痛を伴うでしょう

すみません


今は修正より更新を優先しているため、すみませんが主人公のキャラブレはもう少しの間、辛抱下さい

と言っても今回は説明ばかりでつまらない回と思う人は多いかと

不安です(笑)

 予想外の出来事により、フーアと言うフェザードラゴンの娘が仲間に加わった俺達は、ボス部屋の前で待っているかもしれない他のチームを待たせる訳にはいかないと、少し進む速度を上げていた。道中罠もあったが如何せんチームの強さが半端じゃないので、問題なく突破出来た。

 もっと言えば出現するモンスターも苦戦する程ではなく、一人で突破出来る程度なのでやる気を出せば善戦しすぎるようだ。寧ろ俺がフェザードラゴンのステータスを丸ごと吸収したので、手も足も出ない状態から声も出ない状態まで下がってしまっている。出す前に殺すからな。


 と言うか俺が黒帝だと知ってから三人がどこか他所他所しい、と言う訳ではないがどこか今までの反応と違う。今までは俺の顔から目を逸らしていたのにジッと見つめてきたり、少し積極的に話しかけてきたりする。ちょっと俺に取り入ろうとしている感じが出ていて、少し引いた。あまり露骨なアピールは避けたくなる。あまり積極的に他人と関わりたくないのだ。ルーリエがフーアと同じように腕に抱き着いてこようとしたのは、流石に避けてしまったが。


 分かれ道が途中にあったが、こんな場面があった。


「……私がカイトと行く」


 とリムがキュッと俺に抱き着いてきた。右腕にはフーアがいるので左腕だ。


「え~。でも~、カイト君は私と行きたいよね~」


 だがそこでルーリエがその豊満すぎる胸を惜しみなく押し付けるように背後から抱き着いてきた。……ヤバい。両手に華どころではないが、女子に密着されると言う慣れない状況に思考がショートしかけている。凄く柔らかい未知の物体が背中に当たっているのだ。そのボリュームは小さなリムはもちろん少し大きなフーアでも敵わない。

 見た目は豊かな他人が相手だと、俺はどうも弱いらしい。性格上の問題が度外視されるからだろう。


「二人共、カイトが困っているではないか。ここは私がカイトと組もう」


 しかしコホンと咳払いをしたエリオナが割って入ってくる。


「……そんなこと言って、カイトと組みたいだけ」


「そ、そんな不純な動機ではない。私はただ、カイトの本気を見極めるためにだな」


 リムのジトッとした視線に目を泳がせるが、エリオナは尤もそうな理由を付ける。……十騎士も元SSS級冒険者なら種族程度で玉の輿を狙わないでも、裕福な暮らしが出来るだろう。第一強い者の遺伝子、と言う話ならば十騎士にいる男性を婿にすれば良い。

 それか俺はあまり見たことがないのだが、強い男性を婿養子に迎えれば良い話だ。将来有望だと思われるとは言え、無表情で無口かつ思わず目を逸らしたくなる程醜い顔を持つ俺を、婚約者に選ぶ必要はないだろう。

 黒帝なんてただちょっと黒を操れるだけの種族だぞ? 稀少価値が高くても、玉の輿合戦を繰り広げられるまでもないだろうに。


 結局その場ではエリオナが勝利を収め、二手に分かれて探索を行った結果、そこを抜けるとボス部屋の前だった。


 フーアについては全員が揃ったところで説明し、一応の納得を得ている。ギルドマスターと王国騎士団副団長が短く視線を交わし、フーアの素性は隠蔽するようにと決めたらしい。離れて行動したおかげか、二人の頭は冷えたようだった。

 フーアの身体を一応持っていたリムの予備服で覆い、翼を消してもらって手足の毛をすっぽりと脱いでもらった。……脱げるのか。と思ったモノだが高級品らしいフェザードラゴンの毛をゴッソリ貰っては、何も言えない。そのため今の見た目は完全な美少女。ただ合うサイズがなかったのでリムの服だと少し小さいようだった。


 第一階層のボスは瞬殺。俺が倒そうとする暇もなく、寧ろ通常モンスターの群れの方が時間がかかっただろう。と言っても群れだろうが何だろうが渾身の一撃で殲滅出来る者が十七人もいるんだから、フェザードラゴンが強すぎるだけでボスモンスター程度なら瞬殺可能だ。大体魔力障壁と呼ばれるドラゴン固有のシールドがなければ、フェザードラゴンでさえ瞬殺だったのだ。俺も『魔力障壁』は使えるようになったことだし、第一フェザードラゴンそのモノであるフーアがいる。防御も完璧だ。

 俺はあまり奪ったスキルを使ってないが。使う暇もなく倒してくれるので問題ない。


 そのため俺が二日かけてクリアした十階層までの完全探索を、半日程度の時間で完了してしまった。もちろん人数の差もあるが、階層が進んでも難なく突破出来る強さを持ったメンバーが揃っている。ほぼ無傷で十五階層まで突破したのは、一日が丁度経った頃だった。

 休憩なく突き進んでいたのだが、十五階層の討伐が終わったボス部屋で休憩することにした。今日はここで野宿すると言うことも既に決定事項である。寝袋を持っていない俺とフーアだったが、冒険者と言うだけはあってフィシルとルーリエが予備の寝袋を持っており、有り難く借りることにした。サイズの問題で俺がルーリエ、フーアがフィシルのを使うことになっている。


 十五階層の討伐が終わった時点で互いに情報交換を行い、今までの報酬を見比べ見合った成果だったかを論議していた。俺はダンジョンの相場など全く分からないので、十騎士と元と含むSSS級冒険者四人による会議をボーッとしながら聞いていただけだった。その間同じくダンジョンの知識さえ曖昧なフーアとテレパシー会話をして過ごしていた。と言っても断片的な言葉しか喋れないフーアと話すのはゆっくりだったので、あまり多くは話していない。大半がフーアのことについてだ。今までとこれからについて軽く話し合っていた。


 その最中十四人の会議を半ばに聞いた話では、充分に見合うだけのダンジョンであることが確定となったらしい。難易度は高いが、宝箱やモンスターからドロップするアイテム。それらが難易度に見合うモノだと判断された訳だ。食料は出現するモンスターから食べられるモノを事前に選んでいたのか、討伐したモンスターを一々解体していたリムを主導に、肉料理が振る舞われた。もちろん持ってきていた食材もあるが、肉が多かった。時に一階層で出現するミノタウロスの肉が多かった。食感としては牛肉に近いのだろう、俺は別に肉に詳しい訳ではないので確かなことは言えないが。だが鶏肉や豚肉などではないので、恐らく牛肉だ。別段美味と言う訳ではないが、俺は今までこっちの世界に来てまともな食事を摂っていないことを思い出し、夢中で食べていた。

 もちろんただ食べるだけでなく、俺が持っていたミノタウロスも調理してもらって全て平らげた。見事な食べっぷりだったようで、エリオナや獅子の獣人らしいリディネラさえも苦笑して見守る程だった。……何故か風の騎士であるアルバスに睨まれていたのは、もう無視することにしている。俺の位置が何となく弟の位置になりつつあるのが気に入らないのだろう。この弟とは俺より年上からの見方であり、一部のリムなどは兄のような懐き様であるのだが。


 食事も終わり各々が寝袋を広げていたのだが、フーアは俺と離れたくないらしくもちろん隣に来た。既に定位置となっている右隣だ。十騎士は十騎士、冒険者は冒険者で集まるかとも思ったのだが、リムが俺に積極的なこともあり、更には全身甲冑で唯一顔の見えない“暗黒騎士”が独りで壁際に背を預けて眠った(?)のもあり自由にバラバラで寝ることになったようだ。

 リディネラ、ルーリエ、フィシルは同じ場所に固まって寝るようだが、キルヒはどうやら同じ銃を使うイリネーラと気が合ったらしく、今では仲良く語らっている。恐らくキルヒの方が腕が立つので、イリネーラから話しかけているようにも見えるが、キルヒもそれが苦ではないようで楽しそうだ。十騎士では男性二人が女性騎士達から少し離れた位置にいて、女性騎士達は一箇所に固まっている。


 エリオナは少し決意を固めたような顔をするとその集団から離れて俺の方に来た。理由は分からないが女性騎士達には話したようで、特に怪訝そうな顔はされなかった。しかし俺としては男性二人にも話して欲しかったと思う。


「待って下さい、副団長」


 イケメンの男性騎士、アルバスがエリオナを呼び止めた。


「副団長が何をするかは知りませんが、そいつに構う必要なんてありません」


 アルバスはエリオナを見据え、チラリと俺に侮蔑の視線を向けて言った。……イケメンと言うのは自分のことを無意識に周囲の男よりも一ランク上だと思っている節がある。それは実際にそうだし俺も真っ向から否定する気はない。だが一々気に食わないことに突っかかるのは止めて欲しい。大体十騎士で多数決したらエリオナの意見が通りそうなのだが。もちろん少数派を蔑ろにしろと言っているのではない。俺は寧ろ少数派に属するので少数派の意見も大切して欲しいと思うのだが、面倒が少ない方で良いと思う。


「悪いがアルバス。今回は一騎士が口に出せる問題ではない。十騎士と言う点で関わりはあるが、直接的な関係はない」


「……っ!?」


 エリオナは真剣な表情と声音でアルバスを諭す。それにアルバスは、どうやら別の意味で驚愕したようだ。


「な、何でですか! それなら尚更俺は反対です! 大体こいつは出身も種族も分からないんですよ!?」


 アルバスはかなり動揺していた。その点他の十騎士は比較的落ち着いた雰囲気を持っているので、まだ精神的に若いところがあるのだろう。


「アルバス。カイトの種族はおいそれと口に出来るモノではない。それに十騎士のためでもある」


「……」


 エリオナの落ち着きを払った口調にアルバスは口をつぐみ、最後の抵抗として俺を睨み付けた。……何故俺を睨む。


「すまないな。彼が怒っている理由についても説明する。では二人きりで話したいのだが」


 エリオナはアルバスに聞こえないように苦笑して謝ると、チラリとフーアを見て言った。


「フーア、少しの間だけだから離れてくれるか?」


(…………)


 フーアはキュッと俺に抱き着いたまま沈黙を続けた。離れるかどうか迷っているようだ。


「フーア。カイトと大切な話があるのだ。分かってくれないか?」


 エリオナも優しい笑みを浮かべてフーアの頭を撫でて言い聞かせる。他人の心を見ることが出来るフーアは、エリオナの心が綺麗なのを感じたらしく、すぐに警戒を解いた。と言うかこの場にいる全員にはそれなりに心を開いているようだった。……ただし、アルバスは除く。心は綺麗だが俺に対して良くない感情を持っているのが、フーアの警戒を解くには至らない理由らしい。


(……こくっ)


 フーアは俺とエリオナだけに『送信』してから名残り惜しそうに俺から離れ、タタタ、と駆け出してルーリエに真正面から抱き着いた。


「あらあら~。よしよし~」


 フーアに抱き着かれたルーリエは特に拒まず豊満すぎる胸に顔を埋めるフーアの頭を撫でていた。……これなら大丈夫そうだな。


「では行こうか」


「……ああ」


 エリオナが微笑みから真剣な表情に変えたのを見て俺も気を引き締め、エリオナについていく。


 と言ってもかなり広いボス部屋の四隅に向かっただけだが。メンバーがいる場所から一番離れた場所だった。それ程他人に聞かれるとマズいことなのだろうか?


「サイレント。念のためだが防音魔法を使っておく。と言っても恐らくこの場にいるフーア以外の者は知っているだろうが、一応な。十騎士の掟なのだ」


 エリオナは簡単に魔法を唱えて防音をすると苦笑して俺に説明してくる。……サイレントと言う防音の魔法を使ったらしい。恐らく周知のことだろうから何故使ったかを説明してくれたんだろうが、俺は魔法に詳しい訳ではないのでサイレントと言われただけでは気付かなかっただろう。エリオナの誠実さが滲み出ている。


「……そうか」


 俺は当たり障りがないように頷くのみに留めておいた。


「では座ってくれ。少し長い話になると思う」


 エリオナに促されて、俺は壁を背に座る。背凭(せもた)れがあった方が良いだろうと思ってのことだ。


「すまない」


 エリオナは急に俺に謝ってきたかと思うと、騎士鎧を脱ぎ始めた。


「……?」


「すまないな。脱がなければいけないと言う規定はないのだが、流石に鎧を着たままだと着苦しいことがあってな」


 エリオナは俺が不思議そうな顔をしているのが分かったのか、苦笑して説明してくれる。……騎士と言えど私生活で鎧は着ない、と言うことなのだろう。確かに遠くにいる十騎士達を見ると鎧を脱いで寝袋に入っている。それは当たり前か。

 ただ“暗黒騎士”だけは甲冑を着込んだままだが。


「ウルティアは人見知りでな。しかもあまり素顔を見せたがらないのだ。特に男が苦手で、十騎士でも男がいればあの格好かマスクを被ることもある。私達がいくら言っても聞かないのだが、あれでかなり可愛い見た目をしている」


 エリオナは俺の視線から考えていることを読み取ったのだろう、苦笑したまま俺の隣に腰かけて言った。……可愛い見た目と言われてもな。あんな甲冑を着てるんじゃ男女の区別さえ付かない。だが今はエリオナの話に耳を傾けるべきだろう。


「カイトは、黒帝と言う種族についてどれくらい知っている?」


 エリオナは背中を壁に預け俺を見て尋ねてくる。……そう言えば鎧を脱いだエリオナの格好は妙に色っぽい。脚全てを覆うピッタリとした黒いウェットスーツの下のようなモノを穿いており、上は紺のセーターだった。鎧越しには分からなかったエリオナの本当のスタイルが判明した訳だが、その瞬間を見逃したとは言え鎧から躍り出る程の大きさだった。よく鎧で押さえ付けていたモノだと思う。痛くはないのだろうか。もしかしたら特別な素材で出来ているのかもしれない。そのボリュームはルーリエと比較すれば分が悪いものの、七女神を見慣れていた俺でなければ、たゆんと圧倒的な主張をするそれの魅惑に抗えなかっただろう。


「……? よく分からないが、かなり珍しい種族で黒髪に紅い瞳。『黒皇帝』と言う黒を操るスキルを持ち、それなりに強い」


 俺は質問の意図が分からず首を傾げながら黒帝について知っていることを挙げていく。すると何故かエリオナは苦笑していた。


「……スキルや外見的特徴は自分で確認出来るだろうが、それ以外は少し訂正と言うか、認識を改めてもらう必要があるようだな」


 どうやら黒帝の稀少価値と強さについて見誤ったらしい。エリオナはやや呆れたように、額に手を当てていた。……おかしいな、俺の体感した感覚で言っているんだが。


「黒帝の説明は後々するとして、聞いて欲しいのは十騎士についてだ。もちろんそこに黒帝が関係してくるのだが、先に話させてもらう」


 エリオナは再び表情を引き締めて言ったので、俺は了承の意味を込めて頷く。


「十騎士とは私以外の十人のことを言う。だが十人以外にも十騎士候補は多い。それは私達の種族に関係しているのだが、基本的に火、水、雷、土、木、風、氷、光、闇の九属性を司る種族となっている。火がイリネーラ、水がルイラン、雷がアスカ、土がリムとガレイン、木がオリヴィア、風がアルバス、氷がレイラ、光が私、闇がウルティアと言うことだ」


 ……ん? 土が二人いて、九人しか名前が出ていないな。出てないのは“旋律の騎士”ネルヴィか。


「カイトも気付いただろうが、土が二人いて十騎士と呼ばれる十人では、光である私がいないので一属性が欠けることになるが、これは仕方がないことだ。これも十騎士の掟に関係があるのだが、十騎士は団長と副団長以外から選ばなければならない。私が副団長になってしまったので、私達から出ているのは十一人で十騎士と私が別物ではない。だからこそ私がこうして説明に出ているのだが」


 エリオナは土が二人居ることについてではなく、エリオナ自身、つまり十騎士と呼ばれて居ないがこうして説明を買って出た彼女について説明した。


「……十騎士ってのは、種族の総称みたいなモノなのか?」


 俺はそう尋ねた。……エリオナが十騎士ではないのに十騎士と同じ括りのような口振りでは、十騎士が十人ではないことを意味しているようだった。更に言えば十の種族でもないのかもしれない。ネルヴィと言う、九属性に入らない剣や時などの系統外と言われると思われる属性があることからも想像出来る。


「十騎士と言うのは、九属性ずつに二種族、系統外の属性から何種族かいる中でたった十人だけが選ばれる。つまり十騎士と言うのは彼ら十人の呼び名であり私達の種族における名誉ある称号なのだ。そして十騎士に選ばれた者がいる種族だけが、十騎士と言う括りを名乗ることが許される」


 十騎士と言う種族の定義を明確にするためか、そんな説明から入った。


「十騎士の選定方法は至って単純。その代にいる種族の代表者を総当り形式で戦わせ、その中から強い十人を選んで十騎士に任命する。何百年と続いた十騎士の歴史を背負うと共に十騎士になることで無条件に王国からの厚い信頼が得られる。各種族は競って十騎士になりたがるのだ。……中には私のような例外もいるがな」


 苦笑するエリオナ。そしてその例外であるエリオナ自身について説明が入る。


「私は騎士団長に実力を見初められ、十騎士選定前から騎士団長の下で働いていた。幼少期からなのだから、あの人の目は凄い。あの人は私の十騎士を超えると言われる潜在能力を一目で見抜き、充分に実力が立つようになってから副団長に任命してくれたのだ。私が言うことではないが、こうしてあの人の期待に応えられたよ」


 少し誇らしげだ。余程騎士団長と言う人は優秀で、信頼されているのだろう。だが十騎士で結婚の話がないと言うことは、女なのだろうか。


「……火はイグニスとフォティア。イリネーラはイグニスとなる。水はヴァッサーとメーアで、ルイランはメーアだな。雷はトルエノとケラヴノスだ。アスカはケラヴノスの方だ。土はヴラフォスとアレーナでガレインはヴラノス、リムはアレーナだな。二人は種族こそ異なるが、親戚と言うことになる」


 種族説明の中で、驚きの情報がもたらされた。……あの巨漢のガレインと年下にしか見えない小柄なリムが、親戚だと? まあ俺も姉達と比較されては失望され、をずっとされ続けてきたからな。幼少期はそうでもなかったが、最近はずっとそうだ。


「木はアルベロとデンドロン。オルヴィアはアルベロだな。風はヴァンとアネモスだ。アルバスはヴァンの方だな。氷はグラソンとリオートで、レイラはリオートになる。光はリヒトとルーチェ。私はルーチェとなる。闇はオプスキュリテとオスクロだ。ウルティアはオプスキュリテ、と言う風になっている」


 まず基本の九属性について言ってくる。……名前を羅列されても、覚えらないんだが。まだ十騎士全員の名前さえ怪しいと言うのに。


「他の系統外の属性では、糸のファーデン、音のスオート、剣のスパーダ、時のツァイトなどがいるな。ネルヴィは糸のファーデンに当たる」


 エリオナは一通り説明し終えたからか、ふぅと一息つく。……大体、十騎士については分かった。二十種族以上ある内の、選ばれしエリート種族と言うことだな。だから十騎士に光がいなくて土が二人いるのだろう。


「……と言うことは、今回は上手くバラけたが、最低五つの属性で構成されると言うこともある訳だな」


「ああ。極端に言えばそうだが、十騎士になれる種族は大体力が同じなのだ。だから生まれた者の才能によって十騎士が決まると言って良い」


「……なるほどな。種族の力が拮抗しているからこそ十騎士の制度が出来たとも言える訳か」


「そう言うことだな」


 俺が納得して頷くと、エリオナも頷いてくれた。だが何故十騎士について俺に説明する必要があるのかが分からない。


「十騎士について知っておいて欲しいのは種族についてではなく、その掟についてだ。十騎士の掟は色々とあるが、最も大事なのは結婚についてだ」


 エリオナは十騎士について説明してから、本題に入るようだった。……と言うか、何故結婚について?


「まず、十騎士内での結婚は出来ない。必然的に外部から優秀な種族を迎え入れることになる。たまに優秀すぎる種族がいた場合は重婚を認めることもある。その場合は一つの家に置いておく訳にもいかないから相手に嫁ぐ、または婿養子と言う形になるが」


 そこにも十騎士と言う合同種族の欠点が見えていた。


「だからこの世界に存在する種族カーストが重要となってくるのだが、十騎士と同等以上の種族しか結婚が認められない。結婚は本人達で候補を決め、こちらの両親と直接面談をして決める」


 両親への挨拶と言うヤツか。難易度が高いな。俺の無表情無口では良い印象を抱かれることはないだろう。まあ、することもないだろうが。


「……それなら十騎士内での結婚が認められないのも頷けるな。もし十騎士より強い種族が少なかった場合、特に女性が多く男が少ないまたはその逆だった場合だが、世界から探し出すような真似をするより一人優秀な者を見つけてまとめて重婚させた方が手っ取り早いと言う訳か」


「そうとも言えるな。ここだけの話、十騎士の各家には種族カースト一覧が存在している。強さ別や総合などもあるのだぞ」


 俺が言うとエリオナは頷き冗談めかして言った。……冗談ではないようだが。ってか種族カーストと言うのがあるのか。普段ならカーストを意識することはないが、俺はスクールカースト最底辺に居たのでカーストの意味が分かる。

 カーストとは本来身分制度や階級制度を表すモノであり、スクールカーストとは学校内の上下関係を示したモノになる。抵抗せず我が物顔で、肩で風を切って歩く不良共の玩具(サンドバッグ)にされていた俺は、その意義がよく分かる。


「……では十騎士の結婚と黒帝、そして種族カーストについて説明しよう」


 エリオナは若干の間を置いてそう言い、少し緊張したような面持ちを見せた。

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