今後の方針
寝落ちする前に予約更新してみました
きちんと出来てますかね?
ちょっと間違って更新してしまいました
すみません
諫山先生は俺の報告の後、今後の方針を決定した。
それはこれからレベルが最低で10に達したらここを出て人の居るかもしれない場所を目指すと言うことだった。
詳しい計画は今決めているが、中心になっているのは七女神だ。俺はボーッと窓の外を眺めながら耳を澄ませて足音が聞こえないか警戒している。……聞こえないか。こう言う時『獣の本能』のスキルが役立つんだが、残念ながら不良四人と御宮の五人は隅に固まっている。
周囲の責めるような視線に耐え切れず、細々と固まって時々何かを話し合っている。……どうせ今の状況は全て俺のせいだとか言ってるんだろう。自業自得なのにな。
「ところで桐谷。お前の種族は何だ?」
「……」
大体の方針が決まったところで諫山先生は俺に尋ねた。見た目からはどんな種族になったか分からないからだろう。
「……いえ、種族はまだ出ていません」
俺は別に嘘をついていない。嘘をつくコツは堂々としていることだが。それに言ったって分からないだろう。表には出てこない分、気付かれないだろうしな。
「……そうか」
諫山先生は深く追及しなかった。……もし化け物になるような種族だったら言いたくはないだろうからな。
もしかしたら何か事情があって言いたくないのだと、勝手に推測しているのかもしれない。『紫電』が神にもなれる『電竜迅雷』より強いのなら、変わっていると推測するのも無理はないが。
半分正解。
戦士系スキル所持者には獣人が多く、魔法使い系スキルにはエルフが多い。……人間のままなのは誰一人として居ない。異世界に来た感がバリバリなので、最早ここが地球でないことは誰もが理解していた。異世界だと言われた方がしっくり来るだろう。
さてさて。問題は俺の種族だが、俺が持つ三つの固有スキルの内一つを発動させることでなる。黒い森で遭遇した巨大な鬼のようなモンスターから奪った『力魔法』だが、それを奪うためのスキルがある。……まあスキルを奪うスキルと言う訳ではなく、倒した相手の力を奪うのだが。まあ俺のスキルについての詳細は良いだろう。だってこのスキルが種族に関係してくる訳ではないからだ。
『紫電』と倒した相手の力を奪うスキルと種族に関係してくるスキル。この三つが俺の固有スキルであり、他のスキルは全て二番目のスキルで奪ったスキルだけだ。
「……桐谷。お前も探索隊に参加しないか?」
躊躇いがちに諌山先生が声をかけてくる。
「お前が参加するだけでその班は楽にモンスターに攻撃出来る。お前はもうレベル10に達しているから貰える経験値は少ないが、麻痺させれば安全度はかなり上がる。どうだ?」
「……そうですね。確かにそうです。条件がいくつかありますが、良いですよ」
俺は断っても良いが出来るだけ穏便に俺が独りなれる状況を作りたいため、仕方なく引き受ける。
「条件を聞こう」
諫山先生にとって、独りでの戦闘を多くこなしている俺が探索隊に入ってくれることは有り難いらしく、即答した。
「……一つ目は、誰でも良いので髪留め下さい。前髪が邪魔なんで。姉四人に切るなとは言われてますが、もう何か面倒なんで良いです」
「まあ、お前の顔はその、あれだからな。ほら、私のをやろう」
俺が一つ目の条件を出すと諫山先生が歯切れ悪く言って、しかしタイトスカートの右ポケットから黒いゴムの髪留めを取り出すと俺に放った。俺はそれを受け取り口先で咥えると、前髪を後ろへやって後頭部で他の髪と一緒に右手でまとめる。髪留めを左手に持って縛る。
「……ふぅ」
適当に三重ぐらいにして縛っておく。
「「「……」」」
何故か驚いたような顔で、ボーッとしたような顔で俺を見ていた。……俺が顔を見せるといつもこうだ。そんなに呆然とするような醜い顔をしているんだろうか。俺が見る分には普通だと思うんだが。まあ実の姉達にも隠すように言われるくらいだからな。
因みに元から俺の顔全貌を知っていたのは姉四人と教師二人と書記の七女神だけだ。勿論赤崎は知っていただろうが、もう何年も前のことなので(小学校一年の時だ)覚えてはいないだろう。
「……で、二つ目の条件ですが、モンスターに対し非情になれる人が良いですね。じゃないと俺のやり方についてこれないんで」
「…………そうか」
俺が気を取り直して二つ目の条件を提示すると、諫山先生はどこかボーッとしたような感じで頷いた。……どうかしたんだろうか。まさか俺の顔が醜すぎてフリーズしたとこじゃないだろうな。それだったらちょっと関わりを避けたくなる。俺の顔が醜すぎて思考が停止した、とかだったらこの教室が生き残るためにも諌山先生の先導が必要だろうからな。
……精神攻撃の中でもかなりの攻撃力を誇ることだと思うんだが。仮にも感情を失った俺が、それはどうかと思う程だ。
「……聞いてます? まあ良いですけど。三つ目は俺のやり方に従ってくれる人が良いです。正直な話ちょっと残酷なことするんで」
俺は少し眉を顰めつつ言う。……総指揮は諫山先生なんだから、しっかりして欲しい。
「……あ、ああ。すまない。それで、その非情さや残酷さはどの程度だ?」
「……モンスターに感情移入しちゃう人はダメですね。拷問くらい――何かを問う訳ではありませんが――モンスターを痛め付けても自分が生き残るためと言い聞かせることが出来る人が良いです」
「そうか。で、それが出来そうなヤツは居るか? 加えて、桐谷についていきたいヤツ」
俺が言うと、諫山先生は頷いて教室を見渡し聞いた。
……ふむ。俺は不良四人を除けば一番後ろの席なので、何人が手を挙げたか分かるんだが、七人。女子五人男子二人の構成だ。
「……ふむ。まあ後ろで手を挙げてる五人は、じゃんけんで勝った一人がついていくとして、他四人は班を指揮する立場にあるから他の二班を担当しろ。良いな?」
諫山先生が呆れたように頷き、提案する。俺が後ろをチラリと振り返ると、姉四人と書記の五人が手を挙げていた。
「……じゃあ手を挙げた七人、集まってくれるか?」
俺はじゃんけんをする五人を放って挙手してくれた七人を呼び集める。
「えっと、よろしくね、桐谷君」
どこか気まずい空気が流れたが、自分の席で立っている俺のところに七人が集まってきて、各々よろしくと言ってくる。俺は「……ああ、よろしく」と答えて早速本題に移る。
「……持ってるスキルを全て教えてくれ。出来るだけ詳細にだ」
俺は言って七人からスキルを詳細に聞き出す。……そして整理していく。なるほど、大体理解した。
「よろしくね、灰人」
そこに割り込むような感じで入ってくるのは美夜である。
「……はい」
「敬語禁止」
「……年上への敬いですが」
「血の繋がった姉と弟でしょ」
「……分かったよ、美夜姉」
俺は美夜に睨まれ仕方なく嘆息しながら敬語を止めて呼び方も「会長」にしようとしていたのだが幼い頃呼んでいた「美夜お姉ちゃん」に一番近く恥ずかしくもなさそうな「美夜姉」にした。それで渋々と言った感じに頷いていたので良いのだろう。
「……じゃあ、とりあえず行くか」
俺は気を取り直して八人を先導して、廊下側のドアから教室を出ていく。