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東方愛怪異厄  作者: にゃぶや
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使い魔の契約

西洋の洒落たティーカップに、綺麗な色の紅茶が注がれていく。

部屋中に甘い林檎の香りが漂い、青年の意識も覚醒していく。

アリスはもう一つのカップにも紅茶を注ぎながら


「どこから話そうかしら…そうね、まずは此処が何処なのか説明しましょう」

「ここはアリスの家だろう?」

「そうじゃなく…もっと広い範囲で、よ。少なくとも、『貴方が住んでいた場所』に妖怪や魔女なんて存在しなかったでしょ?」


アリスがそう言うと、青年は露骨に反応した。

アリスの自分が住んでいた場所を知っているかのような言い方に。

青年はカップに手を掛けたまま、しかし紅茶を飲むことは忘れてアリスに問いかける。


「何故分かる」

「貴方が住んでいた世界ーーー私たちが『外の世界』と呼んでいる世界の住人がここの世界に迷い込んでくることが稀にあるのよ」

「…成る程な。俺もその一人という訳か」

「えぇ、外の世界から来た貴方の様な人のことをここでは『外来人』と呼ぶの。外から来た人だから外来人。簡単でしょ?」

「ああ」

「本題に戻るけど、この世界の名前は『幻想郷』って言うの。夢と現を交えた世界、幻想郷よ」

「幻想…郷…」

「えぇ、何故幻想郷が出来たかとか、色色話すと更に長くなるから言わないけど、これだけは覚えておいて。『幻想郷に常識は通用しない』、よ」

「なるほど、言えてるな」


青年は軽く笑う。

首を折っても死なない妖怪。レーザービーム。金髪の魔法使い。

幻想郷で常識が通用しないということを、青年は既に理解していた。

アリスはそのことを頭に入れておいて聞いてね、と言ってから、漸く話の核心部分に触れ出す。


「幻想郷には『力』というものが存在しているわ。例をあげるとするなら、代表的なのが妖怪の使う『妖力』。他にも、私たち魔法使いや魔獣などが使う『魔力』、幽霊や霊魂などが使う『霊力』、神様が使う『神力』……沢山あるわ」

「人間はどういう『力』を持っているんだ?」

「…残念ながら、『一般の』人間は力を持っていないわ」

「そうか…」

「そこで問題が発生するのよ」

「問題?」

「貴方のあの『怪我』。治したとは言っても流石に強力な治癒魔法を使わなければ治せなかったわ」

「………」


青年は少し冷めてきた紅茶を啜りながら自分の腹をさする。

あの怪我は大きなモノだった。少なくとも外の世界の医学では助からなかったであろう程大きな。

アリスが治癒魔法を施す前に出血多量で死ななかったのが不思議なくらいである。

少し間を置いてから、アリスが


「けど、魔力を持たない…ましてや『力も持たないただの人間に強い魔法はかけられない』のよ」

「何故」

「免疫がないからよ。身体が慣れない力の作用に拒絶反応を起こしてしまう。治癒魔法は魔力を患者の体内に直接注ぎ込むことになるから尚更、ね」

「……なら、どうやって俺を助けた?治癒魔法とやらは人間には使えないんだろう?」

「………………」

「おい?」

「…簡単な話よ。魔力を持たない人間に魔法が使えないなら、相手に魔力を持たせればいい」

「俺に……魔力を…?」

「…えぇ、『使い魔の契約』というものがあってね」

「使い魔?………契約?」


青年がオウムのように言葉を返すと、アリスは黙って頷いた。

使い魔。

アリスの話によると、魔法使いが行使する魔物のことで、『使い魔の契約』とは、魔法使いを主、魔物を使い…つまり供人、家礼として主従関係を結ぶ約定のことらしい。

青年は味のない紅茶を飲み干し、続けて質問する。


「それで、その『使い魔の契約』と俺にどんな関係が?」

「瀕死の貴方と私でその契約を結んだのよ。私が主人、貴方が従者としてね」

「……は?」

「だから、貴方と私で『使い魔の契約』を行ったの」

「『使い魔の契約』は魔法使いと魔物で結ぶ契約なんだろう?」

「えぇ、それを貴方と無理矢理結んだの」

「どうして」

「『使い魔の契約』で従者になった貴方は魔物になるから。分かった?」

「なるほど、分からん」

「…紅茶、もう一杯飲む?」

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