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東方愛怪異厄  作者: にゃぶや
呪い
14/17

目的地

「(随分遅くなってしまった…アリスはまだ起きてるかな)」


鍵山 雛から逃げた後、妖怪の山の頭上を飛んでいたのが目立ったのか、妖怪から何度か弾幕ごっこを挑まれた。

全員そこまで強かった訳ではないが、時間が無くなってしまい、博麗神社に着いた頃にはすっかり夜中になってしまった。

雲竜は疲れた身体に鞭を打ち、やっとの思いでアリス宅に帰宅する。

アリス宅の扉を開けて中に入ると、上海人形が飛んできて出迎えてくれた。


「ただいま、上海」


上海を連れてリビングに顔を出すと、アリスが自室ではなくリビングで椅子に座りながら寝ていた。

恐らく待っていてくれたのだろう。

遅くなったことに少し罪悪感を感じたところで、ふとアリスが何かの本を抱え持ったまま寝ていることに気が付いた。

本を読みながら待っていたのだろうか?

チラッと本を見ると、アリスの手や服が邪魔で表紙の全容は見えなかったが、タイトルの一部だけは読み取ることが出来た。


『星の……………る伝説………呪………………いて』


「星…伝説………………『呪』…?」


奇妙な魔術書であろうか。

それとも何らかの伝承譚か何かであろうか。

雲竜は『呪』というワードに少し敏感になっていた。

だから、普段は気にもしない筈のこの些細な出来事が、彼の心に重くのしかかったのだ。

この小さな出来事が、明日の彼の行動を決め、そこから大きく動いていく……

とりあえず、今日はもう遅い。

早く寝よう。









翌朝。

雲竜は起床し、リビングへ。

アリスは既に起きていて、朝食を作って待っていてくれた。

何時ものように朝食を取り、そして、


「アリス、今日も人里に行ってくるよ」

「何しに?」

「里人と交流を深める為にね。ついでに、幻想郷を色々見て回りたいと思う」

「…まぁ、里人と仲良くなるのは幻想郷で生きていく為には結構大事なことよね」


そうアリスに言い、雲竜は外に出る…が、人里に行くというのは半分嘘であった。

『目的地』に行く為に人里を通ることになるので、一応全て嘘という訳ではないのだが。

ここは常識に囚われない幻想郷、そして認識の世界。

雲竜は一昨日に会った『柳』髪の緑巫女の発言がずっと胸に引っかかっていた。


ーー貴方、呪われてますよーー


もしあの発言で、無意識に雲竜が『自分は呪われている』と認識してしまったのなら、今雲竜は呪われている可能性がある。

ここは認識が全ての世界なのだ。

仮にそうでなくても、ここは常識が通用しない世界。呪われていたとしてもなんら不思議ではない。

そしてそれからの鍵山 雛の発言。

全く関係がないようには思えない。

唯の偶然かも知れないが、もしかしたら……

雲竜の今日の『目的』は、その呪いの有無を確かめることだ。

だがあの東風谷 早苗とかいう胡散臭い巫女を尋ねるのは、いささか『危険』である。

彼女は会った時から、雲竜は彼女に言葉では言い表せないが、例えるならば『嫌悪感』のようなものを感じていた。

『本能』のような何かが、『自分の中の衝動』のような何かが、そこから離れろ、そいつに近づくなと警告を続けるのだ。

それは鍵山 雛に対しても同じモノを感じている。

東風谷 早苗に頼らなくても、同じ巫女なら、もっと信用出来る人がいる。


そう、『目的地』は博麗神社。

雲竜は人里を通り博麗神社へたどり着く。

もっとも、人里を通るのは少し遠回りになるのだが、彼が知っている道はそれしかなかった。

アリスに嘘をついたのは、万が一にでもアリスを心配させたくはなかったからだ。

仮に呪われていたとしても、雲竜は自分だけで解決しようと考えていた。

博麗神社の鳥居を潜って境内の方へ入ると、霊夢は箒を持って境内を掃き清めていた。


「あら、今度は何を飛ばしにきたの?」


雲竜の顔を見た霊夢は出会い頭に悪態をつく。

雲竜はそれを華麗にスルーして、いきなり本題に入る。


「霊夢、俺はもしかして呪われていたりするのか?」

「……詳しく話を聞かせて?」


雲竜は呪いに関することを事細かく説明する。

霊夢はそれを聞いているのか聞いていないのか分からないような眠そうな顔で聞き、軽く欠伸をする。


「ふぁぁ…なるほどね。私は『そっち方面』のことは詳しくないんだけど、出会った時、貴方から『邪悪な気配』を感じたわ」

「だからあの時警戒されていたのか」

「まぁ、勘で無害って判断したから警戒はもうしてないけど……今も貴方からは『邪悪な気配』を感じるわよ」

「……それが呪い?」

「分からない。だけど、この気配は常軌を逸するようなモノだとは思うわ。悔しいけど、呪いとかの分野は早苗の方が詳しいわね」

「正直あの巫女には関わりたくないんだがな…あの巫女からは何か危険な臭いがしたんだ。ただの勘かも知れないが」

「勘ってのは意外と当たるものよ。そうねぇ……『紅魔館』にいる『パチュリー』ならそういう事について詳しいかも」

「紅魔館?」

「えぇ」


霊夢は『紅魔館』について珍しく具体的に話してくれた。

紅魔館。

かなりの力を持つ『レミリア・スカーレット』という吸血鬼が主の紅い洋館。

幻想郷の強大な勢力の一角であり、紅魔館に棲む大量の妖精メイドが、その戦闘力を底上げしている。

中でもメイド長である『十六夜 咲夜』はかなりの力を持っており、なんと能力で『時を止めることが出来る』らしい。

そんな紅魔館には幻想郷随一の『図書館』が存在しており、その図書館にはあらゆる本が存在している。

『パチュリー』というのは、その図書館を管理している人物らしく、かなりの知識を持っているようだ。

呪いに関することをパチュリーに聞いても良し、本で調べても良し……

紅魔館。危険な所だが、訪れることはかなりプラスになるようだ。


「次の『目的地』は決まったな」

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