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東方愛怪異厄  作者: にゃぶや
10/17

行動開始

時は流れ、一週間という期間が過ぎる。

早朝の眩い光が辺り一面に差し込む魔法の森。

その中に建っているアリスの家。

その目と鼻の先の少し開けた場所。

彼等は今日もそこで『修行』をしていた。

薄緑の淡い光が煌めき、まだ少し暗い森の中を鮮明に映し出す。


「ふっ!」


雲竜は遅く大きな弾幕を数個展開する。

この一週間の修行で弾幕が遅いということが必ずデメリットに繋がる訳ではないことを彼は学んでいた。

視界を覆い隠す程の大きな弾幕に行動が制限される人形。

雲竜は弾幕の狭き通路の中に小さく素早い弾幕をばら撒く。

しかし、弾幕ごっこで避けられない攻撃をすることは出来ない。

人形は作られた弾幕の隙間を確実に縫っていき華麗に攻撃を躱していく。


「……!?」


しかし、その時アリスは気付く。

雲竜の姿が何処にも見えない。

先程の大きな弾幕に紛れて身を隠したのだろう。

草木に隠れて隙を狙うつもりなのか。


「(いえ、違う。これはーーー)」


アリスは慌てて後ろを向く。

すると、案の定雲竜がアリスの方に向かって走ってきていた。

反応するのが遅かった訳ではない。

しかし、雲竜の素早い動きにアリスは直ぐに懐に潜り込まれてしまった。

『反撃しない』と言った手前、カウンターを狙う訳にもいかない。

雲竜が連続で繰り出す拳を辛うじて回避していく。


「まさかっ、人形は諦めて私本人を……っ潰しに来るとは、ね!」


雲竜は少しだけバックステップし、近距離から弾幕を張る。

アリスはそれを苦しそうに避ける。

しかし、避けた瞬間。回避行動を取ってから。思った。

『この弾幕』は…!


「俺はアリス本体を潰しにきた訳じゃあ無い。俺の目的は…変わらず『人形』さ」


雲竜の放った弾幕が、アリスの指から出ている目視さえ難しい魔法の糸を切断する。

彼は、アリスとの戦いを重ねていく内に彼女の癖を見抜いていた。

それを応用し、『アリスが回避した後に糸を壊せるような弾幕』を予測し展開したのだ。


司令塔を失い、その場にポトリと落ちる人形。

こうなっては、もうどうしようも無い。

アリスは人形に向けて魔法の糸を伸ばすが、それよりも早く。

雲竜は小さな弾幕を人形に向けて放ち……………それは、人形に被弾する。


「………合格、ね」

「ふー…やっとか」


雲竜が朝から疲れた…とボヤくと同時にアリスは被弾した人形の元へ歩いていく。

人形を回収し、人形の土埃を払うと


「もうここまで来れば特に意識せずとも弾幕を張れるようになっている筈よ」

「そうだな」

「それ即ち、魔力の扱いをマスターしたと同義」

「ほう?」

「これから言うテクニックは繊細に、かつバランス良く力を使う必要があるわ」


アリスはそう言うと、いとも簡単に。

あっさりと。

ふわっと。

『宙に浮いた』。

足が地面から離れている。

安定していて、落ちる気配はない。


「! 空中浮遊…力を使えばそんなことも出来るのか」

「えぇ。でも強く力を放出するとどんどん上昇しちゃうし、力が弱すぎると下降していってしまう。高度を保ったまま浮遊出来るか、やってみなさい」

「どうすれば飛べる」

「そうね…今まで掌に集中させていた力を今度は足…足の裏に集中させてみて」

「ふむ…」

「そして足の裏から魔力を放出する」

「こう……って、ちょ…!?」


雲竜が力を込めた途端、彼の身体は空高く舞い上がる。

どんどん上昇していき彼は焦るが、アリスの言葉を思い出し、少し力の放出を抑えてみる。


「……止まって、る…?出来た…」


空中で静止している雲竜の元に下からアリスが追いかけてくる。

アリスは雲竜の前まで飛んできて止まる。


「へぇ…力の扱いに取ってはかなり上達していたようね。まさかもうホバリング出来るとは思わなかったわ」

「ああ。上空からだと魔法の森の全貌が分かるな」

「そうね。あそこが5日程前に案内した『人里』よ。真下の開けた所が私の家」

「成る程、家の近くの木を刈り取っているのは空を飛んだ時に分かりやすいようにか」


真下の開けた場所から少し離れたところに、よく見ると家が建ってある。

霧雨魔法店だろうか?

魔法の森の中には、人里方面の方にももう一つ開けた場所があるようで、そこにも家が建ってある。


上を向いてみる。

太陽が眩しい。

外の世界のような灰色の空ではない、青く澄み渡った空。

周りは見渡す限り『緑』で、外の世界で日常的であったようなビルやマンションなどの人口建築物は見当たらない。

少し前に人里に案内されたこともあったが、そこの建築物も、なんというか、『古い』ものだった。

どうやら幻想郷の科学技術は外の世界よりも進んでいないらしい。


雲竜はそれだけ確認すると力の放出を少なくして、ゆっくりと下降する。

地面に足を付ける。

アリスは雲竜より速いスピードで落ちてきて、ふわっと慣れたように着地した後、雲竜を連れて家に戻る。

アリスは玄関に入って移動しながら、隣にいる雲竜に


「空を自由に飛べるようになれば便利よ。って言っても、貴方ならすぐ自在に動けるようになるでしょう」

「それは楽しみだな」

「そうね…じゃあ、修行とご褒美を兼ねたことをしましょう」


アリスはそれだけ言うと自室に入ってしまう。

少し部屋の前で待つと、アリスはすぐに出てきた。

手にお金を持って。


「はい」

「…これは?」

「幻想郷の通貨よ。服一着くらい買える金額よ」

「これでどうしろと」

「まず、空を飛んで人里に行きなさい。勿論帰りも飛行よ。これが『修行』。人里にいったら、そのお金で団子でも食べればいいわ。それが『ご褒美』ね」

「成る程」

「ついでに人里をよく見たり、機会があれば里人とも言葉を交えるといいわ。皆いい人よ」

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