あれ…帰宅部…?
彼は坂道を歩いていた。
彼の通う《坂之下高校》はもうそこだ。
『なにが坂之下だ…、坂の上じゃねぇか…』と珍しくつっこみをいれながらも彼は新たなスタートを切ることとなったーーー
ここ坂之下高校は東京にある私立の高校で部活動に力を入れているらしいのだが…
『まぁ……俺には無縁だよなぁ…』
彼は相変わらずのようだ。
まぁ至って普通の入学式でなにもかもが普通であるこの高校だが、一つ彼にとって普通ではないーーーいや認めたくない現実と直面することとなった。
そうつまりこの高校にはーーー帰宅部がないのだ。というより校則に部活動は原則全員参加と生徒手帳には記されている。
『ウソ、だろ……!』
彼は思わず立ち上がった。クラスメイトの視線が痛い。まぁそうだろう。教師が話しているときに席を立つ奴なんてまずいない。
「おい、原どうした?」と人の良さそうな髪の毛の寂しい教師に言われた。
『あ…、なんでもないです』
「ならいいんだが…」
この俺の担任が戎島 隆
にしてもツルツルだな…。
無機物から有機物を作り出せそうな頭をしている。
説明も一通り終え俺は帰宅の路についている。これから始まる新生活に大きな不安と少しの希望を抱きながら…
『ん…?』
彼は不思議に思ったのだ。不安の方が大部分なのだが例え少しでも希望を抱く自分に…
それがなぜなのがはまだ彼は知る由もない。
『ただいまー』
「あ、お兄ちゃんおかえりっ♬」
語尾を妙に弾ませながらこちらに歩みよってくる。
「学校はどうだった?」
『あぁ、最悪だよ…、帰宅部がないなんて…』
「へぇ、そうなんだ♬」
なんか嬉しそうだな。
「良かったじゃん!、これを機に運動部にでも入ったら?」
『あー、そうしようかな』
「え、ホントにっ?!」
『あぁ、……幽霊部員でも歓迎してくれるならな」
杏里は呆れたと言いたそうな顔をして
「もう、お兄ちゃんなんて知らないっ!」とぷぅと顔を膨らませてキッチンの方へドスドスと歩いて行った。