9話 美咲視点③
不意に声がした
「こちらで大きな魔力を感知しました!何か知っている方はおられますか?」
教師の誰かと話をしてるらしい。
2人の男女が杖を持ちこちらに走ってきている。
集まっていた生徒達がモーセの十戒のように道を開けていく。
「どいて 怪我人がいるそうですが?ここね え…?まさか なおやくん…なの?
これは…ひどいね いますぐ治してあげるから待ってて」
尚也が生存していると確認すると少女はおもむろに尚也の上に杖をかざしそして・・・
「聖なる力 彼の者を癒す 聖光とならん ーーーー上級治癒ーーーー」
一体どうしたというのだろう目の前の少女は尚也君に治癒の魔術をかけているようだ。
尚也と呼び捨てにしていたし、知り合いなんだろうか・・・。
そして治癒魔法を使っている少女は何故か泣いている。
でも少女のおかげで助かるかもしれないという希望にすがり、光が収束するのをただ見つめていた。
光が収束すると尚也君の傷は完全に癒えていた。すごい・・としか言いようがなかった。
「これでひとまず命は取り留めましたが、肉体を回復させたに過ぎません。
疲労した精神や失った血などは魔法では回復出来ませんから絶対安静でお願
いしますね」
ほっとしたらまた涙が出来てきた。
少女に泣きながらお礼を言ったが少女はあまり嬉しそうではなかった。
「尚也君を救ってくれてありがとうございます」
「いえ、なおやくんを戦わせてしまったのは私どもにも責任はありますから…。
病院に行く必要はありませんが安静と食事はしっかりとってくださいね」
少女と少年は尚也の安否をもう一度確かめてから岐路についた。
尚也は保健室に運ばれ美咲と校医の看護を受けて今もまだ眠っている